このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2013/1/15

継続して働ける環境づくりが進んでいます─がんと共に働く─

国立がん研究センターと日経BP社による「働く世代」に向けたがん情報提供サイト「がんと共に働く」サイトより

 同じがん、同じ治療でも、とりまく条件によって働きやすさは大きく異なる。がんと就労の問題は、個別性がきわめて高いのが特徴だ。では、仕事と治療の両立のためにどのように行動していけばよいのか?


獨協医科大学公衆衛生学講座准教授の高橋都氏

 生産年齢人口(16〜64歳)で新規にがんに罹る方の数は毎年二十数万人にのぼります。さらに、最近は定年年齢の引き上げや再雇用の義務化の流れがあり、今後、働くがん患者の一層の増加が見込まれます。就労には、収入の糧だけでなく、生き甲斐や生活の満足度の向上といった側面があります。さらに、患者ご本人だけでなく、看病するご家族の就労への影響も無視できない問題です。

 国が進める2012年度から5カ年の「がん対策推進基本計画」の「重点的に取り組むべき課題」にも、新しく「働く世代のがん対策の充実」が盛り込まれました。

 個別目標には、「就労に関するニーズや課題を明らかにした上で、職場における理解の促進、相談支援体制の充実を通じて、がんになっても安心して働き暮らせる社会の構築を目指す」が掲げられています。

 働くがん患者さんは、さまざまな困難に直面します。

 まず、診断を受けとめ、治療方針を理解して選択しなければならない時期に、職場への報告や入院中の仕事の調整をする必要に迫られます。育児や家事の手配の必要が生じる場合もあるでしょう。

 私たちの研究班が実施したアンケート調査(回答者平均44歳、診断後約4年経過)では、がん診断時に仕事を持っていた方の約4分の1が退職し、半数近くの方の個人所得が減少していました。

 自由記述欄には、「職場の誰にどこまで病気を伝えるか迷う」「病気を伝えたら自主退職を勧められた」「体調不良を職務怠慢とみなされてしまう」「責任ある仕事をまかされず、やりがいを感じない」「頻回の通院で肩身が狭い」など多くの声が寄せられました。また、体調が悪くても家計や医療費のために無理に働き続ける方や、いったん退職して再就職を目指す場合にがん治療歴を就職先に告げるべきか思い悩む方もいました。

 一方、治療が一段落して病状がある程度安定すると、働く力が回復してくることが多いのも、がんの特色です。中には「会社や同僚に迷惑をかけたくない」と考えて診断直後に退職を決めてしまう方もおられますが、退職によって労働者のさまざまな権利を失ってしまいます。少し時間の余裕をもって働き方を考えていただきたいと思います。

 もし周囲にがん治療と仕事の両立に悩む知り合いの方がいたら、「早まって仕事を辞めないで」「工夫の余地がきっとある」と声をかけてあげてください。

 研究班では、働くご本人向けに「がんと仕事のQ&A」を、職場関係者の方々向けに「がん就労者支援マニュアル」を、今年度(〜2013年3月)中に研究班ホームページで公開する予定です。

 「働くこと」について考えるには、「自分の生き方」を見直すことも必要になってきます。

 まず、からだや心の状態、働くことや生活についての情報を整理することからはじめるのが良いでしょう。がん治療の拠点となるがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターでは、そのような情報整理を手伝ってくれます。

 働くご本人も職場関係者の方々も、問題を自分だけで抱えこまず、相談支援センターといっしょに考えてみてはいかがでしょう?

 同じがん、同じ治療でも、ご本人をとりまく条件によって働きやすさは大きく異なります。発病時の年齢、職種、職位、心身の状況、ご本人の人生観や就労意欲、職場文化、職場内の人間関係などによっても、状況は大きく左右されます。

 がんと就労の問題は、個別性がきわめて高いのが特徴です。

 正直言って、医療者は一般企業のしくみを熟知しているわけではありませんから、働き方のアドバイスを主治医だけに頼るわけにはいかないでしょう。

 しかし医療者は、治療を受けるご本人やご家族が前向きに暮らすお手伝いができることを、何より嬉しく思っています。特に治療内容は心身に大きな影響を与え、働き方にも影響を及ぼしますから、起こり得る副作用や合併症を正確に把握することは大切です。

 働き方について質問があったら、できるだけ具体的に質問してください。

 「働けますか?」ではなく、具体的に「これは出来ますか?」「こういう仕事のときに何に気をつけたらよいですか?」といった質問を投げかけていただければ、主治医は答えやすいでしょう。

 わたしたちの研究班では、仕事と治療の両立に向けて積極的な支援をしている医師たちに聞き取り調査を行いましたが、医師がちょっとした工夫や心構えで実践していることが、患者さんの前向きな就労生活に結びついていることを実感しました。これらの小さな実践を多くの医療者に広げていくことも重要だと思っています。

就労支援に積極的な医師が実践していること

・患者さんが早まって退職しないように助言する。

・治療計画や予想される副作用について、わかりやすく何度も説明する。

・患者さんの仕事内容や通勤状況などの情報を集め、働き方をイメージする。

・必要に応じて、医療ソーシャルワーカーなど暮らし支援の専門家を紹介する。

・勤務に支障がでにくい時間に受診できるよう、可能な範囲で配慮する。

・患者さんが希望するなら、職場関係者や産業保健スタッフと情報交換できることを伝える。


 高橋氏の詳細なインタビューはこちらを参照ください


国立がん研究センターと日経BP社による「働く世代へのがんの情報提供」サイトはこちらを参照ください。(別ウインドウが開きます)

この記事を友達に伝える印刷用ページ