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レポート

2013/2/5

大腸ESDでより大きな大腸病変でも内視鏡的一括摘除が可能に、重要なのは術前診断

広島大学病院内視鏡診療科教授の田中信治氏に聞く

聞き手:増谷彩=日経メディカル別冊編集

大腸ESDの登場で対象となる病変の大きさが拡大

 このように内視鏡的摘除には病変の大きさによる制限がありましたが、近年その制限を打ち破る方法が開発されました。それが大腸ESDで、2012年4月には保険適用となりました。大腸ESDはスネアを用いず、病変直下の粘膜下層を直接剥離する手技で、2009年7月付けで早期大腸癌または腺腫を適応症として先進医療に指定されていた技術です(図3)。これまでは内視鏡摘除の対象となる早期がんでも、大きさが2cmを超えるために外科手術を選択せざるを得ない場合もありました。外科手術は全身麻酔が必要で、体にメスを入れることから一定の術後合併症のリスクなどがあり、内視鏡的切除に比べれば侵襲度は確実に高まります。このような例を内視鏡的摘除できるようになったことは、大きなメリットです。

(画像をクリックすると拡大します)

図3 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の概要

 早期がんに対して内視鏡治療を行うか外科手術を行うかを考える場合に重要なのは、根治性、次に安全性です。2cmを超える早期がんに大腸ESDを施行するかどうかは、病変の浸潤度で判定します。粘膜までの浸潤であれば、転移の可能性はないので内視鏡で摘除すれば完治となります。ただし、粘膜下層に浸潤したがんでは約10%がリンパ節転移を来しますので、全ての早期がんが内視鏡摘除によって根治できるとは限りません。筋層付近まで深く浸潤しており、内視鏡で摘除しても後から外科手術が必要になりそうな病変の場合には、最初から外科手術を選択することが多いです。

 こうしたことから、内視鏡的摘除を選択できるかどうかを判断する上で、拡大内視鏡や超音波内視鏡によって病変の浸潤度を検査する術前診断が重要となります。拡大内視鏡は、内視鏡の先端にズーム式のレンズを搭載したもので、がんの表面に特殊な染色を施し病変を拡大観察します。ここでpit patternと呼ばれる病変部の表面模様を観察することで、病変の性質や浸潤度を診断できるのです。他にも、NBI(narrow band imaging)など、診断する手段はたくさんあります。

 また根治性と安全性をクリアすればすべての症例で内視鏡的摘除がベストというわけではありません。簡便性や経済性なども考慮する必要があるのです。胃がんに対するESDは、すでに標準治療となるほど浸透していますが、胃と大腸ではESDの難易度が全く異なります。大腸は、腹壁が薄くて穿孔しやすい(穴が開きやすい)、便汁があるために穿孔すれば腹膜炎を起こしやすい、長くてヒダが多く屈曲している、というようなことから、大腸ESDは大変難易度の高い技術です。

 医療費で考えても、ESDはポリペクトミーやEMRに比べて技術的な難易度が高いこと、大きい病変を対象とするため手術時間がかかること、使用する機材や薬剤、医療従事者の拘束時間が長いことなどから考えて、EMRの10倍以上のコストがかかります。これらのことも総合的に考慮して、医師は手技を選択するようにすべきです。

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