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レポート

2016/7/25

成人患者主体のがん専門病院で始まった取り組み―がん研究会有明病院「GCLS研究会」

親ががんになった子どもを支えたい

森下紀代美=医学ライター

GCLS研究会の定例会の様子

個々の子どもの年齢に応じて対応
 GCLS研究会で毎月1回行われる定例会では、問題があると考えられる症例や相談を受けた症例をメンバーが持ち寄り、家族構成を考慮し、個々の子どもの年齢に応じた対策や介入の方法を検討している。例えば、患者は3歳と9歳の子どもがいる母親で、予後が告知されており、「子どもにも何とか伝えたい、でも伝え方がわからない」という相談があったケースでは、ある程度理解できると考えられる9歳の子どもへの伝え方を検討し、病棟の担当看護師を通してフィードバックする、臨床心理士が患者と面談して直接アドバイスする、腫瘍精神科医が参加している緩和ケアチームに依頼して、子どもの心をサポートするための直接的な介入をしてもらう――といった方法をとっている。

 GCLS研究会で症例をピックアップして検討し、臨床心理士が介入した実際のケースを紹介する。


ケース1.
 患者は40代の女性で、終末期のがん。子どもが3人おり、母親の病状は伝えられているが、子どもたちの様子に不安な点があることに主治医と看護師が気づく。その後、患者から子どもたちの様子、そして母親と死別後の子どもへの対応について相談があった。
⇒臨床心理士が、患者、夫とそれぞれ面談。子どもの年代別に自然な心理反応として予想されることを情報として提供し、周囲の大人や学校でのサポート体制の準備をしてもらう。
⇒子ども3人とも面談し、それぞれの思いを家族全員で共有してもらうよう働きかけ、患者の安心につなげていった。

ケース2.
 患者は30代の女性で、手術で声を失うことになった。子供が3人おり、手術後の子どもとのコミュニケーションについて相談があった。
⇒子どもたちへのメッセージと、挨拶などのよく使うフレーズを事前に録音しておくこと、発声以外のコミュニケーションの方法を手術前から実施することなど、さまざまなコミュニケーションのスタイルがあることを家族で共有してもらった。
⇒手術後は、面会に来る子どもたちのためにクラフトグッズ(カラーモールや折り紙、シール、紙の箱など)を提供し、母親とコミュニケーションをとったり、ベッドサイドに居場所を確保したりしやすいように配慮した。

いずれも臨床心理士・宮崎加奈子氏より症例提供

 研究会の活動が院内で広まってメンバーが増えれば、問題を拾い上げ、支援につなげられる患者の数も増える。そのため、研究会の存在を知ってもらうことも大切になる。メンバーは常時募集中だ。市村氏は「現在は消化器化学療法科と整形外科の患者さんが多いですが、乳腺センターや婦人科にも子どものことで悩んでいる患者さんはいるはずです。こうした活動を行っていることをアピールする中で、興味を持ってくれる医師も増えてきており、今後はさらにいろいろな分野に応用できると考えています」と述べた。

将来は教育機関や行政とも連携して支援を
 今後の課題もある。一つは、現在の化学療法は外来治療が主で、入院中に患者を拾い上げる機会を逃してしまうと、外来では介入のタイミングが難しくなることだ。支援が必要であっても、外来では病院のシステム上、手続きが煩雑になる。外来でも簡単にサポートにアクセスできるようにすること、患者や家族にもGCLS研究会による支援体制があると知ってもらうことが必要である。外来には患者のためのがん全体に関する看護相談の窓口があり、担当者の中にはGCLS研究会に参加している看護師もいることから、今後、具体的な支援につなげる役割を果たすことが期待されている。

 教育機関との連携も課題である。親が病気になっても、子どもには子どもの社会があり、生活があり、学校がある。急激に家庭環境が変わると、それまで親がしていたサポートがなくなり、遅刻しがちになったり、忘れ物が多くなったりする子どもがいる。精神的に不安定になり、同級生に攻撃的になる子どももいる。親の了解を得たうえで、学校の担任の先生や保健の先生に情報を提供し、子どもへの配慮をしてもらうことが望ましい。逆に教育機関から問い合わせがあった場合に、医学的、心理学的なアドバイスができるような病院側の窓口も必要になる。

 さらに行政との連携も必要である。片親の家庭などで親が緊急入院し、子どもが一人残されるような場合など、行政の支援が緊急に必要となるケースもありうるためだ。

 子どもたちの社会生活を維持しながら、心のケアも同時に行えるようにするためには、病院、行政、教育機関の連携が重要であり、地域の医療機関との連携も欠かせない。市村氏が「今後医療機関が取り組むべき課題の一つ」と話すこうした形のサポートは、がんだけでなく、他の病気でも、急激に家庭環境が変わるような場合は必要である。

 最後に市村氏は「まだ到達できていないことも多いですが、がんの専門病院であるがん研究会有明病院では、がんの治療だけでなく、患者さんの周囲の方たちへの支援まで、総合的にできるようにしていきたいと考えています」と話した。

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