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レポート

2016/10/3

第1回日本がんサポーティブケア学会学術集会 Vol.3

外来化学療法を受ける患者と家族を多職種サポートチームで支える

森下紀代美=医学ライター

 外来化学療法を受ける患者と家族が抱える様々な問題には、専門知識と経験を持つ多職種の医療メンバーで構成されるチーム「化学療法サポートチーム(Chemotherapy Support Team:CST)」で取り組むことが有用かもしれない――。9月3〜4日に東京で開催された第1回日本がんサポーティブケア学会学術集会のワークショップで、金沢医科大学病院腫瘍内科の元雄良治氏が、チームメンバーとともに自らの取り組みを紹介した。


多職種で連携し患者の幅広い悩みや副作用にきめ細かく対応
 CSTは、2013年に元雄氏らが立ち上げ、命名した化学療法、特に外来化学療法を受ける患者や家族を全人的・集学的にサポートする多職種協力型チームである。CSTを構成するメンバーは、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーなどだ。

 元雄氏らが診療を行う集学的がん治療センターでは、毎日25人前後の患者に外来化学療法を行っている。毎朝、治療開始前のショートミーティングで問題のある患者をピックアップするとともに、より詳しく問題点を掘り下げ、患者のために何ができるかを考えるCSTカンファレンスを開催している。カンファレンスには患者の外来担当医も参加し、問題の解決に向け、各々の立場から意見を述べ合う。問題点は、口内炎、手足症候群や皮疹などの皮膚病変、食欲不振、末梢神経障害などの身体的な問題から、うつ状態や治療継続への迷いといった心理的問題、地域連携、家族のサポートまで多岐に及ぶ。CSTは腫瘍内科のがん治療サポート外来とも連携し、患者の悩みを拾い上げることに努めている。

 看護師の矢崎未来氏はCSTによる対応例を紹介した。患者は大腸がんで多発肝転移のある80代の女性。パニツムマブによる皮膚障害が後頭部に発現していることに看護師が気づき、主治医に報告し、皮膚科による処置が開始された。同時に家族と患者に状況を確認すると、患者には認知症があり、高齢の夫と2人暮らしで、皮膚障害のセルフケアの継続は困難と考えられた。介護認定は受けておらず、化学療法について患者は中止を、夫は継続を希望しており、考えに相違があることも明らかになった。

 CSTカンファレンスでは、情報を共有したうえで、治療方針と療養環境の調整について検討した。その結果、夫の協力による皮膚ケアや訪問看護の導入など、療養環境の改善につなげることができた。さらに治療継続の有無については、皮膚症状が軽快した時点で患者と家族に確認し、希望により近医で治療を継続することとなった。

 薬剤師の伊藤里奈氏は、免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの副作用マネジメントに対する取り組みを紹介した。ニボルマブは従来の抗がん剤とは作用機序が異なり、副作用も従来と異なる系統で発現し、発現時期も予測不能とされている。伊藤氏らは、ニボルマブを適切に使用できる体制の構築が必要と考え、導入時に呼吸器内科医、呼吸器外科医、腫瘍内科医、救命救急医、皮膚科医、薬剤師、看護師で協議。特に注意を要する副作用発現時の対応を確立するため、副作用対応マニュアルを作成し、連携体制の調整を行った。例えば、間質性肺疾患には呼吸器内科、呼吸器外科の主治医が対応し、重症筋無力症・筋炎・脳炎・神経障害では神経内科、大腸炎・重度の下痢では消化器内科と連携することなどである。

 患者が副作用で救急センターを受診した場合の対応チャートも作成し、電子カルテにはニボルマブ投与中と投与終了後の注意喚起が表示されるようにした。また、レジメンセットの作成、検査スケジュールの確定、CST看護師による電話訪問、自覚症状チェックシートなどを幅広く組み入れた。同院の化学療法委員会の承認を受け、院内の全職種を対象にした研修会も開催している。

 多職種による対応で、副作用の重篤化が予防できた事例もある。非小細胞肺がんで60代の男性患者では、ニボルマブ投与の3サイクル目にグレード3のAST、ALT上昇が発現し、CST看護師が副作用対応マニュアルをもとに肝機能異常を指摘し、投与中止となった。CST医師は主治医に肝臓専門医へのコンサルトを提案し、患者は肝胆膵内科を受診し、入院となった。さらにCST薬剤師はステロイドの適応の可否を肝胆膵内科の医師に確認。最終的にステロイドは投与せずに安静療法となり、患者は入院14日後に肝機能値が改善し、退院となった。

 今後のCSTの課題は、サポートの対象となる患者と家族をいかに拾い上げるか、各科の担当医の参加をいかに促すかといったこととなる。元雄氏は「患者と家族が最適の化学療法を受けることができるよう、サポートを行う位置づけとしてより院内での認知度を高めていきたい」と述べた。

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