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2013/4/2

「痛みで生活に支障が出ている」と伝えることがポイント

―がん疼痛治療のコツを国立がん研究センター中央病院緩和医療科の的場元弘氏に聞く―

満武里奈=日経メディカル別冊

 がん患者が経験する「がん疼痛」は、身体的苦痛のみならず、精神的苦痛でもあり、痛みを取り除くことは大切なことだ。痛みの治療の基本は、「適切なタイミングで、適切な薬剤を用い、その結果痛みがなくなる、あるいは大幅に少なくなる」ことにある。しかし、患者と医療者の間のコミュニケーションがうまくとれず、痛みを取り除く適切な治療が行われないケースも少なくない。痛みを感じたとき、医師にどのように伝えれば、最適な治療を受けられるのか──。国立がん研究センター中央病院緩和医療科の的場元弘氏にお話を伺った。


国立がん研究センター中央病院緩和医療科の的場元弘氏

──がん患者さんが経験する可能性のある痛みにはどのようなものがあるのでしょうか。

的場 がん患者さんが体験する痛みを、広く「がん疼痛」といいますが、大きく分けて、(1)がん自体が引き起こす痛み、(2)手術後の傷の痛みや抗がん剤の副作用など治療に伴う痛み、(3)床ずれやむくみなどがんに関連した痛み、(4)腰痛や偏頭痛などもともと持っていた病気に起因する痛み──があります。

 このうち、(2)から(4)については、それぞれに対する治療ができるものが多く、ある程度、対応は決まっていることが多いかと思います。

 一方、(1)のがん自体が引き起こす痛みについては、痛みの出る時期や場所が患者さんごとに異なりますから、予測を立てて治療することがとても難しいです。一般には、腫瘍が大きくなってくると周囲の組織を徐々に圧迫し、さらに大きくなるに従って痛みが強くなります。腫瘍が神経を圧迫すると、麻痺が生じたり、特殊な痛みが出現します。逆に、高度に神経を破壊すると痛みを全く感じなくなることもあります。また、がんが転移することで転移した先の臓器を圧迫することでも痛みを生じます。内臓の痛みでは、関連痛といって臓器と離れた場所に痛みを感じることがあります。例えば、肝転移の影響が横隔膜に及ぶと「右肩が痛い」ということも生じることがあります。

 また、腫瘍のある場所、腫瘍の大きさによって痛みの状態は変わりますし、痛みの強弱も人によって異なります。同じ痛みであっても人によって感じ方が異なりますし、そもそも痛みは痛いと感じている本人以外には分からず、客観的な評価は難しいという特徴があります。

 ここが問題の根源で、時に、「病院で痛みを訴えたものの、つらさを分かってもらえなかった」とか、「家族に『治療中だから我慢しよう』と言われた」といった意見が聞かれる原因の1つになっていると思っています。

──もし痛みの治療を行わないとどうなってしまうのでしょうか。

的場 本来、「痛み」はからだを防御するための大事な感覚です。たとえば、トゲがさされば手を素早く引っ込めてそれ以上けがをしないようにする、などの反射が起きることが代表的な例です。また、どこかが痛ければ、そこにきずや傷害、病気が発生しているサインです。ですから、痛みが長期間放置され続けると、神経がどんどん敏感になっていきます。これを「感作」といいます。その結果、本来は同じ強さの痛みであっても、より強い痛みに感じられるようになってしまうのです。

 よく、「痛み止めをたくさん使うと、身体が慣れてしまい、効きにくくなってしまうのではないか」と心配する患者さんがいますが、じつは逆なのです。つまり、痛みを我慢せず、弱い痛みのうちから十分に鎮痛することが重要です。我慢し続けていると少々の鎮痛薬では抑えられないぐらい重篤化していってしまうこともあることを知って欲しいと思います。

──では、痛みが出たら、どうすればよいのでしょうか。

的場 痛みそのものでつらいこともありますが、痛みが原因で日常生活に支障が出てくると思います。例えば、起き上がろうとすると痛いので起き上がることをためらう、トイレに行くにも痛いのでできるかぎり我慢してしまう、痛むので出かけるのが億劫になる―などです。

 主治医や看護師などの医療者に相談する際に、「痛みがあることで生活にどのような支障が生まれているのか」ということを具体的に伝える方法がよいでしょう。「今、痛みのせいでこれができなくて困っている」というふうに伝え、これができるようになりたい、この痛みを十分に取り除いてほしいというようにリクエストするのです。

 先に述べたように、痛みは他人には伝わりにくいものです。「先生、お腹が痛いのですが・・・」というような伝え方ではなく、「痛くてこれができない」と伝える方が具体的で、医療者側も解決に向けた見通しが立つと思います。

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