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2013/4/9

家庭での抗がん剤曝露防止―患者・家族もほんのちょっとの心がけを

関西電力病院 薬剤部長の濱口良彦氏と同院がん薬物療法認定薬剤師の倉橋基尚氏に聞く

野中希=医学ライター

 かつて入院での投与がほとんどだった抗がん剤治療は、現在では投与レジメンの工夫や制吐剤など支持療法の進歩、そして分子標的薬や経口剤の登場により一昔前とは大きく変わり、外来での投与や自宅での経口剤服用など、より簡便になってきた。
 近年、こうしたさまざまな投与法で用いられる抗がん剤の点滴液との混合などの調製について、病院内で取り扱っている薬剤師や看護師が抗がん剤に曝露しないよう対応が進められているが、その延長として、家庭内での抗がん剤の取り扱いについても、患者や共に暮らす家族への周知とわずかな配慮を行うことで、不要な曝露を防ぐという活動が始まった。家庭での抗がん剤曝露対策にいち早く取り組んだ関西電力病院薬剤部の濱口良彦氏(写真右)と倉橋基尚氏(写真左)に話を聞いた。


―――抗がん剤投与中の患者や家族の安全管理について資料をまとめられたきっかけは何ですか? 今回の患者向けパンフレットができた背景を教えてください。

関西電力病院薬剤部の濱口良彦氏(写真右)と倉橋基尚氏(写真左)

濱口 われわれ薬剤師は、院内でレジメン(治療別に作られている、投与する抗がん剤の組み合わせと投与法のこと)の管理を含め、抗がん剤に関するすべてを日常的に担っています。医師または看護師と共同作業をしながら日々薬剤の投与を行っていく中で、薬剤部での調製や患者のベッドサイドでの投与準備の際に起こりうる薬剤の曝露を少しでも回避しようと、一昨年11月、プライミング(事前に輸液バッグに抗がん剤を混合し、ベッドサイドでの抗がん剤の飛散を防止する)の実施を決めました。こうして院内における医療者の抗がん剤曝露を防止する対策を進めている際に、抗がん剤を投与する患者とそのご家族への対策を検討する必要があるという議論になりました。

倉橋 院内での抗がん剤の曝露防止対策をすべて見直そうという動きがあり、医師、看護師含め、院内勉強会を何度か行って、医療者における曝露防止対策は非常に進んできています。

 実は、こうした抗がん剤の調製時における曝露については、外国では検討が進んでおり、ガイドラインが作られています。抗がん剤の投与を受けた患者が院内でトイレに行くと、尿や便に混じってくる抗がん剤が便器の周りに飛散することが示されています。そのため、海外では、トイレの清掃スタッフへの曝露について配慮も義務づけているのです。

 このように海外では取り組みが進められていますが、日本ではまだこうしたガイドラインはありません。そこで、我々は医療者だけでなく、その先の人々への曝露について考え、体制を整えようと思いました。

 こうして院内での対策に取り組んでいくうち、「医療者への曝露について対策をするならば、その先の、患者およびその家族への曝露についても考える必要がある」という議論になったのは、ある意味当然の流れでした。入院での投与から外来化学療法へ、そして経口薬の登場により自宅での服薬が一般的になってきているからです。そのため、家庭での抗がん剤曝露防止のための患者向けパンフレットを作成することになりました。

――院内の安全管理が最初にあったということですね。患者が薬剤に曝露すると危険なのでしょうか。

倉橋 毎日、直接抗がん剤を取り扱う医療者については、どうしても直接吸い込んだり、皮膚に触れたりする可能性が高く、それは身体に影響を及ぼす可能性が高いことから、曝露を防ぐ取り組みが必要ですし、その対策に関する報告は多いのです。しかし、家庭での曝露防止対策にどこまで効果があるかということは全く情報がないといってもよいのが現状です。実際、患者の尿や便から飛散する抗がん剤の量はわずかで、家庭での薬剤の曝露によって家族に深刻な影響が出ることはないだろうと考えています。

 例えば、薬学の研究グループによる論文では、拭き取り調査をした結果、トイレに一番抗がん剤が多く残留していたというデータが出ていますが、そうした飛散した微量の抗がん剤の曝露によって家族にどれだけ影響があるかということを調べた研究はありません。

 ただし、不要な曝露は避けることが基本ですので、我々は、「100%安全とはいえないし、しかし危険性があるとも明確には言えないけれども、ほん少しの気遣いで曝露のリスクが減るのであれば防止する手段を取るのがよいだろう」と判断しました。

――患者がトイレで用をたす場合にどうしても飛び散る、そして抗がん剤投与中であればそこに一定量の抗がん剤もしくはその代謝産物が含まれるわけですね。飛散した(程度の量の)抗がん剤の長期毒性を評価したものは基本的にないとしても、曝露はできるだけしない方がいいという対策が院内で取られているのであれば、患者に向けてもそれは同様に対策が必要であろうというのが基本的な考え方ということですね。
 今回、患者・家族向けパンフレットを作成するのに苦労されたことは何ですか。

倉橋 日本には患者向けの説明書はありませんので、作るにあたって一番参考になったのは、入院患者の看護を日々行っている看護師向けの対策マニュアルでした。教科書などもありますので、こうした資料なども参考にして、患者や家族が実行可能な範囲を想定して、看護師と相談しながら作成しました(下図参照)。

濱口 倉橋君が中心となって、いろいろな論文や看護師会の雑誌などを参考に最良の形で患者・家族向けパンフレットを作りました。ただし、現実に患者や家族がこうした対策を実施することは可能なのか、検討する必要があると考え、このパンフレットの内容について患者を対象にアンケートを行いました。患者が日常生活上、できないようなことを書いていないかどうかを確認すること、そしてこれらの対策に対する患者の意見を聞きたかったのです。

関西電力病院薬剤部提供(原典は以下のサイトに掲載、http://kanden-hsp.jp/patient/central_medical/pharmacy.html)(画像をクリックすると拡大します)

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