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レポート

2012/12/11

限局性前立腺がんの最新治療 Vol.1

「リスク分類と年齢が限局性前立腺がんの治療法選びの大きなポイントです」

宮崎大学医学部附属病院泌尿器科教授 賀本敏行氏

聞き手:福島安紀=医療ライター

 では、PSA監視療法に適しているのはどのような患者なのでしょうか。ガイドラインでは、限局性がんで、(1)グリソンスコア6以下、(2)陽性コア(針生検でがん細胞の見つかった針)2本以下(陽性コアでの腫瘍占拠割合50%以下)、(3)PSA10ng/mL未満をPSA監視療法の対象としています。つまり、PSA監視療法が選択肢の1つになるのは限局性前立腺がんの中で低リスクの人のみです。

 実際に、PSA監視療法を受けている患者さんの経過はさまざまで、同じ低リスクの患者さんでも5年以上PSA値が横ばいで、そのまま別の病気で亡くなる方もいれば、PSA値が持続的に上昇し、再生検でグリソンスコアが上がり、その時点で手術や放射線治療を受ける人もいます。PSA値にほとんど変化がなくても、グリソンスコアが上がる場合があるので、PSA監視療法には、PSA値の測定だけではなく定期的な生検は必須とされています。

 PSA監視療法を選ぶかどうかは、患者さんの年齢も1つのポイントです。純粋なPSA監視療法の比較試験はありませんが、根治的前立腺全摘除術と待機療法(ホルモン剤を投与したものも含めた広い意味での待機療法)を比べた無作為抽出比較試験「Scandinavian Prostate Cancer Group Study Number−4(SPCG−4)」では、全死亡率、前立腺がんによる死亡率共に65歳以上では両群に差がないという結果が出ています。しかし、65歳未満では手術群のほうが全死亡率および前立腺がんによる死亡率は低いとの結果でした。

 期待余命が10〜20年以上の人は、PSA監視療法を選んだとしても、本人が積極的な治療を希望した時点、あるいは、PSA値やグリソンスコアに変化があった時点で手術や放射線治療を行うというように、治療のタイミングを逸しないようにすることが大切です。一方、75歳以上の人は、一般的に、手術や放射線療法を受けるメリットより、手術で尿失禁が出たり放射線治療で直腸障害が起きたりといったデメリットのほうが大きいので、積極的な治療は慎重に検討することになります。

 病院によっては、低リスクの前立腺がんの人に対しても、PSA監視療法を選択肢として積極的に提示しない病院もあります。これはPSA検査を行うだけで投薬や積極的な治療は行わないので診療報酬は低いのにもかかわらず、患者さんへの説明には時間がかかり、泌尿器科医としては、ある意味最も難しい治療法で、ある程度の経験とテクニックを要するからです。

 場合によっては、経過観察の途中で「心配ならホルモン療法を」という話になることがあるかもしれませんが、低リスクの患者さんにホルモン療法をやっても生存率が伸びるという科学的根拠はありません。ホルモン療法はそれなりに副作用がありますので、心配だからやっておく治療ではないのです。

 積極的な治療法である手術や放射線療法には、ここ数年で、多くの選択肢が出てきました。その内容については、次回詳しくお伝えします。

 現在、日本泌尿器科学会では、患者さん向けのガイドラインも製作中です。自分の進行度やリスクを知り、PSA監視療法も含め、医師と十分に相談しながら治療法を選んでいただきたいと思います。

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