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レポート

2015/1/6

昭和薬科大学医療薬学教育研究センター准教授の渡部一宏氏に聞く

がん性皮膚潰瘍臭のケアに保険適応を取得したゲル製剤登場

加藤勇治

有効な薬剤はあるが、適応外だった時期が長く続く

 こうした皮膚潰瘍臭の原因である嫌気性菌に対して有効な薬剤は古くから存在します。それがメトロニダゾールという抗菌薬です。この抗菌薬によって嫌気性菌を抑えると皮膚潰瘍臭はかなり低減することができます。

 しかし、メトロニダゾールは感染症の治療薬として錠剤はあったものの、患部に塗布するような外用剤はありませんでした。患部に塗るには軟膏、クリームやゲルでなければいけませんが、こうした形の製剤は日本ではなかったのです。

 しかし、がん性皮膚潰瘍臭に対するケアをしなければいけません。そこで、適応外使用ではありますが、一部の病院の薬剤部で、試薬のメトロニダゾールを用いて、軟膏、クリームやゲルなどと混ぜて塗り薬(院内製剤)を作り、塗り薬をガーゼに塗り、それを患部に貼るという使い方をしてきました。

 しかも、定期的にガーゼを張り替える必要がありますので、毎日多くの「塗り薬」が必要です。私自身、過去に東京の聖路加国際病院に勤務していた際には、毎日メトロニダゾールを軟膏、クリームやゲルに混ぜては練って「塗り薬」を作っていました。他の施設でも、薬剤師がこのように「塗り薬」を作って対応しているケースがあると思います。

 こうした院内製剤は、薬剤師の負担もさることながら、適応外使用というのが問題でした。院内製剤とは、適応外での使用ではあるものの、医師の管理下のもとで特別に製剤化して使用することが許されているというものですが、使用する患者さんに対してインフォームド・コンセントが必要になるばかりでなく、保険がききません。そのため、病院にとっては製剤の材料費などが持ち出しとなり、病院の負担になってしまいます。聖路加国際病院は幸いにも院内製剤の調製が受け入れられましたが、普通はこうした病院が負担することは、なかなか認められにくいものです。

 勿論、院外処方箋で街の保険薬局薬剤師が調製したメトロニダゾールの塗り薬をもらったりすることができませんから、あくまで病院のなかで使用するだけにとどまってしまうのです。

 しかしこれからはきちんと保険診療の一環として使用することが可能になります。このことは、どこの施設でもがん性皮膚潰瘍臭に対してケアをすることができますし、外来処方によって保険薬局で調剤をしてもらい、ご自宅で、ご自身でケアすることもできる、ということになるのです。最近は、在宅、通院で治療を受けられるがんの患者さんが増えてきていますので、多くの患者さんのQOLを改善していくのではないでしょうか。
がん性皮膚潰瘍臭については、乳がんの終末期で頻度の高いものですが、その他、例えば、頭頸部がん、皮膚扁平上皮がんや肛門がんでもがん性皮膚潰瘍が起こりやすいと考えられています。こうしたがんにおいても有効に活用していけるのではないでしょうか。

 今回使用可能になるのはロゼックスゲル0.75%というゲル剤です。チューブから出してガーゼに塗り広げ、そのガーゼを患部に覆うように使います。これによってがん性皮膚潰瘍臭のケアは大きく進歩しますが、我々は、これまでの研究で、ロゼックスゲル0.75%は、ガーゼ交換の時に、患部から使用したガーゼが剥がれにくいということがわかっています。使用したガーゼを剥がす際は、ぬるま湯等で十分濡らしてから剥がしてガーゼ交換を行うことが必要です。

 まだ、研究段階ですが、ロゼックスゲル0.75%のゲル基剤とは別に、保水性や保形性の高いセルロース誘導体からなるゲル基剤にメトロニダゾールを加えた製剤が剥がれやすく、使用も簡便で有用であるという研究結果を得ています。最近、よく使われるようになった、発熱したときにおでこに貼る、あのぷるぷるとした製品をイメージされてください。さらに研究を進め、このセルロース誘導体からなるメトロニダゾールゲル製剤が開発されれば、さらに簡便にケアできるようになるのではないかと期待しています。

 最初に申し上げたとおり、がん性皮膚潰瘍臭は、ご家族や知人・友人などと過ごす大切な時期に起こりやすいものです。使用しやすく、保険診療で使用可能ながん性皮膚潰瘍臭改善薬ロゼックスゲル0.75%がやっと出てきたことで多くの患者さんのQOLが改善していくと期待しています。

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