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レポート

2014/9/24

〜NPO法人パンキャンジャパンと公益財団法人がん研有明病院のセミナーで〜

難治性がんの胆道がん、手術と薬物療法の現状を解説 Vol.1

福島安紀=医療ライター

 胆道がんは、肝臓から分泌される胆汁の通り道である胆管と胆のうに発生するがん。日本人に多いがんで、がん種別では膵がんに次いで6番目に死亡者数が多い。患者数は増加しており、年間約2万3000人が胆道がんと診断され、約1万8000人が亡くなっている。早期発見が難しく薬物療法も発展途上であることから、膵がんと共に難治性のがんの1つとされる。

 NPO法人パンキャンジャパンと公益財団法人がん研有明病院が、2014年8月末に東京都内で「難治性がん医療セミナー・胆道がん編 がん研有明病院スペシャル〜進化のビジョン2020〜」を開催し、胆道がんの診断と抗がん剤治療について同院消化器内科肝胆膵担当部長の笹平直樹氏、外科治療について消化器外科肝胆膵担当部長の齋浦明夫氏が講演した。



がん研有明病院消化器内科肝胆膵担当部長の笹平直樹氏

手術可能かの判断は外科医、病院によって大きく異なる
 笹平氏は、胆道がんの検査法・診断法を紹介した上で、「胆道は胃の裏側にあるため、比較的簡便に実施できる超音波検査では見えにくく、胃や大腸のように内視鏡で簡単に検査するがんとも異なり困難である」と早期発見が難しい理由を解説した。また、胆道がんは、血液検査で分かるCEA、CA19といった腫瘍マーカーだけではがんかどうか分からない。そのため、胆道がんは、進行し、黄疸、白色便、コーラのような色の濃い尿といった症状が出てから発見されるケースが多いという。

 胆道がんの治療法は主に手術(外科治療)、薬物療法の2つで、どの治療法を選択するかはがんの広がり、患者本人の全身状態、年齢によって異なる。「今のところ、肝臓がんを完治させられる治療法は手術だけだが、胆道がんの場合、手術できるかどうかの判断は外科医や病院によってかなり異なる」。そう指摘するのは齋浦氏だ。

 胆道がんは、肝臓の出口付近に発生する「肝門部がん」、胆のうにできる「胆のうがん」、肝臓と十二指腸を結ぶ胆管に発生する「中下部胆管がん」、胆管と十二指腸との合流点にできる「乳頭部がん」の4つに分けられ(図1)、手術の方法もがんができた場所と広がり方によって異なる。なお、肝臓の中を通る「肝内胆管がん」は性質が胆管がんと似ているが、肝臓の中なので肝臓がんに分類される。

図1 胆道がんの種類(※クリックすると拡大します)

 早期の胆のうがんでは胆のうを切除するだけの1時間程度の簡単な手術で済むことが多い一方、広範囲にがんが見られる胆道がんでは手術が長時間に渡る場合もある。安全性と根治性を天秤にかけながら、どこまでがんを取り切るか、どういった手法で手術を行うか、外科医とそのチームの力量が問われる分野でもある。

 中でも難易度が高いのは肝門部胆管がんの外科治療だ。肝臓の一部、胆管・胆のうを切除し血管や胆道を再建するため、8〜12時間に及ぶ大手術になる。さらに、がんが肝門部から胆管、胆のうに広がっている場合は、肝切除と膵臓の半分、十二指腸、胃と小腸の一部まで切除し、胆汁と食物の通り道を再建する「肝切除+膵頭十二指腸切除」を行うため、12時間以上かかることもある。膵頭十二指腸切除は、膵がん治療でも使用される手術法だ。

がん研有明病院消化器外科肝胆膵外科担当部長の齋浦明夫氏

 齋浦氏は、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科の國土典宏教授らが日本の848施設を対象に膵頭十二指腸切除の手術症例数と在院死亡率の関係をみた研究結果を提示。「胆道がんの手術は、正確な診断、手術前や術後の管理も大切で、外科医、内科医、放射線診断医、麻酔科医、病棟スタッフがチームとして胆道がん治療に慣れていることが重要。症例数の多いHigh volume centerの方が明らかに治療成績が良いので、胆道がんの手術を毎年20例〜30例以上実施している病院で手術を受けたほうが良いでしょう」と強調した。

 胆道がんの手術、特に肝臓や胆管、すい臓を同時に切除した場合には、肝不全、胆汁や膵液の漏れ、感染症といった合併症が起きるリスクがある。がん研有明病院を含む多くの病院では、肝臓を大きく切除する手術を行う前には肝不全の予防のために事前に門脈塞栓術を行っている。門脈塞栓術は門脈の中に血流をせき止めるように栓をする手技のことで、胆道がんの場合、切除する側の肝臓へ栄養を送っている門脈を塞ぎ、残す部分の血流を増やすことで肝臓を大きくする。また、大腸の細菌叢を正常に保つと術後の合併症が減るため、同院の患者は術前から乳酸菌、ビフィズス菌、食物繊維を摂取し、腸の細菌叢を整えてから手術に臨むという。齋浦氏は「胆道がんでは、黄疸の治療が必要になるなど手術前の準備期間が長いことが多く忍耐や頑張りが必要になるが、切除できれば根治が期待できる。共にタッグを組んで頑張りましょう」と会場の患者・家族に呼びかけた。

 手術ができないのは、肝臓、リンパ節、腹膜播種など胆道以外の臓器へがんが広がっている「遠隔転移」、そして、手術ができないくらい胆道の中でがんが広がっている「局所進行がん」の場合だ。手術ができないケースでは、抗がん剤のゲムシタビンとシスプラチンを併用するGC療法が第一選択になる。GC療法では、吐き気止めを点滴した後、シスプラチン、ゲムシタビン、利尿剤が投与される。点滴時間は3時間弱で、外来で受けられる治療法だ。笹平氏は、「数は少ないものの、GC療法でがんが小さくなり、手術でがんが取り除けるようになるケースもある」と話す。

 胆道がん治療で使用できる薬には、この他ににS-1がある。ゲムシタビンとS-1を併用するGS療法を実施している病院もあるが、現時点では、GS療法に関して、標準治療であるGC療法と同等またはそれ以上の効果があるのかどうかについて、まだ大規模臨床試験では証明されていない。現在日本で、GC療法とGS療法の効果を比較する臨床試験が進行中だ。「胆道がんは欧米では患者数の少ない希少がんで、日本人に多い病気。海外の情報に頼らず、日本でさらに効果の高い治療法を確立し世界へ広めていきたい」と笹平氏は語る。

 同日のセミナーでは、2013年6月に妻(享年67歳)を胆道がんで亡くした太田昌博氏が体験を話す場面もあった。太田氏の妻は12年6月に黄疸が出て緊急入院し、胆のうがんと診断された。胆道がんの進行度は大きくステージI〜IV期の4段階に分けられるが、肝臓と肺に転移があり最も進んだIV期だった。黄疸の治療を受けた後、臨床試験に参加しGC療法にS-1を合わせた3剤併用療法を受けた。2〜3カ月で腫瘍は半分に縮小したが、その後、また腫瘍が大きくなったという。

 「突然嘔吐するなどの副作用はありましたが、抗がん剤の効果があった3カ月間は趣味のスケッチを楽しんだり、2人で一緒に外食をしたりとても充実していた。彼女が一番苦しかったのは、GC療法とTS-1の3剤併用療法が効かなくなったら、もう治療法がないということだった。胆道がんに関しては海外でもほかに有効な薬がなく、選択肢が少ない状態です。日本がパイオニアになって新薬の開発が少しでも早く進むように、皆さんもぜひ声を上げていただきたい」と太田氏は訴えた。

図2 胆道がん治療の流れ(※クリックすると拡大します)
(『胆道癌診療ガイドライン』(胆道癌診療ガイドライン作成出版委員会編〔第1
版〕)を参考に作成)

NPO法人パンキャンジャパン理事長の眞島善幸氏

 パンキャンジャパン理事長で日本胆道がん患者会世話人の眞島善幸氏は、患者数の少ない米国でも胆のうがんで肉親を失った家族が「胆道がん財団」を発足させ、研究予算拡大に向けて活動を始めたことを紹介。米国では、膵がんの患者支援団体パンキャンが予算拡大を訴え、十数年前には14億円だった研究予算が現在では年間100億円を超えるようになった前例がある。「現在登録中の臨床試験の数は予算も患者数も少ない米国で165あるのに対し、日本では74とさらに少ない。臨床試験の数が少なければ新しい薬も生まれにくいわけです。私たちにできるのは新しい薬を開発してもらうためのアクションを起こすこと。新薬承認のための署名活動、メディアに協力するなど、できることから始めましょう。13年前に膵がんの告知を受けて存命しているサバイバーの方も『絶対に希望を捨てないで』と言っています。あきらめないで胆道がんの治療成績が向上するように行動していきたい」。眞島氏はそう強調し講演を結んだ。

 次回は、このセミナーで交わされたQ&Aを紹介します。

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