このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2013/2/12

利益と不利益のバランスを考慮して──「がん検診ガイドライン」からがん検診の目的を考える

宮腰 祥子

ガイドラインもアップデートされる必要

 もちろん、一度作成したガイドラインも永久に使えるわけではなく、根拠となる研究結果が更新されていくのに伴い、アップデートされていく必要がある。

 ガイドラインの寿命は3.5年といわれており、あらかじめ更新手順を明確にし、それに基づいて適宜更新していくことが重要だ。「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」はこれまでに胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がん、子宮頸がんについて更新され、現在、乳がん検診ガイドラインの更新作業が行われている。

 PSA検診についても、ガイドライン作成時に欧米の2つの大規模臨床試験(ERSPCとPLCOと呼ばれる試験)が進行中だったため、「それらの研究の結果が明らかになり次第、速やかに改定を検討する」とし、2009年に報告された中間結果をもとに、2011年に「ERSPC・PLCOに関する更新ステートメント」がまとめられた。評価は同じく「対策型検診として実施することは勧められない」となっている。

 また、ガイドラインの作成方法自体についても研究が進み、もともと専門家の意見を重視したものが一般的だったが、バイアス(偏り)がより小さくなるよう、科学的根拠を踏まえた作成手順に変わってきている。さらに最近では、経済学的な評価研究も重視されるようになり、たとえば英国ではNICE(英国国立医療技術評価機構)が診療ガイドラインを作成するにあたって経済学者が参加。そこで行われた経済評価研究が、新薬の承認や薬価の算定にも活用されている。

「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」でも、「死亡率減少効果について充分な証拠があると判断した場合でも、対策型検診としての導入に際しては、国際標準に基づく医療経済学的評価が望ましい」とされている。

 たとえば前立腺がんの場合、日本人の罹病率は欧米の約10分の1程度と低く、死亡率も日本人男性の部位別ごとに見た場合で7番目。そのため、「PSA検診の有効性が証明された場合でも、対策型検診として行うかどうかは、他のがん検診も含め優先順位を検討するべき」と濱島氏は指摘する。

任意型検診を受ける、受けないはどう判断するべきか?

 では、個人が任意型検診を受けるかどうかは、どのように判断すればいいのだろうか?

 その点について濱島氏は、「かかりつけ医と相談し、判断を助けてもらうというのが理想的」と語る。

 PSA検診を例にしてみると、日本の2つのガイドラインは、いずれもPSA検診が前立腺がんを早期発見する上で有用な検査であるという点では一致している。そのうえで、「自分がPSA検診を受けるべきかどうか」をどう判断するかということになるが、そのときに患者の体の状態を最も理解しているかかりつけ医が、利益と不利益についてその人に合った説明を行うべきという考え方だ。

 しかし、濱島氏は「日本ではプライマリ・ケアの教育がまだ十分ではなく、特に治療や検査の不利益についてきちんと説明するための教育がおろそかにされてきた部分がある」とも指摘する。

 日本と同様にPSA検診の推奨をめぐって論争が起きた米国でも、積極的に推奨するというよりは、個人の罹病リスクの有無も踏まえて個人(受診者)と医師の間で情報提供を行い判断していく「共同意思決定(Shared Decision Making)」の場を設けることを推進する方向に変化しつつある。個人の価値観にも基づき、適切な判断が下せるような体制になることが望まれる。

この記事を友達に伝える印刷用ページ