このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2016/7/5

卵巣がんや乳がんなどの治療中は「脳卒中」に気をつけて

 卵巣がんや乳がんといった女性がかかりやすいがんの治療中などに、「トルソー症候群」という脳卒中を引き起こすことがあります。どのような病気なのか、何に気をつけたらいいのか、まとめました。


 がんがあると、ムチンやサイトカイン、組織因子といったさまざまな物質が分泌されやすく、血管や心臓の内部に血栓ができやすい状態になることが知られています。形成された血栓が血流に乗って脳に至ると脳卒中を引き起こします。こうしたタイプの脳卒中は、最初に報告した医師の名前から、トルソー症候群と呼ばれています。

 トルソーはフランスの神経内科医で、19世紀にこの病気の概念を提唱しました。がんの合併症としての静脈血栓症、中でもそれに伴う脳卒中を指します。がん患者における頻度は正確にはわかっていませんが、がん治療中に起こる脳卒中の4分の1はトルソー症候群ではないかとみられています。

 以前から、がん患者は脳卒中以外にも深部静脈血栓症、肺塞栓症などの血栓を原因とする病気になりやすいことが明らかになっています。下肢の太い静脈の血流が遮断されると、ふくらはぎが腫れて、痛みや熱を持った感覚が現れることがあります。肺塞栓症では胸の痛みや息切れが生じることがあります。

 トルソー症候群は、卵巣がんや乳がんなど、女性がかかりやすいがんに比較的多いとされています。若い女性が脳卒中を起こし、血栓ができやすい状態にあることがわかった場合、がんが隠れている可能性があります。血栓ができやすい状態かどうかを調べる検査には「Dダイマー検査」と「BNP検査」があります。「Dダイマー検査」でDダイマーが高値の場合には、血栓が形成されている可能性が高く、「BNP検査」でBNPが高値の場合には心臓疾患由来の脳卒中である可能性が高くなります。

 トルソー症候群と診断された場合、血液を固まりにくくする抗血栓療法を行います。抗血栓療法には「抗凝固療法」と「抗血小板療法」があり、トルソー症候群では抗凝固療法が中心となります。用いる薬剤は主に飲み薬のワルファリンですが、肝臓の酵素で代謝される薬剤のため、期待された効果が得られないまたは薬の作用が強くなりすぎた場合に、代謝経路が異なるがんの治療薬に変更する必要があります。また、ワルファリンは薬物代謝に個人差があり、有効な血中濃度に保つことが難しい薬剤でもあります。

 数年前から、新しい抗凝固薬として直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が登場しています。DOACはワルファリンのような細かい用量調節が不要で、出血などの副作用も少ない傾向にあることがわかっています。このため、まだ使用経験は少ないですが、トルソー症候群に対して今後はDOACが多く用いられるようになるのではないかと予想されています。

 トルソー症候群はがんが原因で生じる脳卒中のため、がんの治療がうまくいけばリスクが低下していきます。逆に、抗がん剤の副作用で嘔吐が続くなど脱水状態になりやすい場合には血栓ができやすく、危険です。がんの治療中は脳卒中予防のためにも、全身状態をできるだけ良好に保ち、積極的な水分補給を心がけて脱水状態にならないよう心がけることが重要になります。

この記事を友達に伝える印刷用ページ