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レポート

2014/10/7

〜NPO法人パンキャンジャパンと公益財団法人がん研有明病院のセミナーで〜

難治性がんの胆道がん、手術と薬物療法の現状を解説 Vol.2

福島安紀=医療ライター

 胆道がんは、肝臓から分泌される胆汁の通り道である胆管と胆のうに発生するがん。日本人に多いがんで、がん種別では膵がんに次いで6番目に死亡者数が多い。患者数は増加しており、年間約2万3000人が胆道がんと診断され、約1万8000人が亡くなっている。早期発見が難しく薬物療法も発展途上であることから、膵がんと共に難治性のがんの1つとされる。

 NPO法人パンキャンジャパンと公益財団法人がん研有明病院が、2014年8月末に東京都内で「難治性がん医療セミナー・胆道がん編 がん研有明病院スペシャル〜進化のビジョン2020〜」を開催し、胆道がんの診断と抗がん剤治療について同院消化器内科肝胆膵担当部長の笹平直樹氏、外科治療について消化器外科肝胆膵担当部長の齋浦明夫氏が講演した。

 Vol.2では、参加者から寄せられたさまざまな質問に両医師が回答するQ&Aセッションの様子を紹介する。



がん研有明病院消化器内科肝胆膵担当部長の笹平直樹氏

Q1:胆のうを摘出後、特に再発の検査をする必要はないと言われました。今後の検査は本当に必要ないのでしょうか?

A(笹平) 術後の再発は大きな問題ですが、手術のときにきちんと取り切れたかどうかに関わります。胆のうの比較的浅いところにとどまっているがんであれば全て取り切れた可能性が高いです。一定期間経過をみた上で、再発がないと判断されたのであれば細かい定期検査は必要ないと思います。個々のケースによりますが、半年おき、あるいは1年おきの定期フォローで十分なのではないでしょうか。主治医の先生ともう1回相談してみてください。

Q2:肝内胆管がんでラジオ波治療を受けています。外科治療を選択したほうがいいのでしょうか?

A(齋浦) 肝内胆管がんは肝臓がんの一種ですが、性質は胆道がんの仲間です。前述のように、肝内胆管がんを含む胆道がんの手術適応は外科医や病院によって異なります。ラジオ波焼灼療法は小型の肝細胞がんに対して有効だということで広く行われていますが、それを肝内胆管がんに応用しているのだと思います。ラジオ波焼灼療法、手術、放射線治療、重粒子線治療は全て局所治療のカテゴリーに入りますが、その中で手術は体への負担が最も大きく、ラジオ波、放射線、重粒子は負担が少ないとされています。一方で一番効果が高い局所治療は手術です。

 肝内胆管がんに関しては、ラジオ波、放射線、重粒子線治療では局所再発率が高いといわれています。そのため、がん研有明病院では、肝内胆管がんに対するラジオ波治療は行っていません。また、手術はがんを切除して取り出すわけですので、その後に行う病理検査で、どの程度がんが進行していたのか、がんをきれいに取り切れたのか、術後の抗がん剤治療が必要かどうかの治療方針まで判断できるメリットがあります。ラジオ波の局所再発後の手術は難しいのですが、一度、専門施設で診察を受けて、現時点での手術が可能か判断されるのがよろしいと思います。治療、診断でお困りの際は、いつでもがん研有明病院へお越しください。


Q3:胆道がんの領域で分子標的薬は登場するのでしょうか?

A(笹平) 分子標的薬はがん治療の中で注目されている薬ですが、胆道がんに関してはなかなか治療効果が高いものが出てきていないのが現状です。その背景には、一口に胆道がんといっても、肝内胆管がん、胆のうがん、胆管がん、乳頭部がんがあり、その発生の仕方や標的ががんの発生した場所によって異なり、つまりひとつひとつ異なる研究をせざるを得ないという事情があります。分子標的薬はがんの増殖に関わる標的を見つけてがんの増殖を抑える薬ですが、胆道がんを細かく分類してしまうと、患者さんの数が少なく研究がなかなか進まないのです。それでもいくつかの大学病院などで。膵がん、大腸がんに効果がある分子標的薬を胆道がんの治療に使ってみる臨床研究が行われています。

 また、肝内胆管がんに対しては、国立がん研究センターで第I相の臨床試験が始まったところです。臨床試験には第I相、第II相、第III相の3段階あり、副作用が許容範囲になる薬の量と安全性を確認するのが第I相試験です。安全性が確認され、第II相試験で期待される効果がありそうなら、第III相試験で標準治療と比較します。第I相試験から現場で使えるようになるまで10年くらいかかる薬もあります。臨床試験には参加条件がありますが、先人のお陰で今の治療が成り立っていることを肝に銘じて、第I相であっても積極的に臨む姿勢が大事だと思います。

がん研有明病院消化器外科肝胆膵外科担当部長の齋浦明夫氏

Q4: 十二指腸乳頭部の腺種内がんと診断されましたが、治癒切除が可能でしょうか?病院や医師によって治療の考え方は変わりますか?日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医のいる修練施設A・Bに行くのがいいのでしょうか?

A(齋浦) 腺種内がんは大腸がんで多く、大腸がんの場合はステージ0になります。再発の恐れのないがんであって、前がん病変という見方もあります。腺腫の中にがんができている状態ですが、それが十二指腸乳頭部にできることがあります。必ず切除できますし、治療すべき段階です。問題はどのように切除するかですが、病院、患者さんの年齢によって治療の方法が異なります。乳頭部だけ取る乳頭部切除では、十二指腸の内側から内視鏡的に取る方法と手術で切除する方法があります。当院では手術で切除します。開腹手術ではミリ単位で細かいところまで切除でき、取った後に膵管と胆管をきれいに縫い合わせることができるからです。内視鏡で取った場合は、手技の後の出血など合併症のリスクが若干心配されます。将来的に手技が安定してくれば、内視鏡的に取る取り方を実施するかもしれません。乳頭部の腺腫内がん自体が少ないので、経験を積み重ねる機会が少ないのが問題です。

 もう一つ考えなければいけないのが、腺腫内にがんがとどまらず、もう少し深く進んでいる危険性です。もしもリンパ節までがんが広がっていた場合には、膵頭十二指腸切除という膵臓も含めて切除する手術を行います。どちらの手術法を選ぶかは患者さんの年齢、実際のがんの深達度によります。

 日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医修練施設は、高難度の手術を一定の症例数以上実施している病院を認定する制度です。症例数によってAとBに分けられていますが、胆道がんの手術も少なくともそういう病院で受けたほうがいいでしょうという一つの基準です。最終的には、自分が手術してもらう主治医との関係になりますので、修練施設AかBの施設であっても、その先生の経験、考え方がどうなのか、じっくりご自身で判断して決めるということになると思います。

Q5:抗がん剤の副作用を和らげる方法はありますか?FOLFIRINOXを勧められていますが副作用が心配です。

A(笹平) 抗がん剤の副作用は患者さんたちが一番心配されるところです。かなり強い副作用を心配されている方が多いのですが、胆道がんの抗がん剤治療は、一般的には、皆さんが心配しているよりは副作用が比較的軽めのことが多いので過度の心配はしないでください。とはいっても、吐き気、下痢、食欲不振といった症状が出る方はいらっしゃいますが、そういった副作用を抑える薬がいろいろ出ています。大事なことは副作用が出たとき我慢しないことです。どういう副作用があるか主治医に話をして、それに応じた薬を出してもらってください。特に抗がん剤による下痢は体調を大きく狂わせることがありますので、我慢しないで下痢止めを処方してもらい症状を抑えるようにしましょう。

 一方、FOLFIRINOXは膵がんの治療法で、従来のゲムシタビンを中心にした薬に比べると効果が高いので注目されています。胆道がんも比較的膵がんと似たような顔つきをしていますので、全身状態がお元気な方には勧められることがあるかもしれませんが、標準治療にはなっていない治療法です。胆道がんに対するFOLFIRINOX療法は保険では認められていないので臨床試験へ参加して受けることになります。臨床試験の参加基準に当てはまっていて身体状態が良好であれば参加できるかどうか主治医に相談するのも手ではないかと思います。ただ、胆道に関しては、黄疸の治療のために胆管に管が入っているケースが多く、抗がん剤で抵抗力が下がったときに管が詰まって胆管炎など細菌感染を起こすと悪い状態になることがあります。発熱したら風邪だと思わないで医療機関を受診することも大事です。

Q6: 術後の化学療法は6カ月とされていますが、再発を防ぐために6カ月以上の投与もありではないでしょうか?免疫療法、温熱療法などを併用する効果はありますか?

A(齋浦) 胆道がんの多くは進行がんですから、手術できれいに取れたとしても、患者さんは再発の不安を抱えながら生活されていることが多いと思います。膵がんでは術後に抗がん剤治療を半年間実施すると有意に再発を減らせることが臨床試験で確認されましたが、胆道がんではまだそういったデータが出ていません。ヨーロッパと日本で臨床試験が進行中で、もう少しで結果が出ると思います。ただし進行がん患者さんはそういった臨床試験の結果は待てませんので、予防的に抗がん剤を投与しています。膵がんの臨床試験結果を基に、投与期間を半年間としていますが、1年がいいのか2年がいいのか議論になるところです。抗がん剤治療には副作用もありますから、勇気を持って半年間で止めるというのも1つの考え方です。実際には、ステージ、再発のリスク、半年間の副作用がどうかで総合的に判断します。半年以上抗がん剤治療を実施するかどうかは主治医の先生とご相談するのがいいと思います。

 再発は心配ですので、多くの患者さんは免疫療法などやれるものは全てやりたいと考えられているのではないでしょうか。科学的、医学的な見地から申し上げると、残念ながら、これをやれば、あるいはこれを我慢すれば胆道がんの再発を減らせるというものはありません。ただし、全てのものが本当に効果はないという判断をつけられているわけでもありませんので、何かやりたいものがあるのであれば、主治医の先生に必ず隠さず申告してもらいたいと思います。場合によっては民間療法の副作用によって病院で受けているがん治療の効果がなくなったり、がん治療を中止せざるを得なくなったりする場合があります。私は患者さんが受けたいと申告してくれたもので害がないと考えられるものであれば、患者さんの自由を尊重し、止めることはしていません。

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