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レポート

2013/6/11

―日本対がん協会会長・垣添忠生氏に聞く

すべての病院で遺族にグリーフケアの提供を

がんで配偶者を亡くす人は年間20万人

福島安紀=医療ライター

悲嘆のプロセスを知っておこう

 私は逃れる術がないからひたすら酒を飲み、家にいるときはひたすら泣きましたが、3カ月後ぐらいに、自死できない、だったら生きざるを得ないという意識が芽生えてきました。「情けない私の姿を妻はどんな思いで見ているだろうか。きっと悲しんでいるに違いない」と考えたら、酒浸りの生活を立て直さなければという気になったのです。きちんと食事を作るようになって、朝、腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワットといったトレーニングをして出勤するようになったら、少し前向きな気持ちになれました。やはり健康のもとは食事と運動です。体がしっかりしてくると、少し精神も前向きになってくる感じで。精神と肉体は本当に一体のものだと実感しましたね。今では、朝、腕立て伏せ100回とスクワット50回を2セッションずつ、腹筋500回、背筋100回、空手の突きと蹴りを各100回やって、シャワー浴びて出勤するのが日課です。

 悲しみは永遠に消えませんが、私は、1年ぐらいかけて絶望の淵から少しずつ這い上がっていきました。妻という半身を失って血がどんどん流れ、血が止まっても肉芽が盛り上がるときのように、ちょっと触れば血が出てくる。それが3か月から1年経つと、だんだん皮が厚くなって少しぐらい触っても血が出なくなって、見かけ上は普通の生活に戻っていったような感じです。

 大事な人を失ったときの様相はとても複雑で、人それぞれです。それでも、ある程度共通のパターンがあるといわれています。上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン氏は愛する人を失ったときの悲嘆のプロセスには、次の12の段階があるとおっしゃっています(表)。


 すべての人が12の段階を経験するわけではありませんし、順序もこの通りではないかもしれません。しかし、ここには、悲しみを乗り越えることで、以前より成熟した人間になれると示されています。つらい死別を体験した人が、この悲嘆のプロセスを知って意識すれば、自分の意志で前に進むことができるようになるのではないでしょうか。このプロセスを知ることは、悲しみの底にいる人をサポートする家族にとっても重要です。

悲嘆のプロセスの12段階(アルフォンス・デーケン氏) (『悲しみの中にいる、あなたへの処方箋』(垣添忠生著・新潮社)より抜粋)

◇精神的打撃と麻痺状態―衝撃によって、一時的に現実感覚が麻痺状態におちいる。
◇否認―「あの人が死んだなんて本当のはずがない」。死という事実を認めようとしない。
◇パニック―身近な死に直面した恐怖から、極度のパニック状態におちいる。
◇怒りと不当感―運命や神に対する怒り。不当な苦しみを負わされたという激しい怒りや感情。
◇敵意と恨み―周囲の人々や故人に対して、敵意という形でやり場のない感情をぶつける。
◇罪意識―「ああすれば死なずにすんだかもしれない」。悔恨の念から自分を責める。
◇空想形成、幻想―故人がまだ生きているかのように思い込み、帰宅を待つなどの振る舞いをする。
◇孤独感と抑うつ―健全な悲嘆のプロセスの一部。本人の乗り越える努力と周囲の支援が大切。
◇精神的混乱と無関心―日々の生活目標を失った空虚さからどうしていいかわからなくなり、あらゆることに無関心になる。
◇あきらめ〜受容―相手の死を受け入れ、勇気をもってふたたび現実の世界に立ち返ろうとする。
◇新しい希望〜ユーモアと笑いの再発見―忘れられていたユーモアと笑いの復活は、悲嘆を乗り切りつつあるしるしといえる。
◇立ち直りの段階〜新しいアイデンティティーの誕生―苦痛に満ちた悲嘆のプロセスを経て、より成熟した人格者として生まれ変わる。

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