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2013/12/10

注目集める新しい“免疫療法”

加藤勇治

 近年、がん細胞が自己の免疫機構から逃れるためのメカニズムを標的とした、新しい“免疫療法”に注目が集まっている。
 これまで免疫療法は主に、自らの免疫機構を活性化するため、体内のリンパ球を取り出し、活性化して体内に戻す方法や、がん抗原をペプチドなどの形で投与し、がん細胞を認識させて攻撃する機能を活性化するものだ。
 現在注目されているのは、がん細胞が自己の免疫機構からの逃れるために利用しているたんぱく質を抑えることで免疫機構から逃れられなくする免疫療法だ。
 この新しい免疫療法が有効と期待されるがんの1つが腎がんとなっている。そこで、腎がんにおける免疫療法に詳しい慶應義塾大学泌尿器科学教室教授の大家基嗣氏に、腎がんにおける免疫療法の歴史と新しい治療の概要について語っていただいた。


 最近、抗体医薬を用いた新しい“免疫療法”が注目されています。T細胞の活性化を抑制する作用を持つCTLA-4やPD-1/PD-L1という経路を抑制するもので、「チェックポイント」阻害薬などとも呼ばれています。さまざまながんで期待されていますが、特に腎細胞がんと悪性黒色腫には高い効果が得られるだろうと注目されています。

 こうした新しい抗体を説明する前に、なぜ期待されているのか、まずその背景を紹介したいと思います。

 従来から、腎細胞がんの治療においては、転移が認められていても、原発巣切除を行うことが予後を改善するとして行われてきました。特に、肺転移のみが認められる患者さんの一部においては、原発巣の切除を行うと、なぜか肺転移巣が小さくなるのです。全ての患者さんで認められるものではないですし、骨転移や肝転移が小さくなるということはありませんでしたが。

 これには、原発巣が取り除かれることによって、腫瘍が免疫機構から逃れるためのさまざまな因子の発生源がなくなり、体内の免疫環境が改善するからではないか、と考えられてきました。

 一方で、この頃、免疫調節物質(サイトカイン)であるインターフェロン-α(IFN-α)やインターロイキン-2(IL-2)について、医薬品として開発が進められていました。これらのたんぱく質はT細胞やマクロファージ(白血球の一種)を活性化する作用があるので、医薬品として投与すればがん細胞を死滅させられる効果が得られるではないかと期待されました。

 さまざまながんを対象にIFN-αやIL-2の開発が進められましたが、多くのがんで有効性を示すことができませんでした。しかし、この2つのサイトカインが有効だったのが腎細胞がんだったのです。今でもIFN-αとIL-2は、全ての患者さんに適しているわけではありませんが、腎細胞がん治療の選択肢です。

 また、振り返れば、リンフォカイン活性化キラー細胞療法(LAK療法)という治療法が注目された時期がありました。患者さんのリンパ球を体外で高濃度のIL-2とともに培養して、がん細胞を殺傷する作用を高めたナチュラルキラー細胞(NK細胞)を大量に増やし、体内に戻す治療です。

 このLAK療法の開発者が、高い効果が得られるだろうと考えて選んだのが腎細胞がんと悪性黒色腫だったのです。ただし、LAK療法は期待されたほどの有効性が確認されませんでした。

 また、腎細胞がんの組織を詳しく見てみると、腫瘍組織浸潤リンパ球(TIL)というリンパ球があるのが分かります。これはがん組織に集まっているリンパ球のことで、このリンパ球を集めてIL-2とともに培養して体内に戻すTIL療法という治療の開発も取り組まれました。これも腎細胞がんや悪性黒色腫でよく研究されたのです。現時点では、この治療の有効性の評価は定まっていません。悪性黒色腫ではこのTILを活性化させることで一定の有効性が示されましたが、腎細胞がんにおいては、がん組織にTILが集まっているのは認められますが、このリンパ球ががん細胞を攻撃していないことが分かっています。

 つまり、少なくとも腎細胞がんにおいては、免疫療法(サイトカイン療法)が有効であり、また、免疫系が治療のターゲットとして有望であるという背景があるのです。

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