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レポート

2014/7/22

選択肢が増えた膵がんの抗がん剤治療、手術はより安全に Vol.1

森下紀代美=医学ライター

膵がんでは診断からの速やかな治療開始がカギ

がん研有明病院消化器外科肝胆膵担当部長の齋浦明夫氏

 進行が早い膵がんでは、診断後に速やかに治療を開始することが求められる。齋浦氏は、同院では専門医の連携のもとにチーム医療が進められており、診断から手術までの期間は約2週間で、高難度手術とされる膵頭十二指腸切除も安全に行われていると話した。

 膵がんに対する唯一の根治療法は手術であり、切除可能な場合は手術が行われる。手術のみを行った場合と比べて、手術に加えて術後に補助化学療法を併せて行った場合に治療成績が良いことがわかっており、日本ではS-1が推奨されている。

 膵がんの手術には、膵臓の頭の部分を切除する膵頭十二指腸切除、尾の部分を切除する膵体尾部切除がある。膵頭十二指腸切除では、胆管や十二指腸なども切除するため再建が必要で、高難度手術に位置付けられる。手術時間も8-10時間と長い。膵頭十二指腸切除は、当初は手術死亡率が高かったが、現在では安全な手術となっている。

 サバイバーになるために患者が取り組めることは、まず膵がんの危険因子を知ることである。膵がんでは高リスクの因子はないが、膵がんの家族歴、糖尿病や慢性膵炎の合併、喫煙は危険因子となる。家族に膵がんの人がいる場合はこまめな健診が望ましい。

 症状が発現する前にできることとして、腫瘍マーカーと超音波検査がある。齋浦氏によると「超音波検査で膵管の拡張の有無を確認することが、初期の膵がんを発見する契機になる」。膵がんの症状には、糖尿病の悪化、黄疸、体重減少、背部痛などがあるものの、黄疸を除くと特徴的な症状は少ない。

 膵がんが発見された場合は、high volume centerでの受療が勧められると齋浦氏は言う。high volume centerとは、手術を多く行っている病院のこと。年間手術件数と手術死亡率は関連すると考えられており、膵頭十二指腸切除の手術死亡率は、年間手術件数が10件以下の施設では10%以上と高く、20件以上の施設では10%以下となり、さらに件数が多い施設では数%程度に下がる。がん研有明病院の手術死亡率は約1%だ。

 膵がんは進行が速く、週単位で状態が変化する。そのため、大腸癌などでは内視鏡検査を行い、1-2週間かかる細胞診検査の結果を待ち、100%の確定診断がついてから手術となるのに対し、膵がんでは症状があり、CTまたは超音波検査で98%程度の診断がつけば、多くは手術となる。実際に切除したら膵がんではなかったというケースもあり、同院では約2%が該当するという。がんではない可能性、手術に伴うリスクと、がんだった場合のリスク、手術のチャンスを逃すリスクとのバランスを考えることになるが、齋浦氏は「膵がんでは早く診断し、治療方針を決め、切除適応を見極めることが大切」と強調した。

 同院では、切除可能ながんであれば早い時期に手術を行うこととしている。初診から手術まではおよそ16.5日(範囲:6-111日)だ。切除不能ながんの場合は、直ちに内科的治療を提案・紹介する。切除可能か不能か、境界域切除可能がん(ボーダーライン)の場合は、内科と連携して化学療法を先行する術前補助化学療法を行う。効果が得られれば手術となり、手術の困難度が下がり、手術成績は上がることになる。

 膵臓は多くの臓器や血管に囲まれているため、手術は細かく、複雑になる。一歩間違えれば大出血を起こす可能性があり、蛋白を溶かす強い酵素を含む膵液が漏れれば、術後に血管を溶かして大出血に陥り、手術死亡に至る可能性もある。膵がんの手術では、確実にがんを切除するとともに、術後補助化学療法につなげることができるように、より安全な手術を目指す必要がある。

 がん研有明病院では、2013年には肝切除+膵頭十二指腸切除を含む膵切除が136件に行われた。チーム全体で技術の定型化に取り組み、さまざまな技術を駆使し、より正確で安全な手術を目指している。齋浦氏によると、腫瘍の硬さを画像化する試みや血管をナビゲーションする技術、膵液の漏れを可視化する試みも研究されているという。


 次回は、このセミナーで交わされたQ&Aについて紹介します。

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