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レポート

2015/2/17

厚労省の研究班が東京でセミナー開催

遺伝子情報をがんの診療に活用する―遺伝性乳がん卵巣がん― Vol.1

福島安紀=医療ライター

亀田京橋クリニック診療部長の戸崎光宏氏

卵巣・卵管切除で卵巣がんと乳がんのリスクが低減
 HBOCと診断された場合、具体的な対策として、(1)計画的ながん検診(サーベランス)、(2)薬を服用する化学予防、(3)リスク低減手術(がんが発症する前に卵巣・卵管あるいは乳房を予防的に切除)といった選択肢がある。

 特に、乳がんのリスクが高い人に対して有効とされているのが、MRIを使ったがん検診だ。MRI装置を使用して、乳房の病巣を画像化し診断する。「遺伝的要因/家族歴を有する高リスク乳がん・卵巣がん症候群」に対するNCCN(National Comprehensive Cancer Network、全米の主要な21のがんセンターが非営利目的で結成したガイドライン策定組織)のガイドラインでは、25歳(あるいは、家族が乳がんを発症した最も早い年齢)からMRIによる検診、30歳以降はMRIとマンモグラフィを組み合わせた検診が推奨されている。

 亀田京橋クリニック診療部長の戸崎光宏氏は、「マンモグラフィ(X線)、超音波検査、MRIはそれぞれ原理が違うので、1つの検査では腫瘍が写ったけれども他の検査では見えないということが出て来る。欧米の研究では、遺伝的に乳がんのリスクの高い人に対しては、マンモグラフィや超音波よりもMRIの感度が圧倒的に高いことが分かっている」と語る。我が国でもHBOCの人や血縁者に乳がん患者が多い人に対しては、NCCNガイドラインに準じた検診が行われているが、同研究班では日本人にもMRIが有効かについても検証する計画という。

 卵巣がんに対しては、早期発見に有効な検診法は確立されていない。経腟超音波検査や血液検査による腫瘍マーカーのCA-125の測定が行われているが、卵巣がんは進行が早く、半年に1回検診を実施しても見つかったときには進行しているケースもあるのが現状だ。

慶應義塾大学病院産婦人科教授の青木大輔氏

 「卵巣は検診に向かない臓器であり進行卵巣がんは予後が不良であるため、NCCNガイドラインでは、HBOCの人に対して35〜40歳までの出産終了時に両側の卵巣・卵管を切除するリスク低減手術を推奨している。手術を選択しない人は、半年ごとに経腟超音波検査とCA-125の測定、あるいは、経口避妊薬で排卵を抑制して卵巣がんの発症リスクを減らす方法もある」。慶應義塾大学病院産婦人科教授の青木大輔氏はそう解説する。米国人女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが2013年に受けたのは乳房の予防切除だが、今後は卵巣・卵管の予防切除も受ける予定とされる。

 青木氏によれば、卵巣・卵管を切除すると卵巣がんのリスクが80〜90%、乳がんのリスクも50%減少し、死亡率は60%減少する。日本でも乳がんを経験したHBOCの人を中心に、予防的な卵巣・卵管切除術を受ける人が増えてきている。ただ、卵巣・卵管を切除すれば妊娠ができなくなり、閉経前に卵巣を切除すると更年期症状が起こる、リスク低減手術には保険が利かず、費用の負担が大きいというデメリットもある。

 青木氏は最後に、「メリット、デメリットを考慮し、予防手術を受けるかどうかは自分で決めることが大切。自分の遺伝的なリスクを知れば、乳がんや卵巣がんの予防や治療に応用できることを知っていただきたい」と強調し講演をまとめた。

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