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レポート

2014/1/21

切らずに治す頭頸部がん

副作用に対するセルフケアで予定通りに治療を終了する確率とQOLを向上させる

満武里奈=日経メディカル

副作用は治療中、直後の口内炎や味覚障害、しばらくたってからの口の中の乾燥感や飲み込みづらさなど

 このように生存率や機能温存率が向上してきた一方で、抗がん剤や放射線治療に伴う副作用も少なくありません。しかし、可能性のある副作用を十分に知り、予防対策を講じると、副作用の程度を軽くすることができるので、ぜひ知っておいてほしいと思います。

 まず、抗がん剤と放射線の同時併用療法の副作用として最も多いのが口内炎などの粘膜炎(図1参照)で、半数近い人で見られます。放射線治療中に徐々に悪化するのが特徴です。口内炎が悪化し、強い痛みで水も飲めない状態に陥る患者さんも少なくありません。

 治療中に生じる副作用としてはこのほかに、味覚障害や皮膚炎、歯肉炎、虫歯の悪化などで、重症化すると下顎骨炎や肺炎を生じてQOL(生活の質)を大きく低下させます。また、抗がん剤投与による副作用としては、骨髄で血液を作る機能が低下することによる白血球、赤血球、血小板の減少のほか、肝臓、腎臓、心臓の機能低下、脱毛や皮膚の色素沈着、味覚の低下、難聴、手足のしびれ、意識障害などがあります。

 治療後しばらくしてから出現する後遺症には、唾液が出ないことによる口腔内の乾燥感、のどの筋肉が放射線治療で硬くなることによる飲み込みづらさ、むせやすさなどです。これらが悪化すると誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。また、声が出しづらくなり、かすれ声になるほか、放射線治療で正常組織がダメージを受けることによって傷の治りが悪くなります。また、抜歯した後に骨が露出した部分から雑菌が入ることによる下顎骨の壊死、のどのむくみよる息苦しさ―なども出ることもあります。

痛みを感じたらすぐ医師に相談を

 こうした副作用に対して、患者さん自身でできること、つまりセルフケアがあります。ただ我慢するだけでなく、自ら積極的に対処してほしいと思います。

 まず、口腔内に対するセルフケアとして、治療前に歯科・口腔外科を受診し、虫歯の治療や必要な場合は抜歯を完了させておくことが大切です。虫歯があるということは口腔内に雑菌がたくさんいるということです。治療をしておくことで口腔内が清潔になり、下顎骨炎や肺炎のリスクを回避することができます。

 入院中には、どの施設でも、担当の医師や看護師から口腔内を清潔に保つための歯磨き方法、食事後に行う消炎剤や局所麻酔を使用したうがい法の指導を受けるのが一般的です。受診する施設で歯磨き法やうがい法の指導を受けたら、継続して実践するようにして下さい。

 また、放射線治療によって開口障害が発生する恐れがあります。顎関節近くに放射線があたることで筋肉や関節がかたくなってしまい、口が開けにくくなるものです。治療開始前から意識的に口を大きく開けたりするなど、口を開ける運動を心がけるのが有効です。

 治療中に口内炎などが悪化し、痛みを感じたら、我慢せずにすぐに主治医に相談しましょう。放射線治療によって起こる口内炎などの粘膜炎は徐々に悪化する傾向があります。痛みは治療意欲を損なう恐れもあるため、我慢せず、早期からモルヒネを使用するなどして痛みを取り除くことがとても大切です。また、唾液が出にくくなることで口の中が乾燥したり清潔を保てなかったりすると口内炎が発生しやすいので、口の中を清潔に保つとともに、後述するように水分補給をこまめに行うとよいでしょう。

 治療後に生じた口腔乾燥に対しては、ペットボトルなどで水を常に携帯し、口腔内の乾燥を感じたら飲む、もしくはうがいをするようにすることが効果的です。また、マスクをし、部屋を加湿するとよいでしょう。口腔内は乾燥すると常在菌が繁殖して虫歯になりやすいほか、虫歯が悪化すると肺炎を招くため、口腔内が乾燥することをできるだけ少なくすることがポイントです。

 抗がん剤と放射線の同時併用療法を行っている期間において、粘膜炎が悪化し、痛みで口から普通の食事がとれなくなることがあります。また、舌がん、咽頭がん、喉頭がんなど癌の発生部位によっては、治療期間中は口から栄養を十分にとれなくなることがあります。これらの場合、鼻から胃に管を通す、もしくは胃に管(胃瘻)を入れて栄養を補給することで、治療が継続できるようになります。この際に注意してほしいのは、管から栄養剤を入れるようになっても口から水を飲む動作を常に心がけることです。管から栄養や水分をとることに頼り切ってしまい、水などを口から一切とらない期間が長期化すると、治療後しばらくたっての嚥下障害を引き起こす可能性が高くなるためです。治療が終了したら管から栄養をとることに頼らず、口から食事や水分を飲むように努力して管をできるだけ早く抜くように心がけることが大切です。

 腫瘍により息の通り道が狭くなって気管切開をした患者さんでは、治療前と変わらずに会話をするため、スピーチ・カニューレという装置を装着します。このスピーチ・カニューレは定期的な交換が必要となります。患者さんもしくは家族でスピーチ・カニューレの交換ができれば、通院の頻度を減らすこともできます。スピーチ・カニューレを交換するための通院が負担となっている場合は、主治医に相談するとよいでしょう。

図1 抗がん剤と放射線の同時併用の副作用とその対処法(黒字は副作用、赤字はその対処法を示します)
(図をクリックすると拡大します)

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