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レポート

2012/12/11

限局性前立腺がんの最新治療 Vol.1

「リスク分類と年齢が限局性前立腺がんの治療法選びの大きなポイントです」

宮崎大学医学部附属病院泌尿器科教授 賀本敏行氏

聞き手:福島安紀=医療ライター

 「前立腺癌診療ガイドライン」が今年4月、6年ぶりに改訂された。10月末の第50回日本癌治療学会教育セッションで「限局性前立腺癌の治療」と題して講演した宮崎大学医学部附属病院泌尿器科教授の賀本敏行氏に、その改訂点と前立腺がんの治療法選びのポイントについて、改めて聞いた。


 前立腺がんはおとなしく進行が遅いがんだと思っている人は多いのではないでしょうか。確かに、前立腺がんの中には進行がゆっくりなタイプも多い一方で、実は、悪性度が高く進行が非常に早いがんもあります。がんが前立腺の中にとどまっている限局性前立腺がんの中にも、予後がよく再発・転移の危険性が低いがんと、比較的それらのリスクが高く予後の悪いがんがあるわけです。

悪性度を知る上で重要な「リスク分類」

 『前立腺癌診療ガイドライン2012年版』(金原出版)では、限局性がんの診療アルゴリズム(図1)の中に「リスク分類」(表1)という考え方が新たに取り入れられました。前立腺がんがほかの臓器や骨などへ転移し、命を脅かすリスクは、がんの量を表すと考えられるPSA値とがんの顔つき(悪性度)を示すグリソン(Gleason)スコアによって変わります。PSA値が10ng/mL未満と低くても、グリソンスコアが8以上であれば高リスクなので、早目に治療を開始したほうがいいことになります。

図1 前立腺癌診療アルゴリズム(「前立腺癌診療ガイドライン2012年版」より)

 グリソンスコアは、生検で採取した病変を顕微鏡で見る病理検査による組織異型度分類で、2〜10まで9段階あります。通常がんの病理検査では、正常な組織と比べてどれほど異なっているかを3段階で表しますが、前立腺がんは複数の組織型が混在していることも多いため、グリソンスコアでは5段階にされ、最も多くの面積を占める主な成分と次に多い成分の評価を3+3、4+3のように足し算します。生検組織で高分化で最もおとなしいタイプは3+3=6以下、低分化で最も悪性度が高いのが5+5=10ということになります。

低リスクの人には「PSA監視療法」の選択肢も

 限局性前立腺がんの治療法の選択肢には、PSA監視療法(待機療法)、手術療法、放射線療法、ホルモン療法があります。PSA監視療法は、いずれ手術や放射線療法といった積極的な根治治療を行う前提で、3〜6カ月に1回のPSA値の測定を中心に、直腸診や1〜3年に1回の再生検を行って様子をみる方法です。単なる様子見や治療拒否ではなく、積極的に経過を見ていく方法なので、アクティブ・サーベイランスと呼ぶこともあります。前回の2006年版では、ホルモン療法の治療の開始を延期する待機療法の1つとして記載されていただけですが、新しいガイドラインでは、「6章PSA監視療法」と新たに章立てし、手術療法、放射線療法などと並ぶ「治療法」の1つに位置づけられました。
 
 前立腺がんでも悪性度の高いものがあることを強調しましたが、一方で、前立腺がんには生涯にわたり生命に悪影響を与えない潜在がん(ラテントがん)が50歳以上では13.0〜26.5%あるとの報告もあります。PSA検診によって見つかる前立腺がんの中には、確かに進行が遅く命に関わらないものもあるので、PSA監視療法を選択肢の1つとして考えることは、不必要な治療による不利益を減らすためにも重要なのです。

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