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2014/10/21

「前立腺がんフォーラム もっと知りたい!前立腺がん〜あなたに合った治療の選択〜」から

自身の状態と希望で治療法を選ぶ前立腺がん治療

福島安紀=医療ライター

 前立腺がんは年々増えており、2020年には男性で罹患者数が肺がんに次いで2番目に多くなると予測されている。NHKエデュケーショナルが9月23日、東京で「前立腺がんフォーラム もっと知りたい!前立腺がん〜あなたに合った治療の選択〜」を開催。同日の会では、フリーアナウンサーの久田直子さんを司会に、早期発見法と自分に合った治療法を選ぶポイントをテーマに4人の医師らがパネルディスカッションを行った。




国立病院機構東京医療センター泌尿器科医長の斉藤史郎氏

 「前立腺がんが増えている主な原因は、食生活の欧米化、人口の高齢化、そして、早期発見のための腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)検査を受ける人が増加したことの3つ。前立腺がんは基本的には無症状なので、早期発見のためにはPSA検査を受けることが重要」。国立病院機構東京医療センター泌尿器科医長の斉藤史郎氏はこう強調する。

日本泌尿器科学会は50歳以上の人にPSA検診を推奨
 PSAは、前立腺から精液中に分泌されるたんぱく質の一種で、血液中にも流れており、前立腺に異常があると血中に大量に放出されることが明らかとなっている。PSA検査は血液検査で、基準値の4ng/mLを超えた場合は、直腸診、経直腸エコーなどの精密検査が必要とされる。群馬大学医学部附属病院泌尿器科准教授の伊藤一人氏はグラフ(図1)を提示し、「PSAの値の上昇に伴い、前立腺がんの確率が高まることを説明した上で、「一方で、前立腺の肥大や炎症など別の理由でPSA値が上がることもあるので、きちんと精密検査を受けることが大切。日本泌尿器科学会では、50歳以上からPSA検査の受診を推奨している。もしも血のつながった人に前立腺がんになった人がいる場合には危険率が2〜10倍高くなるので、そういう人は40代から検査を受けてほしい」と話す。

図1 PSA値とがんの確率
(群馬大学医学部付属病院泌尿器科のデータより)

 前立腺がんは腫瘍の広がり方によって大きく、限局がん、局所進行がん、転移がんの3つに分けられる。限局がんは腫瘍が前立腺がんの中にとどまった状態、局所進行がんは前立腺の周辺までがん組織が広がった状態、転移がんは骨やリンパ節などほかの臓器へ転移が見られる状態だ。限局がんは、PSA値、がんの悪性度(グリソンスコア)、病巣の進展度によって低リスク、中リスク、高リスクの3段階に分けられ(図2)、リスクによって治療法の選択肢が変わる(図3)。

図3 前立腺がんの治療(※クリックすると拡大します)

低リスクの人はPSA監視療法、ロボット支援手術の選択肢も
 治療法には大きく分けて、PSA監視療法、手術、放射線療法、ホルモン療法の4つがある。「低リスクの場合は、しばらく治療をしないでPSAを定期的に測りながら、PSA値の変動をモニタリングしておき、必要に応じて針生検を行い治療のタイミングを見るPSA監視療法を選ぶ手もある」と斉藤氏。

群馬大学医学部附属病院泌尿器科准教授の伊藤一人氏

 PSA監視療法の対象になるのは、限局がんで(1)PSA値が10 ng/mL以下、(2)針生検で10〜12本中陽性が2本以下、(3)がんの悪性度が低い(グリソンスコア6以下)――、の3つ全てを満たした場合が目安という。「手術や放射線療法のような積極的治療を行ったときには性機能障害、尿失禁といった合併症が起きることが多い。しかし、PSA監視療法はすぐに治療をするわけではなく、注意深くチェックしながら様子を見る方法なので、一時的に、あるいは一生涯、そういった合併症が起こる可能性がある手術や放射線療法を避けられる。進行度とリスクによっては適さない場合もあるが、PSA監視療法を受けたい人は担当の医師にその希望を伝えてほしい」と伊藤氏はアドバイスする。群馬大附属病院では、PSA監視療法を実施した人のうち約3割は開始から5年以内に積極的な治療が必要な状態になったものの、約半数は15年以上進行も積極的な治療もせずに経過観察している。

 ただし、完治を目指す治療の柱はあくまで手術と放射線療法だ。手術では、前立腺と精嚢、その周囲のリンパ節を取り除く。斉藤氏によれば、手術のメリットは、切除したがん組織を詳しく調べられるので進行度が正確に分かること、前立腺肥大症を併発している人はその治療としても有効なこと。デメリットは尿失禁、性機能障害になるリスクがあることだ。

 なお、前立腺がんにおいて、再発したかどうかを判断する目安の一つがPSA値だが、欧米の主要施設(Prostate Cancer Results Study Group)の総合データでは、手術の5年PSA非再発率は低リスクの人の場合90%前後、中リスク65〜75%、高リスク30〜60%で、リスクが高い人については、手術で前立腺と精嚢、その周囲のリンパ節を全て取り除いたとしても再発率が高いことが報告されている。

 現在、前立腺がんの手術で特に注目されているのがロボット支援手術だ。日本では一昨年(2012年)4月に保険適応になり、約200台が導入されている。「ロボット支援手術は腹腔鏡手術の延長線上にある手術で、従来の腹腔鏡手術よりも小回りがきき、前立腺と精嚢を切除した後、膀胱と尿道を縫い合わせるときに非常に緻密に縫えるので尿失禁の回復が早く、性機能を司る神経を温存しやすいというメリットがある。従来の手術ではどうしても手が震えることがあるが、ロボット支援手術の場合は手ぶれ補正がついており、開腹手術、腹腔鏡手術よりも緻密な手術がやりやすくなった。米国では前立腺がん手術の9割くらいがロボット支援手術になっており今後は日本でも増えるだろう」と斉藤氏は指摘する。

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