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2013/8/20

がん患者が在宅医療を受ける際のポイント

福原麻希=医療ジャーナリスト

独居の在宅医療の壁「呼吸苦」と「精神的なさみしさ」はどう乗り越えるか

 在宅サポートセンター村山大和診療所では、2007年〜2012年までの約5年間、訪問診療をした独居患者について調査している。この内容は今年度の第18回日本緩和医療学会「高齢者の緩和ケア(座長:蘆野吉和、秋山正子)」で発表した。

 「5年間、毎年のように独居者が増えていたので、社会現象の一つとして注目していた」と森氏は言う。2007年時は70人中6人(8.6%)だったが、2012年時は114人中17人(約15%)と約2倍に増えていた。調査対象者は548人で、そのうち独居者は57人、平均年齢は77.8歳だった。そのうち、がん患者は約4割だった。
 
 がん患者の場合、最期まで自宅にいた人は約8割で、そのうち独居者は半数以下(4割強)だった。独居者で介護者なしの場合、「家族と会う頻度はどのくらいか」と質問したところ、29人のうち、まったく会っていない人は20人、毎日会っている人は6人、週1、2日会っている人は2人、年数回が1人だった。

 がん患者が在宅医療を始めるとき、退院の際に病院が地域の診療所や訪問看護ステーションにつないでくれることが多い。もし、複数の在宅医を紹介された場合、どのような視点で決めればいいのか。『おひとりさまでも最期まで在宅』(築地書館)の著者で、自身も介護の経験があるノンフィクションライターの中澤まゆみ氏は、「まず、在宅医に自分の症状を伝え、どのような職種と連携しながら対応してくださるか、会って話を聞いてみるといいですよ。緊急時に地域の病院とどのように連携しているか、痛みが出たときに医師や薬剤師が麻薬を処方できるかも確認しておくことをお勧めします」と助言する。 また、退院してから在宅医療を受けたいと思った場合などは、下表のようなサイトが参考になる。

出典:『おひとりさまでも最期まで在宅』(中澤まゆみ著・築地書館)

WAM NET(ワムネット)http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/ 医療・介護の基本情報がつかめる総合検索サイト。左の見出しのところの「医療」→「病院・診療所検索」を開くと、サービス提供機関の情報(都道府県の医療機能情報検索サイト)につながる。
NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク http://www.home-care.ne.jp/ 在宅医療に熱心な診療所のネットワーク。
在宅医療支援マップ http://www.tcs-cc.co.jp/maps/shienmap/ 仙台で在宅医療を熱心におこなう「仙台往診クリニック」が作成。全国の訪問歯科と訪問薬剤師も網羅している。
ホームケアズ・ネット(全国在宅療養支援診療所連絡会) http://zaitakuiryo.or.jp/ 『在宅ケア医年鑑2005 在宅ケアをしてくれるお医者さんがわかる本』情報を更新。

 途中で在宅生活をあきらめ、入院や施設に入所した方もいた。その理由は、「呼吸の苦しさ」「さみしさ」「日常生活の不自由さ」「意識の低下による」が多かった。呼吸の苦しさは、「身体機能によるもの」と「精神的なつらさによるもの」がある。末期の方全体の約6割が呼吸苦を感じるというデータもあるという。前者の場合は酸素療法やベッドで横になる身体の向きなどを変えたりすることで、呼吸の苦しさを改善することができる。後者の場合は、ステロイド剤やモルヒネ(鎮痛薬)、抗うつ剤などの薬物療法のほか、ベッドサイドで介護者が手を握るなどでも、安心が得られるという。

 また、さみしさは、予後が明確になるほど「今後、自分はどうなるのか」という、いわゆるスピリチュアルな痛みが伴うという。そんなときは、傍らに誰かがいるというのは、精神的な安定につながる。渡邉氏はこう言う。「ベッドサイドで話をお聴きしたり、身体の一部に触れたりなど、そばにいることしかできません。でも、ふとした瞬間に心を開いてくださることもあるので、私たちはその時間をとても大切にしています」

 一方、在宅医療でも、「スタッフが入れ替わり何人も来るのが煩わしい」「疲れる」という患者の場合は、スタッフ同士が情報交換をしながら、適度な訪問にとどめるという。

 在宅医療を受けたい場合は、入院中、患者相談室の医療ソーシャルワーカーや退院支援の看護師に相談するとよい。退院してからの場合は、地域包括支援センターに相談すると、居住している地域の訪問看護ステーションや介護サービスを提供する事業所につながる。

 森氏は独居のがん患者が在宅医療を受ける場合に留意したほうがいいことについて、こう言う。「ご本人ががんの告知を受けていることがポイントになります。告知されていない場合、入院するかどうか、積極的な治療を受けるかどうか、意識が低下してきたときに病院に搬送するかどうか、心臓マッサージをするかしないか、亡くなった後の連絡や葬儀、お墓、埋葬法のことなどを他人に任せることになります」

 また、どんなに身寄りがいなくても、亡くなった後のことを考えて、24時間365日連絡が取れる友人や司法書士の連絡先を介護スタッフに渡しておいてほしいという。

 在宅医療での安心感を得るために、「まちの力」をおおいに活用している地域もある。例えば、全国の自治体では、おもに地域包括支援センター(*)や社会福祉協議会(*)を中心に「高齢者を見守る活動」をしている。

 東大和市の場合は、▽奈良橋市民センターに窓口を設置して社会福祉士を常駐させる(「高齢者見守りボックス」と呼ばれる)、▽地区ごとに市民ボランティアが対象の高齢者宅を訪問したり、見守ったりする「見守り声かけ活動」、▽市役所や社会福祉協議会を中心に地域の郵便配達員、新聞配達員、ガス料金回収スタッフなどにも協力してもらい、異変を発見したら市役所の担当者につなぐ「大きな和」などに取り組み、一人暮らしの方の健康状況を確認している。「患者さんご本人の自立と、専門職員による公助を組み合わせて地域全体で支えるシステムを構築することによって、独居であっても安心して住み慣れた自宅で生活することができます」と姫野看護師は話している。

*地域包括支援センター:地域の保健・医療・福祉を向上させるための活動をしている拠点。介護保険の枠組みにおける市町村事業として、保健師・ケアマネージャー・ソーシャルワーカー(社会福祉士)が働いている。
*社会福祉協議会:地域の福祉を推進する中核的役割を持つ非営利の民間組織

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