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レポート

2013/3/19

がんペプチドワクチン、現在の実力は?

加藤勇治

 近年、がんペプチドワクチンへの期待が高まっている。では、その実力はどの程度のものなのか。1月に米国サンフランシスコで開催された、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の消化器癌に関する分科会であるASCO-GIでは、日本で開発が進められているがんペプチドワクチンの臨床試験の結果が詳細に報告された。その結果を紹介するとともに、本試験を発表した演者で、がんペプチドワクチンの研究を進める和歌山県立医科大学第二外科教授の山上裕機氏に話を聞いた。


和歌山県立医科大学第二外科教授の山上裕機氏

 今回、山上氏が発表したがんペプチドワクチンの臨床試験は、PEGASUS-PC試験と呼ばれ、切除不能な進行膵癌を対象に行っている。

 使用したがんペプチドワクチンは、血管新生にかかわる血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)のたんぱく質の一部(ペプチドの一般名:elpamotide)。このペプチドワクチンを投与すると、体内の抗原提示細胞(樹状細胞ともいう)の表面にあるHLA(ヒト白血球抗原)がペプチドを認識し、キラーT細胞にそのペプチド情報が伝達される。このペプチドを認識するようになったキラーT細胞(細胞傷害性T細胞、CTLともいう)はそのペプチドを発現している細胞、この場合はがん細胞を攻撃するようになるという仕組みだ。

 これまでの検討で、血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害すると、膵癌の増殖や転移を抑制できることが基礎研究で示されていた。また、フェーズ1試験でこのelpamotideは良好な結果が得られていたため、今回、多施設共同フェーズ2/3試験としてPEGASUS-PC試験が実施された。

 試験結果を詳細に見てみると、対象は局所進行性、転移性、もしくは切除不能な膵癌で、これまでに化学療法を受けていない患者153人。これらの患者を、elpamotide 4mg/mLとアジュバント(免疫を活性化する物質)を混合した製剤と進行膵癌の標準治療に用いられる抗がん剤であるゲムシタビンを併用投与した実薬群と生理食塩水+アジュバント+ゲムシタビンを併用投与するプラセボ群に割り付けて、病勢が進行してしまうまで継続投与するという方法で行われた。

 elpamotideという新しい薬剤を投与しているため、薬剤関連の有害事象について検討された。その結果、白血球減少、血小板減少、貧血、好中球減少、食欲不振、AST上昇、注射部位反応が認められたが、これはプラセボ群でも同様に発現しており、elpamotideに特有の有害事象とは考えられなかった。

 全生存期間(OS)を評価したところ、OS(中央値)はプラセボ群8.54カ月に対し、実薬群8.36カ月で、elpamotideを投与することによるメリットは認められなかった。無増悪生存期間や病勢コントロール率も差はなかった。

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