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レポート

2014/12/9

〜アイビー千葉(乳がん体験者の会)公開講座〜

乳房再建で「温かく、柔らかく、美しい乳房」を取り戻す Vol.1

森下紀代美=医学ライター

人工物による再建のメリットは新たな傷ができないこと
 人工物を用いる再建では、乳房の形をしたインプラントを使用する。日本でも、インプラントのラウンド型(おわん型)が2013年7月に、アナトミカル型(しずく型)が2014年1月に保険適応となった。表面の性質、高さや幅、突出度など、さまざまな種類がある。

 インプラントではまず、エキスパンダーと呼ばれる風船状のものを大胸筋の下に入れる手術「組織拡張術」を行う。その後、エキスパンダーに生理食塩水を少しずつ注入し、胸筋と皮膚を伸ばしていく。4-6カ月後、十分に伸びたところで、エキスパンダーとインプラントを交換する。

 インプラントを用いる再建では自家組織を使わないため、乳がん手術の際の傷以外に新たな傷を作ることがなく、またドナー部の合併症を考える必要がないという利点がある。ただし、再建された乳房は硬く、露出や感染のリスクがあり、感染に弱い、インプラント周囲にできた被膜が硬くなって収縮してくる――といった欠点もある。また耐久性の点から、十数年で入れ替えを考慮する必要もある。

傷痕が残らない再建法が登場
 体に傷痕が残らない乳房再建の方法も登場した。「Brava(商品名)」と呼ばれる、体の外側から胸を立体的に膨張させるエキスパンダーと、脂肪移植法を組み合わせる方法だ(図3)。

図3 Bravaの概要
(※クリックすると拡大します)

 Bravaはもともと豊胸に用いられたものだ。プラスチックでできたドーム状のカップ2個を胸に装着し、それぞれのカップにつながったT字型のチューブをスマートボックスと呼ばれる吸引器に接続し、15-30mmHgという弱い陰圧をかける仕組みになっている。陰圧をかけることで組織が浮腫を起こし、組織中の血管が増えることが確認されている。Bravaを1日10時間装着し、約10週間続けると、最大の豊胸効果が得られるとされている。

 佐武氏らが行う方法では、Bravaを乳房再建術の前後4週間使用し、皮膚と大胸筋を立体的に拡張する。併用する脂肪注入では、臀部や腹部、大腿部から吸引した脂肪を遠心分離にかけ、精製した脂肪を細かく、何層にも分けて、大胸筋と皮下組織に注入する。脂肪注入は、小さな胸の患者では2回、大きな胸の患者では3、4回繰り返す。この方法は、乳房温存療法を行った後の修正にも用いることができる。Bravaを併用することで、移植した脂肪の生着率も改善することが報告されている。

 佐武氏らはすでに75人にこの方法で再建を行い、いずれも良好な結果が得られている。ただし、日本でBravaを購入する場合は自費となり、高額になる。またBravaを装着する部位で、多くの患者が皮膚かぶれ(接触性皮膚炎)を合併するため、医師の指導下に、慎重に使用していくことが望ましい。

 佐武氏は講演の最後に、「乳房を再建したことで、その後の人生を良い方向に変えている患者さん、がんになる前よりもアクティブに過ごしている患者さんはとても多い。形成外科を受診することに最初は勇気がいると思うが、勇気を出して病院に行き、医師や乳房再建の経験者と話をしてほしい」と語った。

横浜市立大学附属市民総合医療センター病棟看護師の岩元絵美氏

再建術後3日目まではベッド上安静
 乳房再建術を受けた後はどのように過ごすのか―。患者にとっては具体的に知りたい情報だろう。看護師の岩元氏が乳房再建術の術後の経過と看護のポイントについて説明した。

 遊離穿通枝皮弁を用いた乳房再建術で温かく柔らかい乳房を作るためには、手術でつないだ血管の血流を保つことが重要になる。そのために必要になるのが、血管の安静、異常の早期発見のためのこまめな観察、ドナー部の安静だ。

 そのため、術後3日目まではベッド上での生活となる。手術をした側の肩は動かせない。ベッドを起こせるのは35-45度程度までで、自由に寝返りはできない。足は曲げたままか伸ばしたままのどちらかとなる。術後は点滴や酸素マスク、血栓予防のための靴下とマッサージのフットポンプがつけられる他、背中から持続的に注入している鎮痛剤のチューブ、トイレに行けないため尿を回収する尿管、傷口からの排液を促すドレーンなども挿入する。ややつらい安静期間になるが、乳房の血流を保つため、そしてドナー部の傷の安静のために必要な期間となる。

 安静期間中は、看護師が1時間毎に再建した乳房を観察する。手術でつないだ血管の血流音をはじめ、乳房の温かさ、柔らかさ、張り感などを細かく観察する。その他、看護師が毎日体を拭いたり、着替えを手伝ったり、食事や洗面の手伝いなども行う。多くの患者が訴える腰痛に対しては、マッサージや湿布、クッションやタオルを当てるなどして対応しているという。

 48時間が過ぎると、患者はベッド上で座れるようになる。順調に経過すれば、術後3日目以降は歩行が可能になる。トイレまでスムーズに歩行できるようになれば尿管を抜くことができ、4日目からは排液量に応じてドレーンも抜ける。術後5日目からは退院の準備期間となり、傷口のテーピングが自分でできるよう、指導を受ける。多くの患者は術後7-10日目に退院となる。

 岩元氏は最後に「安全で苦痛の少ない入院生活を送っていただけるよう、私達も努めていくので、患者さんにも理解をお願いしたい」と述べた。

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