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レポート

2014/10/28

甲状腺がんに対する分子標的薬が登場、外科と内科の診療連携を推進するため3学会が共同でプログラムを実施

加藤勇治

 ただし、杉谷氏は、分子標的薬による治療について、現状の課題をいくつか指摘する。1つは、完全寛解例がほとんど認められていないことだ。また、これまでの甲状腺がんに対する分子標的薬の臨床試験では、病勢の進行を抑制する効果は認められているが、全生存期間の改善についてはそもそも甲状腺がんの生存期間が長い傾向にあることから、全生存期間に対する有効性を評価するにはもう少し時間が必要といえそうだ。

 もう1つは、日本で甲状腺癌の治療にあたる医師は外科医であることがほとんどであることだ。海外では手術は内分泌・頭頸部外科医が担当し、診断や術後のフォローアップは内科医や放射線科医が行うという分業で取り組まれている。しかし、日本では外科医がほとんどを担当しているのが現状だ。

 昨年行われた日本内分泌外科学会/日本甲状腺外科学会アンケートでは、分子標的薬の「使用経験がある」医師は35%で、65%は「使用経験がない」と回答していた。さらに、分子標的薬による有害事象が発生した場合にコンサルトできる医師が「院内にいる」と回答した医師が71%だったが、「院外だが近い」という回答は1%、「いない」という回答は28%に上っていた。

 ソラフェニブでは、手足症候群や高血圧、下痢などの有害事象の発生頻度が高く、また頻度は少ないものの多形紅斑、肝炎、間質性肺炎、消化管穿孔・潰瘍などが認められ、適切なマネージメントが必要となる。こうした特徴的な有害事象は、他のチロシンキナーゼでも認められており、皮膚症状への適切な介入や減量・休薬を行うことで管理可能なはずの有害事象による治療の中断を避けることが重要と考えられるようになっている。

 今後、分子標的薬の登場により外科医も使用経験を重ねていくことはできるが、分子標的薬だけでなく有害事象の経験も重ねてきたがん薬物療法専門医の協力を得ることで、今すぐにでも患者の治療期間中の有害事象を適切にマネージメントできると期待される。

国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科科長で通院治療センターセンター長、早期・探索臨床研究センター先端医療科も兼務する田村研治氏

 そこで3学会は、分子標的薬が次々と登場することを前提に、薬剤を適切に使用し、有効性を十分に患者が享受できるよう、診療連携を確立するために共同でプログラムを作成した。

 日本臨床腫瘍学会では、臓器横断的に質の高いがん薬物療法を実践できる医師を「がん薬物療法専門医」と認定している。学会では、書類選考や筆記試験、口頭試問試験などを行い、これまでに全国で1000人近い医師を専門医として認定した。

 こうした外科側のニーズと内科側のシーズが合致し、今回のプログラムが結実したと言える。

 プログラムの柱は2つで、1つは外科医と内科医の診療連携の促進。具体的には、日本を9つのエリアに分け、エリアごとに外科医1名、内科医1名のリーダーを置く。内科医のリーダーは、エリアごとにこのプログラムに賛同する「がん薬物療法認定医」をとりまとめる。内科医側で患者登録し、連携の記録とフィードバックも進める。

 実際には、外科医が内科医に患者を紹介し、薬物療法を行って状態が安定したら紹介元に戻す、あるいは外科医と内科医の両方で併診することにより分子標的薬による治療期間中は内科医が適切に処方、副作用のマネージメントなどを行うことになる。

国立がん研究センター中央病院副院長、呼吸器内科長で、日本臨床腫瘍学会理事長も務める大江裕一郎氏

 エリアとエリアリーダーは、日本甲状腺外科学会、日本内分泌外科学会、日本臨床腫瘍学会のいずれのホームページからも閲覧することができる。

 もう1つの柱は、地域における甲状腺癌治療に関する外科医医、内科医合同の教育事業を推進することだ。

 日本臨床腫瘍学会側から会見で登壇した国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科科長で通院治療センターセンター長である田村研治氏は、「既に連携して診療にあたっている件数は30件を超えた。このプログラムは、学会という単位で連携を推進する初めての例だ」と紹介した。

 日本臨床腫瘍学会理事長の大江裕一郎氏は、「これまで外科治療や放射線療法などが中心で、薬物療法の選択肢が少なかった癌においても、今後、分子標的薬が使用できるようになっていくだろう。こうした新しい治療選択肢を有効かつ安全に患者に届けていくために、今後もこうした連携を進めていくことが重要だ」と語っている。

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