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レポート

2013/2/12

利益と不利益のバランスを考慮して──「がん検診ガイドライン」からがん検診の目的を考える

宮腰 祥子

前立腺がんのPSA検診をめぐって「論争」も

 しかし、ガイドラインの推奨をめぐっては、過去に論争も巻き起こっている。前立腺がん検診の1つである「PSA検査」は、PSA(前立腺特異抗原)と呼ばれる前立腺がんに特有のマーカーを調べるもの。血液検査のみで行うことができるため、住民検診として約半数の市町村で実施されていた。ところが、2007年に発表されたガイドライン案「有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン・ドラフト」で、「死亡率減少効果の有無を判断する証拠が現状では不十分」であるため、「対策型検診として実施することは勧められない」と提言(推奨グレードI)。PSA検診を推奨する日本泌尿器科学会と厚生労働省の間で、検診のあり方をめぐって大きな対立が生じた経緯がある。

 住民検診として広く普及していたPSA検診が「対策型検診として実施することは勧められない」とされたのは、死亡率減少効果が明確ではないことに加えて、過剰診断や過剰治療などの不利益が大きいという理由がある。前立腺がんはほかのがんに比べて進行速度が遅いため、その人の余命とのバランスから、発見しても治療が不要と考えられる場合もある一方で、見つかったからと治療を開始することでその人にとって結果的に過剰治療となってしまうケースもある。精密検査として行われる生検(前立腺に針を刺して組織の一部を採取する)で偶発症が起こる可能性や治療による身体的・精神的な負担や合併症、検査、治療にかかる費用などの面を考慮すると、利益と不利益のバランスが取れないというのだ。

 一方、日本泌尿器科学会はこの発表によって「PSA検診は意味がない」という誤解が広がり、検診を受ける機会が減少すると主張。PSA検診は前立腺がんの死亡率、転移がんを減少させるとして、「50歳以上の男性のPSA検診を推奨する」とした独自のガイドラインを作成し、そのため日本ではPSA検診に関する2つのガイドラインが存在するという状態が続いている。米国でも同様に、学会と米国予防医学作業部会(USPSTF:United States Preventive Services Task Force)の推奨が異なることから議論があるが、作成団体により推奨が異なることは稀ではない。こうした問題を解決するために、米国IOMでは、ガイドラインの作成には利益相反を明示するとともに作成方法の透明性を確保することが必要としている。

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