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レポート

2015/2/3

神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科の加藤晃史氏に聞く

EGFR遺伝子変異のある肺癌の治療中に認められる下痢の対処法、教えます

加藤勇治

対処の基本はロペラミド服用

 こうした下痢に対する対処法ですが、止痢薬(いわゆる下痢止め)であるロペラミドを用います。

 我々の経験で、アファチニブ投与後、お腹が緩くなった患者さんがいましたが、すぐに1日10回から20回トイレに行かなければならない状態になってしまったケースがあります。これぐらい何回もトイレにいくと、脱水を起こしやすいですし、日常生活にも影響が出ます。こうした悪化を防ぐためにも、アファチニブ投与後、お腹が緩くなったらすぐにロペラミドを服用することをまず知って欲しいと思います。

 また、実はこれは医師側の問題なのですが、昔から医師は「下痢は止めるな」と教わるのです。それは、例えば子どもの下痢が代表例ですが、ウイルスや微生物による下痢の場合、身体が異物を排泄するために下痢を起こします。このとき止痢剤を処方すると、せっかく身体が異物を排泄しようとしているのにそれを止めてしまうからです。このように教わってきますので、どれだけ優秀な医師でも、止痢剤を処方することをためらいがちなのです。こうした背景があることから、冒頭に述べたように医師に向けても下痢の情報提供を積極的に行ってきました。今では肺がんを治療する医師の間でかなり認知されてきたのではないかと感じています。

漫然とロペラミドを服用しない、自分の実感と生活に合わせて

 ただし、ロペラミドを長期間服用すると便秘になりやすいというロペラミド側の副作用があります。便秘はひどくなるとこれも辛いので、できるだけ避けたいものです。

 アファチニブ治療を開始するときには入院して服用を開始します。この入院期間に、アファチニブの服用を開始し、お腹が緩くなったと感じたら、すぐにロペラミドを服用していただくということにまず慣れていただきたいと思っています。そして退院後、慣れてきたら、ご自身の状態と生活スタイルを考えて、必要なときに服用する、というセルフメディケーションの考え方で対応していただきたいと思っています。

 ここで大切なことは、先に述べたように下痢に伴う腹痛があるわけではありませんし、トイレに行く回数の苦労は患者さん1人1人でとらえ方が違うということです。通勤電車を使われる方は行き帰りの通勤時間、少し注意しなければならないかもしれません。一日中、営業で外回りをしている会社員の方であったら、1日5回も6回もトイレに行かなければならないというのは仕事に差し支えるかもしれません。自宅にいることが多い方であれば1日6回7回とトイレに行くことはさほど影響はないかもしれません。

 我々の施設を受診している患者さんの中には、お腹が緩くなることに対してロペラミドを服用することを覚えていただいた上で、しばらくして慣れてきたので、自ら生活スタイルに応じて服用することを工夫して実践されている方がいます。

 その方には、ロペラミドをまとめてたくさんお渡しするのですが、「今日は夜に宴会がある。きっとビールを飲みたくなるのでお腹が緩む可能性が高いから、朝、ロペラミドの量を増やしておこう」とか「今日は寒くてお腹も冷えそうだからロペラミドを増やそう」とか「今日は暑くて汗をたくさんかきそうなので、便秘になりやすいからロペラミドを減らそう」というように自ら考えて対処しているそうです。あるいは、女性の患者さんで、普段から便秘が強いそうで、「お腹が緩くなるとちょうどよい。ロペラミドは要りません」とおっしゃる方もいます。

早期に下痢が発生することはむしろ有用な情報である可能性

 さらに、最近、我々の研究で、早期に下痢が発生することはむしろ治療を進める上で有用な情報である可能性が明らかになってきました。

 アファチニブの臨床試験の結果を詳細に解析したところ、アファチニブを投与開始して、早期の段階で頻度の高い下痢が発生し、その時点で下痢に対処しつつ、アファチニブの投与量を減らして治療を継続した患者さんが何人かいらっしゃいました。そして、投与量を減らした状態で長期間、アファチニブを服用し続けることができていたのです。

 まだ現時点では断言できませんが、少々ひどい下痢が起きてアファチニブを減量した結果、その減量した用量がその患者さんに最適な投与量であった可能性があるのです。体格が小柄な方、高齢の女性にとっては決められた用量よりも少し減らした用量の方が向いているのかもしれません。

 ただし、小柄だから、高齢の女性だからといって最初から減らした用量で開始する訳にはいきません。決められた用量は臨床試験の結果から決められているものですし、小柄な方であっても、決められた用量で問題ない方も多くいらっしゃいます。

 これらのことを考えると、治療を開始して少々ひどい下痢が出た、ということは、治療内容をご自身の状態に最適なものにするチャンスであると言えるのかもしれません。

 こうしたことから、私は、アファチニブ治療を開始するときに覚えておいて欲しいこととして、下記の項目を挙げています。

(1)下痢について、過度に不安になる必要はないこと

(2) 下痢が、2日から4日ぐらいで起こること。ほとんどの方で1週間以内に必ず起こること

(3) 症状としてまずはお腹が緩くなること。場合によってはひどくなる可能性があるのですぐに対処すること

(4) お腹が緩くなったらロペラミドを服用する、ということを覚えて欲しいこと

(5) 慣れてきたら、ご自身の生活スタイルに合わせてロペラミドの服用を調節して欲しいこと

(6) 下痢が原因でアファチニブが減量されても、自分に適した調整が行われた可能性があると前向きにとらえて欲しいこと

 (6)についてはまだ研究途中ではありますが、下痢が発生することを前向きにとらえ、ご自身で積極的に管理し、治療中の生活を快適なものにしていただきたいと願っています。

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