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レポート

2015/9/29

第8回市民公開講座より

腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜Vol.1

●どのようなくすりで治療しますか?
―患者の状態に合わせて薬を選択することが可能に―
本郷文弥氏(京都府立医科大学泌尿器科 講師)


 腎がんの治療では積極的に手術が行われるが、摘出が行えない場合や、腎臓の外(脳、肺、骨、肝臓、リンパ節など)に転移している場合は、薬物療法が行われる。腎臓の外の転移には、最初に腎がんが見つかった時点ですでに存在する場合と、腎がんの摘除術後の経過観察中に再発する場合がある。

 腎がんに有効な抗がん剤はないため、腎がんの薬物療法では、従来からの「免疫療法」とより新しい「分子標的薬」で治療が行われる。

 免疫療法は約20年前から行われており、もともと自分の体に存在する、免疫を担当するリンパ球などの細胞や、がん細胞を殺すサイトカインなどの働きを刺激し、がん細胞を見つけて攻撃するように働きかける治療法である。日本では免疫療法として、インターフェロンα(IFN-α)とインターロイキン2(IL-2)が保険適用となっている。IFN-αには、天然型と遺伝子組み換え型がある。週3-5回の投与が必要であるが、筋肉注射または皮下注射のため、患者が自宅で注射することができる。副作用として、インフルエンザ様症状(発熱、悪寒、関節痛など)、脱毛、白血球減少、うつ症状などがある。IL-2は週5回投与し、静脈注射のため通院が必要である。副作用として、細い血管から蛋白や水分が漏れ出す「毛細血管漏出症候群」が起こると、体重増加、低血圧、胸水などがみられる。インフルエンザ様症状もみられることがある。

 免疫療法の効果として、腎がんが小さくなる率(奏効率)は10-20%とされ、これは10人に治療を行った場合に1人か2人で効果が得られることを示す。肺やリンパ節への転移に効きやすく、骨への転移ではやや効きにくいとされる。腎がんが小さくなったまま長期間経過する場合もあり、稀ではあるが、治療を続けることで腎がんが消える場合もある。患者が元気であれば、まず腎がんの摘除術を行ってから、免疫療法を開始することもある。

 本郷氏は、免疫療法の留意点として、高熱が出ることがあるため、体温を測定し記録すること、疲労感や体の節々が痛むことがあること、IL-2による治療時にはむくみや息苦しさを感じることがあることをあげ、「医師との連絡体制を整えておくことが重要。何らかの症状が出たら、迷わず相談しましょう」と話した。

 次に、分子標的薬は5年ほど前から使われ始めた新しい薬で、がん細胞で働いているタンパク質(分子)を直接ピンポイントで狙い撃ち(標的)にし、その働きの邪魔をして、がん細胞の増殖や転移を抑制する。正常細胞への影響は少ないとされる。転移した腎がんでは、分子標的薬の投与により、悪化しないで生存できる期間が延長することが認められている。

 2015年8月の時点で、日本で保険適用になっている分子標的薬は6種類ある。分子標的薬の一つは、血管内皮成長因子(VEGF)チロシンキナーゼ受容体を阻害する「チロシンキナーゼ阻害剤」だ。がん細胞の増殖に必要とされる血管の発育促進を抑え、兵糧攻めにするもので、ソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブの4剤がある。もう一つは、細胞の分裂や生存の調節に中心的な役割を果たすmTORというタンパク質を阻害する「mTOR阻害剤」だ。がん細胞の中にある標的をピンポイントでブロックするもので、テムシロリムス、エベロリムスの2剤がある。

 本郷氏は、分子標的薬の代表的な臨床試験の結果を紹介した。転移を有する腎がん患者を対象に、スニチニブとIFN-αの有効性を比較したところ、奏効率はIFN-αの6%と比較してスニチニブは31%となり、約5倍高い効果が示された。病気が進行するまでの期間(中央値)は、IFN-αでは5カ月だったのに対し、スニチニブは11カ月という結果となった。また、予後不良なタイプの転移を有する腎がん患者を対象に、テムシロリムスとIFN-αの有効性を比較した臨床試験では、全生存期間(中央値)は、IFN-αの7.3カ月に対し、テムシロリムスでは10.9カ月となり、3.6カ月延長した。分子標的薬の使い方として、腎がんに対する治療が初めての場合、進行が比較的緩やかな患者ではスニチニブ、パゾパニブが、進行が急な患者ではテムシロリムスが使用される。

 腎がんに対する1回目の薬が無効になった場合、前に行われた治療別に指針が出されている。免疫療法が無効になった患者では、ソラフェニブ、アキシチニブが、チロシンキナーゼ阻害剤が無効になった患者ではエベロリムス、アキシチニブが使用される。mTOR阻害剤が無効になった患者では、新たに臨床試験に参加することなどが検討される。さらに、合併症の有無などによっても治療法は変わる。

 分子標的薬では、副作用も特徴的である。チロシンキナーゼ阻害剤のソラフェニブでは、手足症候群、高血圧、下痢、嗄声(声がかれる)、疲労感などがみられる。スニチニブでは、高血圧や血小板減少など、アキシチニブでは、疲労感、蛋白尿、甲状腺機能低下、発生障害など、パゾパニブでは肝障害などが特徴的にみられ、薬により違いがある。mTOR阻害剤では、口内炎、間質性肺疾患、感染症などが起こることがある。

 本郷氏は、分子標的薬による治療を受ける際の留意点として、(1)服薬手帳をつけること(2)毎日時間を決めて血圧を測ること(3)締め付けの強いソックスや靴を履かないこと(4)手足の保湿をしっかり行うこと(5)日常生活の変化(息苦しさなど)を記録しておくこと―をアドバイスした。分子標的薬でも、免疫療法と同様に医師との連絡体制を整えておくことが重要性になる。最後に本郷氏は「副作用を上手に管理して、生活の質を保ちつつ、一緒に治療を続けていきましょう」と呼びかけた。

腎癌研究会第8回市民公開講座の登壇者。
前列左から、腎癌研究会世話人代表で日本医科大学泌尿器科准教授の木村剛氏、国保小見川総合病院泌尿器科/スカイビル腎泌尿器科クリニックの大西哲郎氏、腎癌研究会会長で浜松医科大学泌尿器科教授の大園誠一郎氏、俳優でタレントの「コニタン」こと小西博之さん、第8回市民公開講座実行委員長の岡山医療センター副院長で津島知靖氏、東京女子医科大学附属青山病院泌尿器科部長の前田佳子氏。
後列左から、岡山大学泌尿器科講師の江原伸氏、徳島大学泌尿器科准教授の高橋正幸氏、川崎医科大学泌尿器科准教授の宮地禎幸氏、京都府立医科大学泌尿器科講師の本郷文弥氏、鳥取大学泌尿器科准教授の瀬島健裕氏。

※Vol.2の記事はこちらから
腎がんと診断されたら〜よく理解し、最適な治療を選択するために〜Vol.2

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