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レポート

2013/10/8

国立がん研究センター生物統計部門 部門長 山中竹春氏に聞く

高度催吐リスク治療に対する制吐療法の臨床試験で示されたこと

加藤勇治

 6月に開催された国際がん支持療法学会(MASCC)で、日本で行われた制吐療法に関する臨床試験の結果が発表された。がんの化学療法薬の中には高頻度に悪心や嘔吐を誘発するものがあるが、近年、制吐療法の進歩により、悪心(吐き気)や嘔吐を予防できるようになってきた。今回、MASCCで発表を行った国立がん研究センター生物統計部門 部門長の山中竹春氏に臨床試験の概要について聞いた。


国立がん研究センター生物統計部門 部門長の山中竹春氏

 6月に開催された支持療法などの最新動向を議論する国際学会で、制吐療法に関する最新の知見を発表しました。

 肺癌や胃癌の化学療法におけるキードラッグであるシスプラチンを含む治療を受ける患者さんを対象に、第二世代の5-HT3受容体拮抗薬*1であるパロノセトロン(製品名「アロキシ」)と第一世代の5HT3受容体拮抗薬であるグラニセトロン(製品名「カイトリル」「グラニセトロン静注液」など)に関して、悪心および嘔吐の予防効果を比較しました。

 2つの5-HT3受容体拮抗薬、グラニセトロンとパロノセトロンを比較した結果、総合的にパロノセトロンの方が嘔吐の予防効果が高いことが分かりました。悪心に関しても同様の傾向が見られています。
 
 がんの化学療法に伴う悪心・嘔吐には大きく分けて2種類あります。化学療法投与から24時間以内に起こる急性のものと、化学療法投与から24時間以降に起こる遅発性のものです。シスプラチンを含む治療は、「高度催吐性リスク」の化学療法に分類されており、悪心や嘔吐を引き起こしやすい治療です。現在の制吐薬適正使用ガイドラインでは、化学療法の前に、ステロイド薬であるデキサメタゾン(製品名「デカドロン」「デキサート」)、NK-1受容体拮抗薬*2であるアプレピタント(製品名「イメンド」)、そして5-HT3受容体拮抗薬の計3剤を併用する制吐療法が推奨されています。

 近年、新しい薬剤としてアプレピタント(2009年発売)とパロノセトロン(2010年発売)が登場しました。この2剤とデキサメタゾンの計3剤の併用療法は、アプレピタント+グラニセトロン+デキサメタゾンの3剤併用に比べて、急性嘔吐の予防効果は同等、かつ遅発性嘔吐の予防効果はパロノセトロンを用いる方が高い、ということが分かりました。


◆一度でも嘔吐を経験することがないよう十分な制吐療法を

 今回のこの臨床試験で示された結果を是非活用して欲しいと思います。

 悪心・嘔吐が起こると、脱水を生じたり、食欲不振から体重が減少したり、また日常生活を思うように過ごせなくなったりして生活の質(QOL)が低下します。また、あまりにも強い悪心・嘔吐があると、抗がん剤の投与量を減らしたり、休薬が必要になるなど、治療にも影響が出てしまいます。

 さらに、化学療法を受けて嘔吐を経験すると、次に化学療法を受ける日の前日などに前回の辛い状態を思い出すことで、次の化学療法を受ける前に嘔吐してしまうことがあります。予測性嘔吐と呼ばれるものです。

 一度でも悪心・嘔吐を経験しないように制吐療法を十分に行うことが重要です。今回発表した試験の結果は、1サイクル目の化学療法開始からその5日後(120時間後)まで、どちらの5-HT3受容体拮抗薬の予防効果が高いかを検討したものです。しかし、1サイクル目において悪心・嘔吐の予防効果が高ければ、2サイクル目以降でも悪心・嘔吐を予防できる可能性が高いと言えますし、予測性嘔吐の軽減につながると考えられると思います。

*1 5-HT3受容体拮抗薬:セロトニン(5-HT)という物質がセロトニン受容体の1つ(5-HT3受容体)に結合し、その刺激が嘔吐中枢まで伝わることで悪心・嘔吐が誘発される。5-HT3受容体拮抗薬はセロトニンが5-HT3受容体に結合することをブロックすることで悪心・嘔吐を抑制する。
*2 NK-1受容体拮抗薬:神経伝達物質の1つ(サブスタンスPという)がニューロキニン受容体(NK-1受容体)に結合し、その刺激が嘔吐中枢に伝わることで悪心・嘔吐が誘発されることが明らかになっている。NK-1受容体拮抗薬は、サブスタンスPがNK-1受容体に結合することをブロックすることで刺激が嘔吐中枢に伝わらないようにする効果を持つ。

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