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レポート

2013/6/4

がんと生殖機能温存 vol.2

血液がんの治療前に知っておきたい生殖機能温存法

福島安紀=医療ライター

 造血幹細胞移植を受けると不妊になる危険性は高まる。それは、移植前に行う大量抗がん剤や全身放射線照射を用いた前処置のためである。この前処置の内容によって不妊となるリスクは異なる。欧州の研究グループが2003年、米国血液学会誌『Blood』に発表したデータ(表2)によると、移植前の治療がシクロホスファミドのみの投与であれば男性の61%、女性の74%(26歳未満の女性なら100%)が性腺機能を回復できる。しかし、シクロホスファミドに全身放射線療法が加わると、性腺機能が回復する人の割合は男性では6人に1人、女性では10人に1人程度に低下してしまう。全身放射線療法を受けなくても、ブスルファンとシクロホスファミドを組み合わせて投与されると、女性の場合は卵巣機能が回復する可能性が極めて低い。

表2 造血幹細胞移植前の治療別、性腺機能回復率

 男女で生殖機能の回復率に大きな差があるのは悪性リンパ腫などで、患者本人の末梢血幹細胞をあらかじめ採取しておいて大量化学療法後に自家移植をしたときだ。女性は60%回復するのに、精巣機能が回復した男性は0%となっている。

できるだけ化学療法前に精子・卵子の凍結保存を

 将来子どもをもうける予定や可能性があるのに、不妊になるリスクを伴う治療を受ける場合にはどうしたらよいのだろうか。

 「血液がん患者の場合、化学療法を何度も受けると、一時的あるいは半永久的に無精子、無月経となる。再発したり化学療法が効かなかったりして造血幹細胞移植が必要になった段階で、その直前に精子や卵子を採取して凍結しようとしても不可能なのが実情です。治療後に子どもが欲しい人は、できるだけ、1回目の化学療法が始まる前に精子や卵子を採取して凍結保存しておいたほうがよいでしょう。例えば、男性の場合、化学療法開始前に精子を採取して凍結保存し、治療終了後しばらくしてから体外受精するという流れが血液がんの臨床現場でも浸透してきています」と神田氏は説明する。

 女性の場合は、卵子を採取し、パートナーがいれば受精卵(胚)の状態で、パートナーがいなければ卵子をそのまま凍結保存する。「ただ、血液がん患者は、白血球や血小板の数が減っていて感染、出血が起こりやすいので、採卵はかなり慎重にしなければいけません。また、精子と違って排卵には周期があります。治療を急ぐ場合には化学療法を優先し、病状が安定したら卵子の採取を試みます。ただ、化学療法の影響を受けてしまうため、状態の良い卵子を得るのが難しいことも多いのが実情です」(神田氏)。

 治療を急ぐ女性がん患者の妊娠可能性を残すため、最近では、卵巣組織を摘出、凍結保存し、出産が可能になった時点で卵巣組織を患者の体内に戻すといった治療も選択肢の一つになっている。日本では研究段階だが、ヨーロッパでは一般的になりつつある方法で、実際に、悪性リンパ腫の一種であるホジキンリンパ腫の女性などが、化学療法を受ける前に摘出・凍結保存しておいた卵巣組織を移植し、妊娠・出産を果たしている。

 ただ、神田氏は、「血液がんの場合、特に白血病では、取った卵巣組織の中にがん細胞が残っているかもしれないという問題があります。そのため、卵巣組織を体内に戻せばがんの再発リスクが高まってしまう可能性があることが指摘されています。白血病が完全寛解となり、見た目上、ある程度正常な状態になった段階で摘出・保存した卵巣であれば、そこには生きた白血病細胞はいないとする報告もありますが、まだ現状では確定的なことを言える段階ではありません。そのため、いまのところ、卵巣凍結は血液がん患者にはあまり行われていません」と指摘する。

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