このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2014/8/26

希少がんホットラインで患者・家族の不安を解消

国立がん研究センターが希少がんセンターを開設

福島安紀=医療ライター

 国立がん研究センターは6月23日、肉腫、脳腫瘍、皮膚がん、網膜芽細胞腫など、患者数の少ないがん種の患者への情報提供や治療、研究開発を行う「希少がんセンター」を新設した。希少がんに焦点を当てたセンターの開設は国内では初めて。電話で患者・家族の相談に乗る「希少がんホットライン」もスタートし、「どこで治療を受けたらいいか分からない」「現在受けている治療は世界標準なのか」といった悩みを解消し、最新の標準治療が受けられる体制整備に乗り出した。


国立がん研究センター理事長の堀田知光氏

 「希少がんについては患者さんの数が少ないために、診断・治療法の情報が少なく、患者さん自身が不利益を被っている状況だ。これまでは患者数の多い5大がん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん)を中心にがん対策が進められてきたが、2012年6月に新しく作られた『がん対策推進基本計画』では、希少がん対策の充実がうたわれている。希少がんについては、5大がんのようにどこに住んでいても最適な治療が受けられるという均てん化ではなく、集約化、ブロック化という流れになっていくだろう。国立がん研究センターとして率先して希少がんの診療体制を整備し、大学や他の病院と連携しながら診療・研究を進めていきたい」。国立がん研究センター理事長の堀田知光氏は、希少がんセンターを開設した経緯をこう話す。

 希少がんとは、特定のがん種を指すのではなく、まれながんの総称。年間の発生率が、米国では「人口10万人当たり15例未満」、ヨーロッパでは「人口10万人当たり6例未満」のがんと定義される。日本では明確な定義がなかったが、今年2月に稀ながんの専門家による希少がん対策ワークショップが開催され、ヨーロッパの基準に準じて、「年間の発生率が人口10万人当たり6例未満のがん」とされた。

国立がん研究センター希少がんセンター長に就任した川井章氏

対象は肉腫、GIST、脳腫瘍、メラノーマ、小児がんなど
 2008〜2011年の院内がん登録より推定した全国推定罹患率によると、人口10万人当たり6例未満の希少がんは、軟部肉腫(3.6人/対10万人)、グリオーマ(2.5人/同)、皮膚メラノーマ(悪性黒色腫、1.1人/同)、骨の肉腫(0.6人/同)、網膜芽細胞腫(胎芽性腫瘍)(0.3人/同)だ。胃がんの罹患率が67.1人/同、肺がんが57.5人/同であることを考えると、かなり罹患率の低い、まれながんであることが分かる。

 同センター希少がんセンター長に就任した川井章氏は、希少がんに共通する課題について「希少がんの中には、ガイドランが存在しないため、どの治療法がより効果が高いのか、エビデンス(科学的証拠)に基づいた治療ができないものもある。また、希少がんに対する研究費は5大がんと比べてはるかに少ないうえ、市場規模が小さいために民間の製薬企業による薬の開発が進みにくく、治療法が確立されていないものもある。そのため、医療者側もどのように治療すべきか、悩むことが多いのが実態だ。一方で、希少がんの患者さんは、珍しいがんと診断された後、どこで治療を受けたらいいのか判断できずに困っている」と指摘する。

 希少がんセンターでの診断・治療の対象になるのは、肉腫(サルコーマ)、GIST(消化管間質腫瘍)、脳腫瘍、メラノーマ、眼腫瘍、小児がん、胚細胞性腫瘍(精巣、卵巣、性腺外)、その他の希少がん(図1)。国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)と同東病院(千葉県柏市)では、これまでもそれぞれの診療科でこれら希少がんの治療にあたってきたが、今後は希少がんセンターとして窓口を一本化し、共通の課題の解決にあたる方針だ。

図1 希少がんの例(写真提供:国立がん研究センター希少がんセンター長・川井章氏)

 具体的には、希少ながん種別に「サルコーマカンファレンス」などを行い、専門の異なる医師や職種が、診療科を越えて最適な治療法、療養法を検討する場を設置。また、希少がんセンターのホームページを立ち上げ情報を一元化した(図2)。

希少がんホットラインで患者・家族をサポート
 センターの活動の目玉は、希少がん患者一人ひとりが納得して最適な治療が受けられるようにサポートする「希少がんホットライン」だ。平日の9時〜16時に、希少がんの患者・家族を対象に専任の看護師が相談にのっている。相談は無料(通話料は有料)で、希少がんの患者本人と家族、そして希少がんの患者の診療・支援をする医療者が対象だ。

 今年1月から試験的に同ホットラインを開設したところ、5月末までの5カ月間で延べ163件の相談が寄せられた。そのうち67件は本人、76件が家族からで、医師からの相談は20件あった。疾患別には肉腫が最も多く、その次がメラノーマだったという。相談内容は、「医師に病気のことを尋ねても、まれな病気だから分からないと言われた」「インターネットにはいろいろなことが載っていて、何を信用していいか分からない」「薬がもうないと言われたが本当でしょうか」「症例数の多い病院でみてもらいたい」など。正確な情報を求め、現在の担当医の経験不足に不安を覚えての相談が多く、国立がん研究センター中央病院か同東病院の受診を希望したケースも少なくなかった。ホットラインでは、必要に応じて担当科の医師に連絡を取り、同センターをスムーズに受診できるようにするサポートも行っている。

  • 1
  • 2
この記事を友達に伝える印刷用ページ