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レポート

2016/6/20

がん医療の「均てん化」を評価する体制の構築を目指し、治療実態を調査

がん標準診療の実施率にばらつき、未実施の理由も重要

森下 紀代美=医学ライター

標準診療の実施率にはばらつき、理由を加味すると90%以上に
 調査対象は、全国の232施設で2012年にがんと診断された患者31万2381人。平均年齢は66.3歳、男性の割合は55.1%だった。標準診療の実施率は、2011年と2012年で大きな変化はなく、2012年の全体の平均は68.2%だった。最も低かったのは、乳房切除術が行われた再発ハイリスク乳がんに対する術後放射線療法の33.3%、最も高かったのは、肝がんの肝切除術前に行われる検査、ICG測定の91.6%だった。

 注意しなければならないのは、「標準診療は全員に実施しなければいけない」ものではないということ。患者の状態によっては、標準診療を行わない方がよい場合もある。そこで、協力が得られた56施設には、個々の患者に標準診療を実施しなかった理由についてデータを提出してもらった。

 その結果、標準診療を実施しなかった患者の55%については、一定の理由が報告された。未実施の理由を調査した施設と調査しなかった施設で同等の結果が得られたと仮定し、「全身状態の低下」「肝腎障害・併存症」「患者の希望」といった患者側の要因や「高齢」などを、「標準診療を考慮したが、実施しなかった理由」として加味すると、9項目中6項目で標準診療の実施率は90%以上となった。最も高かったのは、ステージ1〜3の非小細胞肺がんへの手術または定位放射線療法の99.2%で、ステージ2、3の胃がんへのS-1術後化学療法の98.8%がこれに次いだ。

 一方、乳房切除術が行われた再発ハイリスク乳がんに対する術後放射線療法は、上記の理由を加味しても61.7%、催吐高リスク化学療法前の予防的制吐剤(セロトニン阻害剤+デキサメタゾン+アプレピタント)の投与は71.7%にとどまった。また、外来で麻薬が処方された患者に対する早期の緩下剤の処方は80.4%だった。

 東氏によると、標準診療を実施しなかった理由のうち、分類に苦慮し、詳細情報がなかったため最終的に「理由不明」としたケースがあったという。例えば、乳房切除術が行われた再発ハイリスク乳がんに対する術後放射線療法の理由不明は57.4%だったが、この中には、QIで設定された期間(術後8カ月)を過ぎてしまったが、化学療法を先行した後に術後放射線療法を行っていたケースなども含まれた。

 また、催吐高リスク化学療法前の予防的制吐剤投与に関しては、「3剤ではなく2剤で治療している」という施設もあった。施設の方針によると考えられる記載も一部あったものの詳細な情報がなく、理由不明とするケースが多かったという。

 今回の調査から、標準診療の実施率そのものは必ずしも高くないが、実施しないことに何らかの理由があると考えられることが示された。実施率の考え方について、東氏は「100%を目指すものではないが、妥当な未実施理由が正確に捕捉できれば100%となることはあり得る」と説明し、がん医療の均てん化や質の改善に結びつけるためには、「個々の施設で、個々の症例に適切な未実施の理由があるか、考えてもらうことも重要」とした。

 国立がん研究センターは、同調査を発展的に継続し、標準診療の未実施理由の妥当性を個別に検討できる体制を構築し、継続的な均てん化の評価と診療の質の向上を目指していくとしている。現在、2013年の症例について、297施設が自主的に参加し、解析が進められている。また、QIの項目も胃がん、肺がん、子宮頸がんなど拡充が予定されている。

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