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レポート

2012/12/4

施設数が充足した放射線治療、均てん化の次のポイントは集約化

日本放射線腫瘍学会第25回学術大会長(東京女子医科大学放射線腫瘍学講座主任教授)の三橋紀夫氏に聞く

聞き手は満武里奈=日経メディカル別冊

 今年、がん対策推進基本計画の見直しが行われ、集約化というキーワードが新たに盛り込まれた。がん治療の均てん化を進めるために設けられた基本計画において、集約化するとはどういう意味なのか。11月23日から開催された日本放射線腫瘍学会第25回学術大会の会長を務めた三橋紀夫氏(東京女子医科大学放射線腫瘍学講座主任教授)に話を聞いた。同学術大会では、2007年の基本計画策定以降、放射線治療の分野で起こった変化が数多く報告されている。


──放射線治療の「均てん化」の方針を打ち出したがん対策推進基本計画の策定から5年が経ちました。

三橋 2007年に策定されたがん対策推進基本計画では、全国どこでも質の高いがん医療を受けられる環境を整備する方針が示されました。

 放射線治療においても「均てん化」が進められ、全国のがん診療連携拠点病院に放射線治療医や医学物理士などの医療従事者を配置したり、最新の放射線治療機器を整備したりと体制整備が積極的に行われてきました。

 その結果、現在の放射線治療において中心的な役割を果たしている強度変調放射線治療(IMRT)機器の台数は、2010年時点で285台と2007年に比べて1.6倍増加しました。IMRTを実施できる施設は2009年時点で56施設です。

──IMRTなどの高精度放射線治療が登場したことで、がん治療はどう変わったのでしょうか。

三橋 放射線治療機器の進化とは、より正確にがん病巣にのみ放射線を照射し、がん細胞のみを殺すようにできることを目指すものです。

 従来の放射線治療機器は、決まった方向から均一に放射線を照射することしかできませんでした。そのため、がん細胞のまわりにある正常な細胞にも放射線が照射され、副作用を引き起こしてしまうことが多いのが欠点でした。こうした副作用を回避するためには、正常細胞に照射されてしまう放射線量を減らす必要があり、本来照射したい放射線量よりも少ない放射線量で照射するケースも多いのです。その結果、がん細胞に十分な放射線量を照射することができずに、がん細胞を死滅させられなかったのです。

 しかし、IMRTなど最新の放射線治療が登場したことで、がんの塊の形に合わせて放射線を照射できるようになりました。正常な細胞への照射を最小限に抑え、がん細胞にはより多くの放射線を照射できるようになり、その結果、治療成績は大きく向上してきています。こうした進歩により、放射線治療は、外科療法とともにがん治療の選択肢として扱われるようになりました。

 たとえば、高齢者は体力的な問題から外科手術を選択できないケースがありますが、こうした高齢患者への治療選択肢になりうるのです。一例として、手術ができる状態の早期の非小細胞肺がん患者に対し、放射線治療を行ったところ、外科手術を行った患者さんと同じくらいの治療成績だったことが2010年に報告されました。

 また、頭頸部がんでIMRTが使用できるようになったことで、局所制御率は従来の放射線治療と同等ですが、唾液分泌の低下による口腔乾燥症などの副作用が少なくなり、患者のQOL向上につながっています。局所制御率とは、放射線を照射した部位から再発や再燃が起こらない確率を意味します。前立腺がんでは、直腸への照射を避けることができるようになったことで、がん細胞への高線量照射が可能になり、結果として治療成績の向上につながりました。

──放射線治療体制を整備したことで、放射線治療を受ける患者は増えたのでしょうか。

三橋 2007年時点で年間21万8000人だったのに対し、2010年には25万1000人まで増えました。放射線治療患者は、毎年1万人ずつ増加している状況です。もちろん、高齢化による患者数増加という側面もありますが、放射線治療を均てん化したことで実際に治療を受ける患者は増えているといえます。

 先日開催された日本放射線腫瘍学会第25回学術大会(2012年11月23日〜25日開催)においても、放射線治療施設が均てん化された効果についていくつも報告されました。神奈川県北西部の話ですが、放射線治療医を常勤にし、治療機器を設置した結果、通院時間1時間以内の患者が増加したということです。これまで通院できる距離に放射線治療施設が存在せず、放射線治療を受けられずにいた患者さんが、近所に放射線治療施設が設置されたことで放射線治療を受けられるようになったということは、まさに均てん化のメリットといえるでしょう。

 これらの数字を見ますと、がん対策推進基本計画から5年が経過し、がん放射線治療の均てん化について、一定の成果がしっかりと数字に出てきたといえます。

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