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レポート

2014/4/1

麻痺を回避するために普段から身体のバランスや足のふらつきに注意しましょう

加藤勇治

 脊椎の骨転移が脊髄を圧迫すると、痛みが発生するとともに、より重篤になると麻痺を起こしてしまう。麻痺によるQOLの大幅な低下を防止するためには「立てなくなったら48時間以内に受診」だったが、大阪府立成人病センター整形外科副部長兼リハビリテーション科部長の橋本伸之氏は、もっと早くに兆候を見つけ、治療を開始する必要性を訴えている。どんな兆候が現れたら気をつけるべきか、橋本氏に聞いた。


大阪府立成人病センター整形外科副部長兼リハビリテーション科部長の橋本伸之氏

──「立てなくなったら48時間以内に受診」を見直す必要があると訴えておられます。

橋本 はい。がんナビの連載でも紹介しましたが、「立てなくなってから、あるいは歩くことができなくなってから48時間以内に受診する」ことが重要である、ということが世界のスタンダードです。「立てなくなってから」「歩くことができなくなってから」というのは、脊髄麻痺が起こり始めてから、という意味です。このスタンダードである「48時間以内」を見直す必要があると思っているのですが、この見直しをお話しする前に、これまでの知見を紹介したいと思います。

 がんの骨転移による脊髄圧迫については、2005年に、手術を行った後に放射線治療を行う群と、放射線治療のみを行う群にランダムに割り付けて前向きに比較検討した多施設共同臨床試験の結果が報告されています。評価する項目を事前に決めて(前向き)、多施設から患者さんを登録し、ランダム化を行って追跡した試験はほとんど報告されておらず、いくつかの批判はありますが、今でもよく引用されているのです。

 この試験は、がんの脊椎骨転移がある患者さんで、痛みやしびれなどの神経学的兆候や症状が認められる方を対象としています。もし麻痺が認められていても48時間以上経過していない方が対象となりました。手術+放射線治療群には50人、放射線治療のみ群には51人が登録されました。

 治療後に歩くことができる患者さんの割合を評価していますが、治療後に「歩くことができる」とは、杖や歩行器を使ってもいいので、介助者なしで少なくとも連続で4歩以上歩くことができることと定義しています。

 その結果、治療後に歩行できる患者さんの割合は、手術+放射線治療群が84%、放射線治療単独群は57%で、脊椎への骨転移がある場合は手術が有効であることが示されました。

 合計101人の患者さんの中には、既に麻痺が認められ、歩くことができない患者さんも32人(それぞれ16人ずつ)含まれていました。麻痺が認められてから48時間以内に治療を開始しているのですが、治療後に歩行できた患者さんの割合は、手術+放射線治療群62%、放射線治療単独群19%という結果で、こちらもやはり手術は歩行回復に有効であることが示されたのです。

 しかし、注目していただきたいのは、麻痺が認められ、歩行ができない患者さんの歩行回復率です。手術と放射線治療を組み合わせて48時間以内にベストな治療を行っても、約4割の患者さんは残念ながら歩けなくなってしまっているのです。

 我々の施設で入院治療を要した脊椎への骨転移患者さんを検討したところ、入院時に一人で歩くことができた患者さんのうち退院時に一人で歩くことができた患者さんは多かったのですが、入院時に支えてもらって歩くことができる患者さんでは半数以下しかおられず、入院時に歩くことができなかった患者さんのうち退院時に一人で歩くことができた患者さんはとても少なかったのです。

 我々の施設では、歩くことができなくなってから48時間以上経過してしまった、状況の厳しい患者さんであっても、できるだけ回復できないかと懸命に治療を行うケースも多いので、もともと歩行回復率の成績は高くはならないと思っていましたが、それでもやはり低い成績というのは非常に残念だと思っています。

──では、どのように対処すべきでしょうか?

橋本 介助者なしで歩けるようになるまで回復する可能性を高めていくには、もっと早く受診していただく必要があると思っています。

 しかし、ここで重要になってくるのが、何が起こったら、どんな症状が認められたら、受診するのかという点です。

 なにより注意すべき症状は痛みです。特に、骨転移があると主治医に言われている方、再発や転移の治療を行っている方、腫瘍マーカーが上昇傾向にあると指摘されている方などを中心に、今までにないような痛み、とくにきっかけなく生じてきた痛み、徐々に悪化する痛み──などを感じるようになったら要注意です(図1参照)。

 「まだ我慢できる痛みだ」とか「違和感みたいだったのがだんだん痛くなってきたけどまだ大丈夫」などとご自身で判断してはいけません。近日中に受診する、ということを覚えておいて下さい。

 骨転移による突然の骨折や麻痺にならないためにも、痛みは最も気がつきやすい重要な症状です。

図1 突然の骨折や下半身不随から身を守るために(画像をクリックすると拡大します)
(大阪府立成人病センター 橋本伸之氏提供)

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