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レポート

2016/8/22

国立がん研究センター研究班が、がん患者の外見支援に関する手引きを作成

がん治療による外見変化に対しエビデンスがある対策は?

福島安紀=医療ライター

分子標的薬のざ瘡様皮膚炎対策、放射線皮膚炎のケアは?
 分子標的治療編では、主に肺がんなどの治療に使われるEGFR阻害薬、大腸がんなどに対する抗EGFR抗体薬、腎がんに対するマルチキナーゼ阻害薬によって生じる皮膚障害対策を14項目でまとめている。EGFR阻害薬、抗EGFR抗体薬によって起こる、にきびによく似た「ざ瘡様皮疹(皮膚炎)」対策で推奨グレードBと比較的エビデンスレベルが高かったのは、予防目的で使うテトラサイクリン系薬剤(ミノサイクリン、ドキシサイクリン)の内服で、積極的に推奨している。ざ瘡様皮疹の予防および治療対策は次の通りだ。
・「予防および治療を目的に副腎皮質ステロイド外用薬を用いることについては、高いエビデンスはないが勧められる」(推奨グレードC1a)
・「治療を目的に抗菌薬を外用することについては、高いエビデンスはないが勧められる」(同C1a)
・「予防を目的に、保湿薬を外用することを考慮してもよい」(同C1b)

 「これまで皮膚科では、何か薬を使って皮膚症状が出たら薬疹、薬害なのでその薬はやめようとなっていた。しかし、EGFR阻害薬、抗EGFR抗体薬に関しては、皮疹の重い人のほうが生存率は高い。皮膚障害をコントロールしながら治療を続けると効果が最大限に出る。ステロイドについてはアトピー性皮膚炎などの皮膚病では弱いものから使うのが基本だが、進行がんの患者さんの皮膚障害に関しては、最初から強いステロイドを使って早く症状を抑えてEGFR阻害薬や抗EGFR抗体薬を使い続けた方が長生きできる可能性が高い」。作成委員の一人で、国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科長の山崎直也氏はそう指摘する。ざ瘡様皮疹に対するステロイド外用薬の有用性についてはさらに検証が必要であり、多施設共同の臨床試験を実施する予定という。

 一方、放射線治療の副作用として悩ましいのが放射線皮膚炎だ。特に、乳がんや頭頸部がんでは、皮膚にも高い線量が照射されるため、やけどのような皮膚の炎症が起こる。手引きでは、放射線療法中の保湿薬の外用は、頭頸部領域以外では推奨グレードBで「放射線皮膚反応の軽減に一定程度の効果が期待できるため、行うように勧められる」。頭頸部領域に関してはエビデンスレベルの高い研究が少ないため、推奨グレードC1aで、「高いエビデンスはないが、行うよう勧められる」とした。

 これまで、放射線治療中のケアについては、皮膚への刺激を避けるため、石けんの使用や照射部位の洗浄を避けるように指導される傾向があった。しかし、カナダや英国での複数の臨床試験の結果から、「放射線皮膚炎に対して洗浄剤を用いても皮膚炎は悪化しないという根拠があり、照射期間中の皮膚洗浄は禁止せず、むしろ洗浄することが勧められる」(推奨グレードB)。制汗剤などのデオドラントについても、「使用しても皮膚炎は悪化しないという根拠があり、継続してもよい」(同B)と述べている。

化学療法中のスキンケア、ひげそり、爪のケアは?
 2章目の日常整容編は、患者から質問が多い項目を中心に17問設定。化学療法による皮膚乾燥に対する日常的なスキンケア方法は、「無添加」「敏感肌用」といった「特殊なスキン方法にこだわる必要はない」とした。そのうえで、「治療前より使用していたスキンケア製品を使用する際には、皮膚を強く擦過する(こする)などの刺激を避けるようにする」とし、問題が生じた場合には皮膚科医の受診を勧めている。日常整容編作成メンバーでもある野澤氏は、「明らかにひどい症状がある場合を除いて、メイクアップも含め、基本的にはがんの治療前と同じでよいというスタンス」と話す。ただし、皮膚乾燥やざ瘡様皮疹のある人のスクラブ入りの洗浄料の使用は、「基本的に勧められない」(同C2)としている。

 分子標的治療中の患者のひげそり方法は、T字カミソリではなく電気シェーバーがお勧めだ(同C1a)。科学的根拠は少ないが、皮膚への負担を最小限にするためには、電気シェーバーは皮膚に対し垂直に当て、滑らさずにひげそりを行い、ひげそり前には電気シェーバー用のプレシェーブローション、使用後に保湿用クリームなどを使うことを勧めている(同C1a)。

 化学療法終了後の再発毛、あるいは、脱毛を起こさない化学療法施行中に髪を染めても大丈夫なのかも気になるところだ。手引きでは、次の5項目を満たしたうえで、「注意深く行うなら、治療前に使用していた染毛剤、カラーリンス、カラートリートメント、ヘアマニキュアを使用することを否定しない」(同C1b)としている。5項目とは、(1)過去に染毛剤によるアレルギーや皮膚症状がない (2)頭皮に湿疹などがない (3)染毛剤の使用に適した長さまで毛髪が伸びている (4)地肌に薬剤がつかないように染毛する (5)パッチテストの実施が記載されている製品は使用前のパッチテストが陰性であること――である。

 爪の変形のカモフラージュ法に関しては、基本的にはマニキュア、ネイルチップの使用は自由だが、「アクリルネイルやジェルネイルなどと称される硬化性樹脂製の爪化粧料を使用することは推奨できない」(同D)と強く否定している。睫毛の脱毛・貧毛のカモフラージュに用いられる睫毛エクステンションについても「装着をすることは基本的に勧められない」(同C2)とした。

 野澤氏は、「医療の現場でのアピアランスケアのゴールは、患者さんと社会をつなぎ、家族を含む人間関係のなかで、患者さんが今まで通りその人らしく生き生きと過ごせるように支援すること。本手引きの作成によって、いかにこの分野ではエビデンスレベルの高い研究が少ないかがはっきりした。それでも、今後は手引きに基づいたアピアランスケアが医療者を通じて外見の変化に悩む全国のがん患者さんに行き届き、アピアランスケアについては一定の水準が担保されるのではないかと期待している」と強調した。

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