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レポート

2015/2/17

厚労省の研究班が東京でセミナー開催

遺伝子情報をがんの診療に活用する―遺伝性乳がん卵巣がん― Vol.1

福島安紀=医療ライター

 乳がん、卵巣がんになる確率が一般の人より6〜60倍高い遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)。日本対がん協会とがん研有明病院が2014年12月に、「遺伝性乳がん卵巣がん―遺伝子情報をがんの診療に活用する―」をテーマに東京都内でセミナーを開催した。HBOCに関する厚生労働省の研究班の一般向け発表会として実施されたもので、代表のがん研有明病院遺伝子治療部長の新井正美氏ら、我が国のHBOCの研究・治療をリードする医師や研究者7人が講演し、会場に集まった参加者の質問に回答した。Vol.1では、当日の講演の様子をレポートする。

がん研有明病院遺伝子診療部長の新井正美氏

遺伝性乳がん卵巣がんの全国登録をスタート
 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は、細胞を修復する遺伝子BRCA1かBRCA2に生まれつき変異(異常)があり、40歳未満など比較的若い年代で乳がん、あるいは卵巣がんを発症しやすい症候群だ。一生涯のうち乳がんになるリスクは41〜90%、卵巣がんになるリスクは8〜62%で、一般の人(日本人)より乳がんで6〜12倍、卵巣がんで8〜60倍発症リスクが高い。この遺伝子変異は、男女を問わず親から子に50%の確率で受け継がれる。

 「発症率やHBOCになるリスクを減らす予防手術の有効性などは欧米の研究に基づいたもので、日本人のHBOCについてはデータが乏しい。そのため遺伝子検査が保険適用になる道が開けないなど日本人のデータがないことがネックになっている。我が国でのHBOCの実態解明と遺伝子情報を用いた診療の有用性を検討し、HBOCの人の生命予後の改善につなげたい」。セミナーの冒頭、新井氏はHBOCに関する研究班(「わが国における遺伝性乳癌卵巣癌の臨床遺伝学的特徴の解明と遺伝子情報を用いた生命予後の改善に関する研究」研究班)を今年度から立ち上げた経緯を説明した。

 同研究班は、日本人のHBOCの特徴を明らかにするため、全国登録制度を2014度中にスタートする。対象は、BRCA1/2の検査を受けた人。変異の有無に関わらず本人の同意が得られれば、氏名など個人情報は分からないようにした上で、遺伝子情報、がんの発症年齢とタイプ、転移の有無、受けた治療法などを登録して経過を追うという。

札幌医科大学附属病院遺伝子診療室長の櫻井晃洋氏

 登録事業を担当する札幌医科大学附属病院遺伝子診療室長の櫻井晃洋氏によると、遺伝性のがんは乳がんの7〜10%、卵巣がんの5〜10%を占め、遺伝子検査を受けていない人も含めるとHBOCによって毎年数千人が乳がん、卵巣がんを発症している。HBOCは若くして乳がんや卵巣がんを発症するので、一般の人と同じように40歳から乳がん検診を受けるのでは間に合わない恐れもある。BRCA1/2に変異のある男性は乳がんになる可能性があり、前立腺がんになるリスクも高い。

 「病気になった人だけではなく家族全体の問題で、男性も当事者だ。日本では、欧米のデータを基にチェックシート(表1)を作成しているが、日本人のデータに基づいてHBOCの診断、治療、予防のあり方を示す必要がある。登録制度の実施によってHBOCの人の治療成績を向上させ、HBOCの人を対象にした薬が承認されれば、登録者にはそういった情報をいち早く伝えるなどといったことにもつなげたい」と櫻井氏は話した。

表1 遺伝性乳がん卵巣がんの簡単チェックシート(HBOCコンソーシアムが作成)
母方、父方それぞれの家系について、あなた自身を含め家族の中に該当する方がいる場合、チェックを入れる。1つでも該当すれば、遺伝性乳がん卵巣がんである可能性が一般より高い。

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