昨年12月から、全国46カ所の都道府県がん診療連携拠点病院と2ヵ所の国立がん研究センター(東京都中央区築地の本院および千葉県柏市の東病院)の「がん相談支援センター」では、がん専門相談員が病院別の各種がんの治療実績を検索することができるようになった。主に、セカンドオピニオンを求めるときや希少がんの病院選びなどで活用されることが期待されている。実例とともに、どんなときに、どのように役立つかを紹介しよう。
全国の都道府県がん診療連携拠点病院と国立がん研究センターの「がん相談支援センター」、および国立がん研究センター内に設置されている「がん情報サービスサポートセンター(無料電話相談)」では、がんに詳しい専門相談員(おもに、看護師、医療ソーシャルワーカー、心理士など)ががん患者・家族などからの闘病に関する相談を受けている。
相談内容は「治療選びや病院選びに関する情報を知りたい」「医師とうまくコミュニケーションが取れないが、どうしたらいいか」「先進医療とは何か」「がんになって、こんなことで困っている」など、さまざまな質問や不安が寄せられている。
がん専門相談員は一般に、診療ガイドラインや各種情報を用いて、できるだけ患者や家族の不安や悩みに役立つ情報を伝える役割を果たしている。
そのうち、病院選びについてはこれまで、がん診療連携拠点病院などで実施されている院内がん登録(「がん診療連携拠点病院等院内がん登録全国集計」)に基づく公開データをもとに助言することが多かった。
ただし、このデータからは、施設別・都道府県別・男女別の部位ごとの患者登録数は把握できたが、同じ臓器のがんでもステージ別(がんの進行度で0期〜4期)や組織分類別(細胞組織の分類で、扁平上皮がん、腺がんなど)の治療実績までは分からなかった。
また、希少がんにおいては、ざっくりと「白血病」「悪性リンパ腫」「脳神経」「骨軟部」など、がんの種類別の情報しか得られなかった。
今回の新しい検索システムが導入されることで、組織型別、治療法別のほか、患者数の多い五大がん(胃・大腸・肝臓・肺・乳腺)はステージ別の治療実績も調べることができるようになる。
たとえば、前述の悪性リンパ腫の組織型別分類の一つ「バーキットリンパ腫」の治療実績のある病院を調べたい場合、ある県では「2009年〜2012年までの期間、治療したことがあったのはAとBの2病院あり、そのうちのA病院では9例、B病院は6例の治療実績があった」などの情報を検索画面上で入手できるようになる。
昨年4月末からの約半年間、全国7カ所のがん診療連携拠点病院とがん情報サービスサポートセンターでこの検索システムを試行的に導入したところ、患者の病院選びの決定の支援や不安解消に役立ったという。