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レポート

2016/9/26

第1回日本がんサポーティブケア学会学術集会 Vol.2

がん患者は離職予防に必要な情報を職場に伝えきれていない

森下 紀代美=医学ライター

 9月3〜4日に「副作用を制する者はがん治療を制する」を主題に開催された第1回日本がんサポーティブケア学会学術集会では、がん患者の就労には薬物療法の副作用や手術に伴う後遺症が大きく影響するが、患者は企業側が必要とする情報を十分に伝えられていないことが就労状況調査から示された。一般社団法人CSRプロジェクト、キャンサーソリューションズ株式会社の桜井なおみ氏が発表した。


就労継続に影響を与えた3位が薬物療法の副作用
 2012年の第2期がん対策推進基本計画には、「がん患者の就労問題を含めた社会的な問題」という言葉が含まれた。そこで桜井氏らは、がんと診断された際に働いていた患者を対象として、(1)企業別にみた就労状況の変化や制度利用(2)離職のタイミング(3)がんと就労に対する当事者ニーズ――の3つの視点を中心に、調査・解析を行った。

 対象は、診断から10年以内で、がん罹患時に就労していた20歳から64歳までの患者300人。WEBアンケートを用いた全国の疾病パネルへの調査を行い、実施期間は2015年12月8日から9日までとした。回答者のうち男性は62%で、50代の患者が4割と最も多かった。居住地では大都市圏6割、地方圏4割であった。がん種は大腸がんが18%で最も多く、乳がん17%、胃がん11%の順番であった。進行がんは42%含まれた。既婚者は74%で、子どもを養育中の患者は37%だった。

 調査の結果、就労の継続に影響を及ぼした要因は、第1位が「体力の低下」、第2位が「価値観の変化」、第3位が「薬物療法に伴う副作用」で、「職場に迷惑をかけると思った」「通院時間の確保が困難」「働くことがストレスに感じた」「手術に伴う後遺症」が続いた。

 調査では、自分の治療に対する理解度が総じて低く、支持療法の希望を医療者に伝えられていない患者が存在する状況も明らかになった。患者が第三者に説明できる内容のうち、「病名」は96.7%、「治療内容」は90.0%と高い数字だったが、「使用した、使用している薬剤名」が伝えられる患者は40.3%のみだった。「今後半年以内の見通し、治療計画」は35.7%、「周りの人に配慮してほしいこと」は25.3%、「自身の仕事への価値観、大事にしたいこと」は26.0%と、いずれも低い結果だった。

 桜井氏は「薬物療法の副作用で困っている患者が多いにも関わらず、6割の患者は薬剤名が言えない結果となった」と指摘。医療者側が「伝えた」つもりでも、患者には「伝わっていない」現状が明らかになった。また、今後の見通しや配慮してほしいこと、仕事への思いを周囲に伝えられていない背景には、「がんに罹患したことを周りの人に伝えていない患者が75%存在したことがあると考えられる」と桜井氏は説明した。

 一方、雇用者である中小企業経営者が必要とする情報は、「必要となる就労上の配慮事項」、「治療の期間」、「今後の働き方に対する本人の思い」の順に高いことが報告されている(がん罹患と就労調査(中心企業経営者編)2016)。これらの結果から、患者は職場が必要としている情報すべてを伝えられていないことが浮き彫りとなった。

 桜井氏は、「離職予防には、患者自身が患者力を育成するとともに、医療者側も患者の理解度を確認しながら、社会背景に応じて治療の説明をする必要がある」と強調。がんと就労の根本的な課題の解決に向けては、「事業の責務に委ねるだけでは不十分。企業側への助成や健康保険法に定める休職制度について、現行のがん医療に応じた柔軟なものに改訂していくなど、法制度体制の整備を啓発活動と並行して実施していく必要がある」とした。

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