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レポート

2014/3/11

骨転移に対する放射線治療は進歩してきています

加藤勇治

──骨転移に対する放射線治療は、何度も行うことが出来るのですか?

小泉 先に述べたように、骨転移に対する放射線治療は、麻痺のリスクが迫っているときや強い痛みがあるときなどに行います。

 「何度も行うことが出来るのですか?」という質問の背景には、麻痺のリスクが迫るぎりぎりまで行わないのはなぜか、もっと早くに照射して骨転移巣をコントロールし、その後、増殖したり痛みがでてきたりしたら、また照射すればいいじゃないか、といった疑問、あるいは要望があるからだと思います。

 それにはまず、放射線の照射の仕方と、人間には合併症をできるだけ発生させない放射線量の上限、つまり耐容線量があることを知っておいて欲しいと思います。

 まず、一般的な放射線治療ですが、一定の線量の放射線を1回で照射する場合と、ある線量を複数回に分けて数日から数週間かけて照射する、いわゆる分割照射の場合の大きく2通りあります(図2参照)。

 対象となるがんの種類や部位によって適している照射法は異なるのですが、1回で照射する場合は、通院などの負担が少ないというメリットがありますが、1回に照射できる線量には限りがあるので、後で述べますように複数回照射した場合の合計線量よりは少なくなり、治療効果の持続時間も短くなる可能性があります。ただし、がんが非常に進行しており、生命予後も厳しいけれど、この痛みを取る、といったような場合、照射に何日もかけていられないことがありますから、こうした場合はできるだけ短期間で照射することになります。

 一方、例えば30Gy(グレイ:放射線量の単位)という線量を10回に分けて、2週間かけて照射するという分割照射法もあります。この場合、1回の照射量が少ないので副作用は出にくいのが特徴です。また、合計した線量は多めになるので、治療効果の持続時間も長くなります。しかし、治療期間は長くなってしまいますし、例えば毎日通院する必要があるなど、患者さんの負担は大きくなります。

図2 放射線の照射法とそれぞれの特徴(Gy:グレイ、放射線量の単位、fr:放射線の照射回数)(小泉氏による)

小泉 さらに、体内の各臓器には、耐容線量というできるだけ合併症を起こさないと考えられる照射量の目安(上限値)があります。日本放射線腫瘍学会がまとめた「放射線治療計画ガイドライン」に掲載されているものです。例えば、5年間で5%に副作用を生ずる線量として、皮膚であれば100cm2あたり50Gy、脳では45Gy、脊髄では5〜10cmでは50Gy、目の水晶体は10Gy、肺では肺の3分の1に照射する場合は45Gy、3分の2に照射する場合は30Gyなどといったものです。(注:この耐容線量は1回照射線量が2Gy前後で行った場合の合計線量となっています)

 脊椎に発生した骨転移に対しては、照射する必要がある範囲が10cmですと、50Gy以内であれば脊髄に副作用が発生する可能性はかなり低いと考えられます。これ以上になると脊髄炎という副作用が出やすくなります。脊髄炎は脊髄に強い炎症が起こるもので、症状としてはしびれなどがあり、麻痺にもなってしまう可能性があり、起こしてはならない合併症です。

 また、脊椎の周囲には小腸や大腸などがあります。これらの臓器への照射量が多くなると腸が閉塞してしまったり、穴が開いてしまったり(穿孔)、潰瘍が起こってしまったりします。

 このように照射量が多くなると重篤な副作用が発生する可能性が高まってしまうので、何度も脊椎の骨転移に対して放射線を照射するわけにはいきません。こうしたことから、脊椎の骨転移に対しては、いつが照射するタイミングなのか、まだ骨転移巣が小さいからもう少し照射を待つという判断もあり得ますし、非常に慎重に判断していく必要があるのです。

──何度も照射できるものではないから、慎重に判断することが必要なのですね。しかし、それは端から見ると、「なかなか治療してくれない」と感じることになると。

小泉 やはり医療を提供する側としては、治療によって脊髄炎を起こしてしまう、ということは絶対に避けなければなりません。

 ただし、先の耐容線量でいうと、脊髄は10cmまでは50Gyです。骨転移に対する照射は3Gyを10回に分割して行うことが多いのですが、そうすると1回2Gy換算で36Gyです(1回線量が大きいと、合計の線量が同じでも生物学的効果が高いことが知られています。1回の照射線量が2Gyではない場合、1回2Gyのときの合計の線量に換算します)。まだ1回2Gy換算では14Gyの余裕があると言えます。再び照射する余地が若干だけあるのです。

 さらに、周囲の臓器への意図しない照射による副作用ですが、これも最近は放射線照射の精度が高い装置が登場したことで避けられるようになり、がんの部位だけに照射することが可能になってきています。照射精度が高くなれば、骨転移巣への照射を行う際、脊髄や腸などの臓器に照射されてしまっていた分をできるだけ減らせられるようになります。

 現時点ではまだ保険収載されていない治療だったり、全国どこででも治療できるものではなかったりしますが、いずれこうした問題は解決していくでしょうし、今後は“積極的な”放射線治療を行うのが普通になってくるのではないかと考えています。

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