手足症候群は早めの休薬、減薬で対処を
一方、分子標的薬による皮膚障害には、ソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブなどのマルチキナーゼ阻害薬によって発現する手足症候群もある。消化器がんでよく使われる5-FU、S-1などの副作用にも茶色い湿疹が出て手足がむくみ、皮がむける手足症候群と呼ばれる症状があるが、それとは全く異なり、手と足の体重や力がかかる部分が赤くなって腫れ強い痛みが出る。手足症候群になりやすいのは、利き手の親指、人差し指と中指、足のつま先、かかと、靴に当たる部分などで、足が痛くて歩けなくなる人もいる。これはセツキシマブやパニツムマブで見られる皮膚障害とは異なったタイプのものだ。
「治療の原則は保湿剤で潤いを与えてステロイド外用薬を塗ることだが、EGFR阻害薬や抗EGFR抗体薬とは違い副作用の強さと治療効果には関連がないうえ、マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群は一度症状が起こると何をやっても痛みが治まらない。休薬すれば2週間以内で痛みがなくなるので、痛みが出そうな段階で早めに休薬し、適切な量に薬を減らしてマルチキナーゼ阻害薬の投与を再開したほうが結果的にがん治療が長く続けられる」と山崎氏。
手足症候群はその発症率に明らかな人種差があり、日本人を含むアジア人に出やすい副作用として知られる。例えば、腎細胞がんの患者さんにソラフェニブを投与した場合、グレード3(重症)の手足症候群は欧米人で5.5%だったのに対し日本人では9.2%、症状が軽い人も合わせた全グレードの手足症候群の出現率は欧米人28.8%、日本人55.5%だったという。
最後に山崎氏は、昨年承認されたマルチキナーゼ阻害薬のレゴラフェニブ、今年承認されたEGFR阻害薬のアファチニブについて、「同じタイプの分子標的薬よりも治療効果が高いが、皮膚障害の副作用も強く出る傾向がある。患者さん自身のスキンケア、そして、担当医、皮膚科医、看護師、薬剤師などによるチームで皮膚障害をケア、治療していくことがますます重要になっている。患者さんもチームの一員として皮膚の症状を克服し、がんの治療を受けながら元通りの生活をできるだけ長く続けてくれたらうれしい」と強調し、講演を締めくくった。