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レポート

2013/3/12

日本対がん協会・会長の垣添忠生氏に聞く

小児がん診療の「集約化」で質の高い医療を提供できる体制をつくる

満武里奈=日経メディカル別冊

 現在、小児がんでは「集約化」が進められている。これは、昨年6月に見直しが行われたがん対策推進基本計画において、今後5年間をかけて取り組む課題の1つとして掲げられたためだ。厚生労働省の「小児がん医療・支援のあり方に関する検討会」で座長を務める垣添忠生氏(日本対がん協会会長)に小児がんの現状と、なぜ集約化が必要なのかについてお話を伺った。


―小児がん治療の現状について教えてください

垣添 小児がんは、小児の病死原因の第1位で、年間罹患者数は2000〜2500人です。

 小児がんには、非常に様々な種類があるのが特徴で、一番患者数が多いのは白血病、続いて脳腫瘍、神経芽腫となります。白血病についてはある程度、一定の指針に基づいた治療が全国で行われていますが、残念ながらそのほかの小児がんについては、どういった治療法がもっとも良いかといったデータが十分に蓄積されていません。

 この背景には、そもそも患者数が少ないこと、さらには小児がん診療を行う施設が全国で200施設近くあることも要因の一つとして考えられます。つまり、患者数が少ない上に、患者が全国に分散されるため、知見が集積しないのです。そのため、診療経験を積んでいくのが難しい中で診療することを余儀なくされるケースがあり、診断や治療にばらつきができてしまっている可能性が指摘されています。

 小児がん診療の特徴は、患者数が少ないことや、がん種がたくさんあるといったことだけでなく、治癒率が7割と高いため、子どもの時期だけでなく成人になっても体調や状態に変化がないかどうかフォローアップしていくことが重要である点が挙げられます。治療した患者の多くは、その後、教育を受け、社会に出て行く、就職し結婚するなどのライフイベントを迎えるわけです。つまり、小児がんは、その時に治療したら終わりではなく、治癒してから成人になるまで長期間にわたってフォローアップしていく必要があるのです。

 しかし、現状では、カルテ保持の義務期間は5年間ですから、施設によっては5年間でカルテが破棄されてしまっている可能性があります。先ほども言いましたが、小児がんの症例数が少ないため、データが不十分です。そのため、治療の影響で別のがんが発生する「二次がん」や、そのほかの臓器障害、内分泌障害、成長障害などとの関係を含め、十分に検証されていません。こうした検証を行い、今後の診療に生かしていくためにも、小児がん診療を集約化し、知見を集めることが必要なのです。過去にどのような治療を受けたのかというデータをしっかりと残しておくことは非常に重要ですが、現状はそれが十分にできていません。

「集約化」と「均てん化」のバランスが必要

―小児がんにおいて集約化が必要であるこということが、昨年見直されたがん対策推進基本計画において示されました。

垣添 2007年から施行されたがん対策推進基本計画は10カ年の計画ですが、5年が経過した昨年の2012年に見直しが行われました。2007〜2011年の前半5年間は、成人の5大がん(胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・肝がん)を中心に、全国どの地域に住んでいても標準治療が受けられるようにするという「均てん化」が推し進められました。その結果、5大がんについてはある程度の「均てん化」が進み、一定の成果をあげることができたと判断されました。

 一方で、小児がんや希少がんなど、専門的な治療を必要とするがんについては対策が不十分だったことが指摘されました。その結果、後半の5年間では、希少がんや小児がんをにも光を当てがん診療体制を整備していく方針が確認されたのです。


―小児がんで「集約化」が進められることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

垣添 患者数の少ない小児がんで集約化を進めるためには、まず拠点病院を指定し、その拠点病院で診療するようにします。特に進行がんや再発がんなど難治例が中心となります。これにより、小児がん診療について多くの知見が集積され、小児がん診療の標準化が進むと期待されます。つまり、現在よりもさらに質の高い医療を提供することができるようになるわけです。

 もちろん、患者さんが拠点病院に集まるわけですから、治験が現在よりもさらに効率よく行われ、新しい薬剤の開発スピードも上がることも期待されます。

 しかし、ただ拠点病院を指定すれば集約化が実現するわけではありません。患者さんによっては、拠点病院で治療するために、住んでいた地域を離れて1カ月から半年間、治療に専念することになるからです。そこで欠かせないのが治療期間中の教育環境や宿泊施設を整備することです。宿泊施設についても、通常の宿泊施設よりも安い料金で泊まれるような施設を用意することが求められます。

 一方で、住んでいる地域で治療を受けることを患者さんが希望した場合には、居住地域の医療施設で治療できるよう、しっかりとサポートすることが必要です。つまり、全ての患者さんが拠点病院で治療を受けることができるわけではないのです。ですから、居住地域の施設と拠点病院がしっかりと連携を取り、治療を行うことも求められます。集約化と一言でいっても、「集約化」と「均てん化」のバランスが必要で、これまで小児がん診療を行ってきた多くの医療機関との連携が欠かせません。

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