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レポート

2016/2/22

がん患者でも介護保険サービスを利用できる(その1)

家族と自宅で穏やかな時間を過ごす

福原 麻希=医療ジャーナリスト

肺がん男性の妻は「介護保険サービスを利用したことで、精神的に心強かった」と話す。

突然の終末期でも、家族が自宅で看取る
 5年前から、緩和ケア診療所・いっぽと連携する形で、がん患者の在宅介護に特化する居宅介護支援事業所さくら(NPO法人在宅福祉かんわケア大地、群馬県高崎市)の主任介護支援専門員(ケアマネージャー)・新井薫さんから事例を紹介してもらった。

 高崎市在住の70代男性は肺がんで脳転移を起こし、昨年10月に亡くなった。診断後、わずか1カ月の闘病生活だった。自宅2階から降りてくるとき息苦しくなり、夜中の咳もひどくなったのでクリニックへ行き診てもらったところ、肺がんとわかった。MRI検査を受けたところ、すでに、脳にも転移していた。

 そこで、脳の転移部分に放射線治療をすることになり入院した。病院で「なるべく、早く介護保険サービスを受けるための申請をしてください」と言われ、妻は市役所の窓口で書類をもらって手続きをした。そのとき、男性が末期のがんであることを話したところ、担当者は「なるべく早く進めましょう」と言って、すぐに病院へ介護認定調査者が来てくれた。

 窓口で何も言わないと、介護認定調査が1週間後、10日後になってしまうことがある。認定調査時、男性は意識があったが、話すことや考えることは難しかった。約2週間後、「要介護5」と判定された。

 そこで、ケアマネの新井さんは男性に電動リクライニングベッドの貸し出しを手続きし、さらに、週1回の訪問入浴サービスと、毎日、介護職員(ヘルパー)が身体介助に入れるようにケアプランを作成した。

 男性は自宅に帰ってから、いつも「お風呂、いつかなぁ」とつぶやき、訪問入浴サービスを楽しみにしていた。終末期のがん患者にとって、入浴は体の痛みやだるさ、むくみのつらさをやわらげるだけでなく、「生きる楽しみ」となることが多い。だが、あきらめてしまっている人もいる。

 訪問入浴サービスでは部屋に浴槽と機材を持ち込み、その場で湯を沸かす。準備時、看護師が血圧や体温を計測するなど健康状態をチェックし、問題がなければヘルパーが体や髪を洗う。入浴時間は10分程度。開始から40〜50分程度で浴槽と機材を部屋から搬出する。

 入浴後、妻が男性に「よかったね」と声をかけると、男性は「うんうん」とうれしそうにうなずいたという。その後は気持ちよさそうに、ぐっすり眠ったそうだ。男性は、その4日後に帰らぬ人となった。

 妻はこう振り返る。「20年前も姑をがんで看取りました。今回は介護保険サービスを利用したため、医師だけでなく介護スタッフの方々もサポートしてくださり、精神的にとても助かりました。お任せできることが多かっただけでなく、いろいろなアドバイスも頂けて、とても心強かったです」

 自宅で家族が看取るとき、患者の病態の変化に驚き、救急車を呼んでしまう人は多い。男性の妻の場合、緩和ケア診療所・いっぽから、患者が亡くなるまでの経過や変化が説明されている看取りのパンフレットが配布された。妻はそれを見ながら「次はこうなる」と心構えができ、「看取りでの不安はなかった」と言う。自宅で一緒に過ごすため、病院を行ったり来たりせず、体の負担も軽減された。「病院は落ち着かないので、自宅に帰ってこられてホッとしました」と妻は言う。

 男性は旅行が好きで、昨年5月、つまり診断の4カ月前には家族でハワイへ行った。そのあと、「俺がいなくなっても寂しくないように」と犬をもらってきたという。「いまは、この犬が主人のように、そばにいてくれます」と妻は涙をポロポロ流しながら話した。

本文で紹介した肺がん男性と妻。末期がんでもハワイへ旅行した。

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