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2016/3/14

課題浮上する“人生最終段階の緩和ケア”

「がん患者って介護保険が使えるの?」

小崎丈太郎=日経メディカルCancer Review編集長

 がんが進行して終末期を迎えた時点において緩和ケアを活用できるかどうかは、患者と家族の負担を軽減できるかという観点から非常に大きな意味を持ちます。緩和ケアという言葉を知っていても、有効に利用できているかというとまだ改善や工夫の余地があるようです。NPO法人HOPEプロジェクト(理事長:桜井なおみさん)がこのほど、WEBアンケートを用いた「がん遺族200人の声」調査を実施、その結果を「がん患者白書2016」としてまとめています。そこから終末期緩和ケアの課題をみてみましょう。

課題1 意外と知られていない介護保険
  
 介護保険を利用した例は全体の36%に留まりました。最大の理由は「介護保険って高齢者のものなんじゃないの?若いと使えないんじゃないの」という誤解です。がんは余命6カ月と診断された時点で介護保険制度の申請ができます。調査では介護申請を行った90%が介護認定されていました。しかもそれらの88%が申請から1カ月以内という迅速なタイミング認定されています。認定される介護等級はやや厳しくなっていますが、積極的に介護保険制度を利用して、患者や患者本人の負担を軽くしていきたいものです。実際にサービスを受けた内容のトップ3は「電動ベッドの貸し出し」「車いすの貸し出し」「入浴サービス」となっていました。

 また患者が亡くなる前に介護や付き添いのために仕事を休まなかったという人はわずか35%。休みは平均で19日、4%の人は「ずっと休んでいた」と回答しています。介護、付き添いの家族にも負担をかけている事が分かります。

課題2 緩和ケアでも痛みが取れない

 緩和ケアというと入院するものと考えている人はいませんか?

 実は通院しながら緩和ケアが受けられる緩和ケア外来があります。受診者は16%。利用しなかった理由の最多は「必要なかった」でした。しかしそれに匹敵する数で、「知らなかった」「紹介されなかった」という理由もあります。必要に応じて利用できる緩和ケア外来を利用したいものです。

 緩和ケアの真骨頂はがんやがんの治療に付随して発生する種々の痛みを取ることです。今回のHOPEプロジェクトの調査結果では、外来、病棟ともに痛みが取れたという除痛率は3割と低いものでした。

 理事長の桜井さんによると「地方では除痛率が下がる傾向にあり、施設間格差とともに大都市圏と地方圏との間で格差が見られた」そうです。過去10年にわたってがん診療の均てん化が推進されてきました。痛みを取るという最も普遍性が高い医療こそ真っ先に均てん化が実現してほしいものです。

課題3 遺族に悲嘆と後悔を抱かせないために

 患者を看取った家族は、介護をどのように振り返るのでしょうか?

 調査に寄せられた声の中には「満足できた、やっと終わった」というものもありましたが、27%の遺族が後悔しているという結果になりました。「病気に対する知識がなかった」「帰宅の希望をかなえてあげられなかった」「もっと本人の意思を聞いておきたかった」という声がありました。

 中には「結局亡くなるのなら抗がん剤治療で苦しませてしまったことに後悔」という声もありました。

 抗がん剤にはメリットとデメリットがあります。進行末期になると抗がん剤の効果は限定的なものになります。それでも抗がん剤治療を続けると、メリットよりもデメリットが大きくなり、人生の最期を苦しんだまま終えることになります。患者も「なかなか止める」といえず。患者や家族が希望するからという理由で医師の方も抗がん剤治療を亡くなる直前まで続ける例があります。

 そうならないようにまだ元気なうちから、抗がん剤の止め時について医師と意見交換しておくべきとされています。「最近は在宅ケアが推奨されているが、十分な環境が整っていない中での緩和ケアは“亡くなるまで積極的な治療”を助長する原因になりかねない」と警鐘を鳴らしています。

緩和ケアも質が問われる時代に

HOPEプロジェクト理事長の桜井なおみさんは「緩和ケアの環境に不備があれば緩和ケアへの移行によって医者から見放された感にもつながりかねない」と話しています。

 この調査結果からHOPEのメンバーは、1)緩和ケアの均てん化、2)大切な時間を家族が寄り添える職場環境づくり、3)アウトカム検証に基づく緩和ケアあり方の検討が必要と提言しています。

 現在、がん治療の質を評価する様々な物差し(指標)が専門家を中心に提案されています。緩和ケアの質を評価するときには患者本人とともに家族・遺族の満足度をも考慮する必要がありそうです。入院だけではなく、外来や地域でも緩和ケアを患者や家族・遺族の視点で評価し、様々な施策に反映する試みが大事です。同時に、患者が何をしたいのか? これからどのように生きていたいのかを医師と患者だけではなく、患者と家族の間でも話し合いを持つ事が大切です。

 この調査の詳細は、HOPEプロジェクトのホームページでみることができます。
 http://kibou.jp/images/20160114L.pdf

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