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2014/7/29

選択肢が増えた膵がんの抗がん剤治療、手術はより安全に Vol.2

森下紀代美=医学ライター

 早期発見が難しい、進行が早い、5年生存率ががんの中で最も低い。これらの理由から、難治性がんの代表とされる膵がん。近年、膵がんに対する抗がん剤治療が大きく変化し、4剤を併用するFOLFIRINOXが日本でも2013年12月に承認された。高難度の手術も安全かつ確実に行われるようになってきている。
 NPO法人パンキャンジャパン、公益財団法人がん研有明病院が2014年5月に東京都内で開催した「難治性がん医療セミナー・膵臓がん編 がん研有明病院スペシャル〜進化のビジョン2020〜」では、膵がんの最新の抗がん剤治療について同院消化器内科担当副部長の石井浩氏が、外科療法について消化器外科肝胆膵担当部長の齋浦明夫氏が講演し、講演後には参加者から寄せられたさまざまな質問に答えた。
 このVol.2では、このセミナーの参加者から寄せられた質問に対し、2人のエキスパートが回答したQ&Aセッションについて紹介する。


がん研有明病院消化器外科肝胆膵担当部長の齋浦明夫氏

がん研有明病院消化器内科担当副部長の石井浩氏















Q1:母親が膵がんと診断され、転移もあると言われました。どのような治療がありますか? FOLFIRINOX、mFOLFIRINOXはがん研有明病院ではどのように行われていますか?

A(石井):転移とは、がん細胞が原発部位から離れた場所にたどり着き、そこで生き残って増殖していき、CTで見える大きさにまで育った状態です。病期のIVb期に相当します。転移がある場合、手術や放射線治療といった局所治療は延命を目的とする治療にはなりません。膵臓だけでなく全身の治療が必要です。全身治療の中で最も研究され、治療効果と副作用が明らかになっているのが抗がん剤治療で、私たちが最も強くお勧めできる治療です。なお、民間療法と呼ばれるものの多くはいわば全身治療ではありますが、治療効果や副作用はよくわかっていません。臨床試験できちんと効果を評価し、有効と判断された治療をお勧めするべきだと考えています。

 FOLFIRINOXは当院でも導入して日が浅く、まだマネージメントに十分慣れていないことを自覚していますから、最初からmFOLFIRINOXを行っています。約20人の患者さんをmFOLFIRINOXで治療させていただいています。現時点では、私たち自身がこの治療法に慣れていくことが必要だと思っています。

Q2:FOLFIRINOXは副作用が強いということですが、患者が体力を維持しながら抗がん剤治療を受けるために、食事などで注意することはありますか?

A(石井):抗がん剤治療中に、野菜ジュース、キノコ類、漢方薬などを併用すると効果が得られるのかどうかといったことは全くわかっていません。健康食品や代替医療を用いた患者の寿命が延びることはあり得ますが、この寿命の延長がこうした健康食品や代替医療の効果のためだったのか、それともこうしたものとは関係なく、そもそも悪化するスピードが遅いがんだったのか、ということは判断できないのです。私は、いろいろなものを美味しく食べて、ぐっすり眠っていただくと良いと思っています。

Q3:ゲムシタビンやS-1で治療を受けた後、FOLFIRINOXを受けることはできますか?

A(石井):先に述べたように、FOLFIRINOXという治療は効果が高い反面、副作用も強いため、患者さんを選ぶ治療といえます。残念ながら、この治療をお勧めできない方がいらっしゃるということです。患者さんを選ぶ基準は、65歳以下、肝機能・腎機能が正常、できれば閉塞性黄疸に対するステントが入っていない膵体尾部がん、などとされています。ゲムシタビンまたはS-1で治療を受けられて、残念ながら効果がないと分かった時点でこうした条件をクリアしていれば、FOLFIRINOXを提案できる可能性はあります。

Q4:化学療法によって画像上がん細胞が消えた、または大きくならずに同じ状態が数年間続いている場合、抗がん剤は中止できますか?

A(石井):多くの固形がんでは、抗がん剤治療により10人中2、3人で縮小がみられますが、画像で見えなくなるほどの効き方は残念ながら滅多に経験しません。肝転移などは画像で見えなくなることがありますが、抗がん剤で治るがんは残念ながらごく一部です。一般的には、効果が持続していて、副作用が許容範囲であれば、治療は継続します。ただし、良く効いている状況でも、副作用が厳しい場合に抗がん剤を休む期間を作ることはあると思います。

Q5:抗がん剤治療をしていると免疫力が落ちると聞きます。抗がん剤をどのくらい休めば免疫力はアップしますか?

A(石井):免疫力とは何か、難しい質問です。抗がん剤により、白血球数は確かに一時的に減り、好中球やリンパ球の数も減る可能性があります。しかし、1週間から10日間、一定期間が経つと、これらの数は戻ってきます。白血球は外敵から体を守る働きをしますから、白血球数が減った時点で細菌が体内に入り、肺炎になるようなケースもあり、これが「免疫力が落ちる」というイメージにつながっているのかもしれません。また抗がん剤治療を半年、1年、3年と続けていると、もともとの白血球数が減り、回復が遅くなることがあるかもしれません。ただし、これらはあくまでも白血球数が減るということであり、免疫力とイコールであるとは言えないと思います。副作用などで休薬が必要と判断すればもちろん休薬期間を設けますが、「免疫力」という漠とした概念のために不必要に治療間隔を空けてしまうことで、がん細胞に抗がん剤に対する耐性を獲得する暇を与えてしまうことは避けなければならないと考えています。

Q6:免疫療法の実態、抗がん剤治療に対する悪影響についてはどうなっていますか?

A(石井):さまざまな治療法が考案されており、併用する方、併用したいと考える方も中にはいらっしゃると思います。

 しかし、副作用がある抗がん剤治療を私が勧める理由は、過去に膵がん患者さんが、いわば身を挺して臨床試験に参加し、延命効果があることを示してくれたためです。私たちはそれをエビデンスと呼んでいます。30年前、膵がんは5-FUで治療していましたが、治らないと言われていました。そこにゲムシタビンという新しい薬が登場し、5-FUとゲムシタビンのどちらで治療するか、くじ引きで割り当てられる臨床試験が行われ、ボランティアの患者さんが参加してくれました。延命効果の証明は、こうした患者さんたちの上に成り立っています。同じ病名、病状の人を2群に分けて確かめる以外、私たちは科学的に検証する方法を持っていません。残念ながら、こうしたきちんとした手続きが省略されて、それでも「効果がある」と謳っている治療法があります。何を根拠に「効果がある」と謳っているのかをよく見てみる必要があります。

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