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2013/7/2

がんと生殖機能温存 vol.3

精巣がん、膀胱がん、小児がんの治療による不妊への対処法

福島安紀=医療ライター

小児がんの治療で性腺機能の発達障害が起こるリスクも

 患者が生殖年齢に達していない小児がんの場合は、成人のがん患者のように、治療開始前に精子や卵子を凍結保存して妊孕性を温存することが難しい。

 小児がんは年間2000〜2500人が発症しているが、診断や治療法の進歩によって7割以上の人が治癒するようになっている。小児がん経験者が増えるに従って注目されるようになっているのが、原疾患、化学療法、放射線療法、手術の影響による晩期合併症の問題だ。

 「晩期合併症の中で特に多いのが内分泌系(ホルモン)の異常です。成長の途中段階にある小児期や思春期にがんの治療を受けたことによって、二次性徴が起こらなかったり途中で停止してしまったりする性腺機能低下症、あるいは二次性徴が早い時期に起こる思春期早発症になる場合があります」。大阪大学大学院医学研究科小児科学助教の三善陽子氏はそう指摘する。

 性腺機能に大きな異常があると、将来的に不妊になる危険性がある。大阪大学医学部附属病院小児科で小児がんの治療後2〜30年(中央値8年)フォローアップを行っている122人の患者(男性62人、女性60人)のうち82人(67%)に内分泌系の異常がみられ、60人(49%)は性腺機能低下症だった。

 性腺機能に悪影響が出る危険性があるのは、(1)頭部あるいは、精巣や卵巣を含む下腹部への放射線照射、(2)造血幹細胞移植前の全身放射線照射、(3)アルキル化剤、シクロホスファミドなど生殖機能障害になるリスクの高い抗がん剤治療、(4)卵巣や精巣の手術などを受けた場合だ。欧米では、そのような治療を受ける小児がんの患者に対して、女性の場合は卵巣組織の凍結保存、男性で思春期にさしかかっているならば精子を採取して凍結保存をする試みが行われている。

 「体の成長や二次性徴が始まる時期にはもともと個人差がありますが、身長や体重が成長曲線から大きく外れているような場合、あるいは男性らしい体つき、女性らしい体つきになってこないようであれば、もしかしたら性腺機能などの内分泌機能に異常がある可能性があります。また、専門医が診察をしないと分からないような場合もあります。性腺機能低下症と診断された場合には、男性ホルモンや女性ホルモンを補充する治療を行えば性発育は促されます。女性では順調に月経があっても早く閉経が来てしまう場合(早期閉経)や、男性では精子数減少(造精機能障害)になる場合があります。成人になっても長期に定期的なフォローアップを受けることが重要です」と三善氏は強調する。

 全国的に、小児がん経験者を対象に長期フォローアップ外来を開設する病院も増えてきている。ただ、小児がんの治療後ホルモン補充療法などの治療を受けている場合、18歳未満(20歳未満まで延長可)なら小児慢性疾患助成制度で医療費の自己負担額が軽減されるが、単に検査を受けているだけでは助成が受けられないといった問題がある。

 小児がん経験者の中には、結婚して子供を授かる人も増えている。化学療法や放射線療法の影響を心配する人もいるが、がんの治療によって流産や先天異常児が増えたり、出産した子供のがんの発生リスクが高まったりすることはないという。 

 ところで、治療後妊娠・出産を考える人が多い乳がんに関しては、厚労省の研究班が「乳がん治療にあたり 将来の出産をご希望の患者さんへ」と題した小冊子を作成した。乳がんの治療による卵巣機能の低下、妊娠が乳がんに与える影響、生殖医療の専門家を選ぶポイント、乳がん治療担当医と生殖医療担当医との連絡ノートなどがまとめられており、乳がんの患者を受け入れる全国の生殖医療機関のリストも掲載している。この小冊子は、NPO法人日本がん・生殖医療研究会のホームページからダウンロードできる。

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