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2016/2/9

免疫チェックポイント阻害薬は従来の癌免疫療法とは別のもの

日本医大の勝俣範之教授が両者の“混同”に警鐘

小崎丈太郎=日経メディカルCancer Review編集長

日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之教授

 新しい作用機序を持つ免疫チェックポイント阻害薬が、進行癌にも有効な治療法として注目されています。この薬剤は「免疫」という言葉が付いていることからも明らかなように、癌に対する免疫療法の1つと考えられています。実際、活性リンパ球療法を主とする免疫クリニックの中にも、この薬を使用した治療を行うところが出てきました。

 しかし、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之教授は、「免疫チェックポイント阻害薬は、癌ワクチンや活性リンパ球療法などの従来からある癌免疫療法とは全く別のものと考えてほしい。専門家にも免疫チェックポイント阻害薬を癌免疫療法の一部と捉えることを再考してほしいくらい」と注意を促しています。それはなぜなのでしょうか。

 1月28日に東京都内で開催された「日本肺癌学会第10回肺がん医療向上委員会」というセミナーで勝又教授は、「免疫チェックポイント阻害薬は地道な基礎研究と国際的な臨床試験を経て、承認されています。これに対して免疫クリニックなどで行われている活性リンパ球療法の多くは理論的にも臨床試験からも裏付けに乏しく、これらを癌免疫療法と一括りにすべきではありません」と警鐘を鳴らしました。「免疫クリニックの癌免疫療法のほとんどは免疫力を増強する方法を採用していますが、この方法が実際の癌治療で効果を上げた事例は極めて少ない。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ブレーキを解除して、体内にもともとある免疫細胞を活用する方法で、原理的にも違うものです。両者を混同しないように注意しないといけません」

 免疫とは、体内に侵入した病原菌や癌細胞のように体内に新しく発生した有害な異物を排除する仕組みです。しかしこれが過剰に働くと、関節リウマチのような新しい病気の原因になります。そこで私たちの体には、免疫が一定の役割を果たした後で、ブレーキがかかる仕組みがあります。成長した癌細胞を免疫がなかなか排除できない理由として、このシステムを癌細胞が乗っ取り、自分たちを攻撃する免疫反応にブレーキをかけていることが知られています。このアクセルからブレーキに転じる瞬間を、免疫チェックポイントと言います。

 免疫チェックポイント阻害薬は、癌細胞がかけたブレーキを解除し、免疫反応を持続させる薬剤です。最近になって、皮膚癌である悪性黒色腫や肺癌に対する治療薬として承認されました。臨床試験では、進行癌であっても、生存期間が改善される、長期にわたって生存する症例が出るなど、ここ数年、癌治療の世界の話題をさらってきました。この免疫チェックポイント阻害薬の成功を受けて、癌免疫療法を手術、薬物療法、放射線治療に続く“第4の治療”と位置づける専門医も出てきました。

 そしてインターネットで検索してみると、免疫クリニックの中にも、免疫チェックポイント阻害薬を使って治療していることを喧伝している施設も出て来ています。これまで免疫クリニックで行われていた癌免疫療法には「有効性を裏付ける十分なデータが存在しない」という弱点がありました。免疫チェックポント阻害薬の登場は、これらも含めた癌免疫療法の“復権”を意味するのでしょうか。
 
 免疫チェックポイント阻害薬は、十分な基礎研究の裏付けと世界的な規模で実施された臨床試験の結果、承認されています。従来の癌免疫療法とは桁違いの手間と費用をかけて成果が検証されています。つまり、「免疫チェックポイント阻害薬が効くから、活性リンパ球療法や癌ワクチンも有効性が証明された」とは結論できないのです。

 また免疫チェックポイント阻害薬を採用している免疫クリニックでは、その用量が問題になります。代表的な免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブの場合、肺癌(切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌)に使う場合、成人患者では「1回3mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴静注する」ことが決められています。もし患者の体重が60kgならば180mgのニボルマブを使うことになります。効果を発揮するために必要な薬物量は臨床試験によって検証されているのです。しかし、免疫クリニックの中には「ニボルマブを20mg使います」とうたっている施設があります。つまり十分な量の薬剤が使われておらず、効果が期待できないのです。従来の免疫療法と併せて使うのでしょうが、その少量で効果を実証した研究データは存在しません。

 「新聞やテレビなどで免疫チェックポイント阻害薬の有効性が紹介されていても、それは癌免疫療法全部の有効性が新たに確認されたことではありません。両者を混同しないように注意しないといけません」と、勝俣教授は患者やその家族に注意を促しています。

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