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レポート

2016/8/22

国立がん研究センター研究班が、がん患者の外見支援に関する手引きを作成

がん治療による外見変化に対しエビデンスがある対策は?

福島安紀=医療ライター

「抗がん剤の色素沈着は、ビタミンCを飲めば予防できるのか」「放射線皮膚炎になった部分を石けんで洗っても大丈夫なの?」――。がん治療による皮膚障害や外見の変化に直面し、対処法が分からず戸惑う患者は少なくない。しかし、がん治療による皮膚障害対策や整容面の問題についてはこれまで研究が遅れ、科学的根拠が乏しいため、医療者によって意見が異なったり、患者が不適切な商業広告情報に惑わされたりする危険があった。そういった状況を改善するため、国立がん研究センターの研究班(研究代表者/国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センター長の野澤桂子氏)が8月1日、がん治療に伴い外見に生じる症状に対してよりよい支援方法を選択するための指針「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」(金原出版)を発刊した。アピアランスは「外見」を示す言葉。手引きは医療者向けだが、患者にも参考になりそうだ。


「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」

脱毛の予防や軽減に頭皮冷却は有用?
 「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」は、皮膚科、腫瘍内科、形成外科、放射線学、香粧品化学、薬学、心理学、看護学、生物学など、様々な専門を持つ委員が国内外の研究結果の解析し討議を重ね作成された。化学療法、分子標的治療、放射線治療による外見の変化への対策をまとめた「I治療編」33項目と、スキンケア、ひげそり、爪のケアなどについて書いた「II日常整容編」17項目の2つの章に分けて構成。合計50項目の問いに、現時点の科学的根拠(エビデンス)を踏まえ、推奨グレードを示している。

 推奨グレードは、A(強い科学的根拠があり、行うことが強く勧められる)からD(無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる)まで6段階。外見の変化への対処法は科学的根拠が少なく嗜好的な要素が強い分野であるだけに、C1a(科学的根拠はないが、行うように勧められる)、C1b(科学的根拠はないが、行うことを否定しない)、C2(科学的根拠はなく、行わないように勧められる)とCを3段階に分けたのが特徴だ。野澤氏は、「診療指針には一般的にC1bはないが、日常診療において選択肢の一つとして用いられているのにエビデンスのないもの、日常整容行為など個人の自由として行うことを否定するまでのエビデンスのないものをC1bとした。この手引きでは、十分にエビデンスが確認できない問題に関しては、エビデンスのないことを明記したうえで、様々な専門性を持つ研究班のメンバーが討議してエキスパートオピニオンとして対処法を提示した」と説明した。

 治療編のうち、12項目に渡る化学療法の1問目は、「脱毛の予防や重症度の軽減に頭皮冷却は有用か」だ。米国食品医薬品局(FDA)が、2015年12月に、乳がんの化学療法を受ける女性の脱毛症予防のために、頭部冷却装置を承認し国内でも臨床試験が行われている。この問いに対する現時点での推奨グレードはC1a。「化学療法中に頭皮冷却を行うことにより、化学療法中および終了時の脱毛の程度が軽減するかについて日本人を対象とした明確なエビデンスはないが、頭皮冷却を行うことは勧められる。ただし、わが国では現在、頭皮冷却は保険適用外であり、実施可能施設も極めて限定されている」と回答している。

 「頭部冷却装置は、冷やすと血管が収縮するので、頭皮の血流を少なくして脱毛を予防しようという発想。欧米では効果が認められているが、西洋人用に開発されたツールが日本人の頭の形に合うのか研究が必要だ。投与が終わっても再発毛が起こりにくい薬もあり、脱毛は一時的な問題ではなく長期的なQOL(生活の質)に影響する。脱毛などの副作用対策は、関心を持つ医療者が主体にならないと進んでいかない。診療の手引きの作成が、副作用研究の推進に向けた第一歩になってほしい」。化学療法編のチームリーダーを務めた国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科外来医長の清水千佳子氏はそう話す。

国立がん研究センター中央病院の野澤桂子アピアランス支援センター長(左)と清水千佳子乳腺・腫瘍内科外来医長(右)

 また、化学療法による脱毛対策に発毛剤を使ってよいものか、患者にとっては悩ましい問題だ。手引きでは、「再発毛の促進や脱毛予防にミノキシジル(脱毛症治療薬)は有用か」に対しては、再発毛の促進に関して「高いエビデンスはないが、ミノキシジルは勧められる」(推奨グレードC1a)とした一方で、「脱毛予防にミノキシジルは基本的に勧められない」(同C2)としている。さらに、睫毛貧毛治療薬のビマトプロストについては、推奨グレードC1bとしつつ、「抗がん剤による睫毛貧毛症に対し、睫毛成長を促進させる目的でビマトプロストを用いることを考慮してもよい」としている。

 ところで、化学療法によって皮膚が黒っぽくなる色素沈着の予防と治療に関して、美白効果があるとされるビタミンCあるいはトラネキサム酸の内服、しみの一種である肝斑の治療薬ハイドロキノンの外用は有用なのだろうか。手引きでは、ビタミンCについては予防と治療の両面、トラネキサム酸は予防、ハイドロキノンは治療を目的とした使用について、それぞれ、推奨グレードC2で「エビデンスが乏しいため基本的に勧められない」と結論づけている。

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