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レポート

2016/5/23

家族ががんになったとき、どのようにサポートできるか(後編)

家族との何気ない会話が患者の心の支え

福原 麻希=医療ジャーナリスト

 家族ががんと診断され、治療を受けているときに「どんなふうに声をかければいいかわからない」など、戸惑いの声を聞くことがあります。病気と診断される前から家族間の関係がうまくいっていない場合、なおさら居心地の悪さが大きくなるようです。そんなとき、どのように関係を再構築していけばいいでしょうか。
 後編では、病院のメディカルスタッフに介入してもらったことで、よい関係性を築けた場合を紹介します。



1. 娘と母親の場合
 A子さん(23)は、腹痛や軟便が1カ月以上続いていた。自宅近くのクリニックで診てもらったところ「過敏性大腸炎」と診断され、薬を処方してもらったが、改善しなかった。8カ月後、突然肛門から出血した。別の病院で検査を受けた結果、直腸に約5cmのがんが見つかり、すでに子宮にも病変が広がっていた。がんによって便も出にくくなっていた。
 医師は排便しやすくなるよう、腹部にストーマを造った。1週間後からは抗がん剤治療と放射線治療を受けた。だが、効果はみられず、がんは肩の鎖骨に転移した。
 抗がん剤治療の副作用でしびれと吐き気が強く出るため、診察時、A子さんは医師に熱心に質問をした。
 診察には母親がいつも同行していた。だが、娘が愚痴一つ言わず、母親には何も話さないため、心配するばかりだった。

2. 長年連れ添った夫婦の場合
 元会社員のBさん(69)は、ある日突然、発熱と背中の痛みを感じて、自宅近くのクリニックで診察を受けた。医師からはすぐ大学病院で精密検査を受けるように言われ、その結果、「十二指腸がん」と診断された。手術を受けたが3カ月後に再発し、半年後には肝臓への転移も見つかった。
 Bさんは現在治療中だが、病院まで自分で車を運転し、朝から夕方まで趣味の畑仕事をしている。ただ一つ心配なのは、「がんの診断を受けてから、妻が自分との会話を避けるようになった」ことだとBさんは話す。

*事例1、2とも『臨床看護』(2012年,Vol.38,No.3)既出。

どんな家族でも、病人が出たら気遣い合う
 前述の2つは、山口大学大学院医学系研究科保健学域の齊田菜穂子教授が大学病院の外来化学療法室に勤務していたとき、相談に乗った事例だった。どちらも、がん患者の家族がどのように(患者と)接すればいいかわからないという不安や戸惑いを抱えていた。

 齊田教授は長年、看護師として多くの患者と家族に対応してきた。色々な形の家族の歴史や関係性を見聞きした中で、「決して仲がいい家族ばかりではありませんでした。でも、病人が出ると、どんな家族でもお互い気を遣っているものです」と言い切る。

 だが、患者も家族も、気持ちをうまく言葉にすることができず、家族ならではのすれ違いを起こしてしまうこともある。

 齊田教授は「すれ違いのほとんどは、コミュニケーション不足による誤解から生まれています。大切な時間をつぶしてしまわないよう、ちょっと勇気を出して家族に声をかけてほしい。直接、会話することが難しい場合、病院の看護師や心理士に介入してもらうこともできますよ」と助言する。

 「病気のことならまだしも、忙しそうなメディカルスタッフ(医療職)に家族のことを相談できない」と思うかもしれない。だが、近年、メディカルスタッフの間では「患者が病気になると、家族にもさまざまな負担がかかる。家族のこともサポートしていこう」という流れができている。このようなメディカルスタッフに会いたいときは、外来や病棟で出会うメディカルスタッフの誰に伝えてもよい。「チーム医療」としてその情報は共有され、適切な職種につないでもらうことができる(表参照)。

表 家族のサポートをしているおもな職種

職種        家族はどんな相談ができるか
がん看護専門看護師 看護師を5年以上経験した上で、看護系大学院で特定の分野の知識とスキルを十分高めたと評価された、がん看護に関するスペシャリスト。例えば、▽治療のスケジュールや副作用▽生活と治療の両立▽治療を継続するか、中止するかなど、おもに、医療と生活に関することを相談できる。
がん治療を専門とする認定看護師 がん患者、家族に対して、熟練した看護技術を用いることができる。専門別に、▽がん化学療法看護▽がん放射線療法看護▽がん性疼痛看護(がんによる痛み)▽乳がん看護▽摂食・嚥下障害(食べたり飲み込んだりするときの障害)看護▽皮膚・排泄ケア(ストーマ造設など)▽緩和ケアがある。
医療ソーシャルワーカー 生活での困りごとや悩みの相談を受け、解決に向けて専門知識や情報を活用して支援するアドバイザー。例えば、▽治療費や退院後の療養先▽療養や治療費などに関する公的な助成や支援の制度(高額療養費制度、国民健康保険一部減免制度、介護保険制度など)▽患者にどう接したらいいか、患者の容態の悪化を受け止めきれない、心がつらいなどを相談できる。
心理士 カウンセリングでは、患者・家族の心配、困りごと、知りたいことは何か、気持ちの不安や恐怖はどうして起こっているか、話を聞きながら整理し、解決に向けてプライオリティをつける。「いま、何ができるか」について考えるサポートをする。

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