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レポート

2014/7/22

選択肢が増えた膵がんの抗がん剤治療、手術はより安全に Vol.1

森下紀代美=医学ライター

 早期発見が難しい、進行が早い、5年生存率ががんの中で最も低い。これらの理由から、難治性がんの代表とされる膵がん。近年、膵がんに対する抗がん剤治療が大きく変化し、4剤を併用するFOLFIRINOXが日本でも2013年12月に承認された。高難度の手術も安全かつ確実に行われるようになってきている。
 NPO法人パンキャンジャパン、公益財団法人がん研有明病院が2014年5月に東京都内で開催した「難治性がん医療セミナー・膵臓がん編 がん研有明病院スペシャル〜進化のビジョン2020〜」では、膵がんの最新の抗がん剤治療について同院消化器内科担当副部長の石井浩氏が、外科療法について消化器外科肝胆膵担当部長の齋浦明夫氏が講演し、講演後には参加者から寄せられたさまざまな質問に答えた。


FOLFIRINOXは高い効果の反面、強い副作用も

がん研有明病院消化器内科担当副部長の石井浩氏

 石井氏は膵がんに対する近年の抗がん剤治療の変化について解説し、FOLFIRINOXは有効性が高い反面、副作用が強く、日本人では治療の適応は慎重に判断すべきと注意を促した。

 膵がんでは切除可能な段階で発見される患者は20%に満たず、5年生存率もがんの中で最も低い。膵がんによる死亡者数は国内外で年々増加しており、2030年にはがんによる死亡原因の第2位になるとする海外の予測もある。

 動脈浸潤または遠隔転移がある膵がんは「切除不能・進行膵がん」と呼ばれ、抗がん剤治療の対象となる。膵がんに対する抗がん剤は、キードラッグ(最も重要な薬)の一つであるフルオロウラシル(5-FU)が1957年に発見されて以降、進歩していなかった。5-FUをしのぐ薬としてゲムシタビンが登場したのは40年後の1997年で、その後、日本で開発されたS-1、ゲムシタビン+エルロチニブ併用療法が使用可能となった。

 最近、新たな治療として、標準治療の1つに加わったのが、多剤併用療法のFOLFIRINOXだ。この治療法では、1日目にオキサリプラチン85mg/m2を120分かけて静脈内投与した後、ホリナートカルシウム400mg/m2を120分かけて、イリノテカン180mg/m2を90分かけてそれぞれ静脈内投与し、その後5-FU 400mg/m2を急速静注する。2日目と3日目は5-FU 2400mg/m2を持続的に静脈内投与する。これを2週毎に繰り返す。

 フランスのグループが行った臨床試験(ACCORD11試験)において、FOLFIRINOXはゲムシタビン単独療法と比べて死亡リスクを43%減らし、生存期間を有意に延長した。対象は、遠隔転移を有する膵がん患者で、化学療法を受けたことがなく、比較的全身状態が良好な342人だった。

 この結果を受け、日本でもがん専門施設の患者36人を対象としてFOLFIRINOXの安全性が確認され、承認に至った。現在日本では、切除不能・進行膵がんに対し、ゲムシタビン単独療法、S-1単独療法、ゲムシタビン+エルロチニブ併用療法、FOLFIRINOXの4つの治療レジメンが選択肢となった。

 さらに今年度中には、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル併用療法が日本でも承認されるとみられている。ゲムシタビン単独療法と比べて死亡リスクを28%減らすことが示され、欧米ではすでに承認されている。日本人に対する安全性も確認された。nab-パクリタキセルは、ヒト血清アルブミンにパクリタキセルを結合させたナノ粒子製剤で、日本でも乳がんなどに承認されている。

 FOLFIRINOXは有効性が高い反面、副作用が強く、特に日本人では骨髄抑制が強く発現することがわかっている。フランス人を対象としたACCORD11試験では、重度の好中球数減少は45.7%、致命的な感染症につながる可能性がある発熱性好中球減少は5.4%、血小板減少は9.1%と、骨髄抑制が高頻度に認められていた。日本人ではこれらの副作用の発生頻度は、それぞれ77.8%、22.2%、11.1%と海外より高い頻度だった。重度の下痢や神経障害の発生頻度はフランス人の方が多いと考えられる結果だったが、日本人でもそれぞれ8.3%と5.6%に発現した。

 副作用の強さから、FOLFIRINOXの実施にあたっては「がん化学療法に十分な経験のある医師のもとで、適切と判断される症例についてのみ施行してください」という注意が呼びかけられている。石井氏によると、FOLFIRINOXを考慮できるのは、新たに切除不能・進行膵がんと診断された患者の10人中2人から5人であるという。この治療法の対象となるのは「年齢が若く、体力があり、血液所見に大きな異常がない患者」となる。

 FOLFIRINOXのレジメンを用いると、日本人では副作用のため2、3回目の投与が不可能となる場合が多く、5人に1人は入院を必要とする。副作用を軽減することができれば、予定通り2週毎に外来で投与でき、より広い患者層に行える可能性がある。

 そのため石井氏らは、オリジナルのレジメンを改良したmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)について、有効性を保ちつつ、より安全な治療法であることを確認するため、全国のがん診療拠点病院39施設と共同で臨床試験を進めている。mFOLFIRINOXでは、1日目のイリノテカンの用量を180mg/m2から150mg/m2に減量し、5-FUの急速静注を割愛する。

 がん研有明病院ではFOLFIRINOXを行うにあたり、初回は約1週間の入院とし、中心静脈ポートの埋め込みとFOLFIRINOXの初回投与を行っている。その後は2週ごとに外来で1日目の治療を行い、3日目の投与終了後に自宅で針を抜いてもらう。

 治療選択肢は増えたが、個々の患者に治療法を選択するための指標はわかっていない。治療効果と副作用は比例する部分があるため、副作用、患者の体力、希望などに応じて選ぶことになる。そのため、石井氏は今後の課題として「個別化医療の進歩」をあげた。

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