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レポート

2012/10/31

九州大学泌尿器科学分野講師・診療准教授の立神勝則氏に聞く

腎がんの手術は進歩し続けています

──がんナビサブサイト「もっと知る腎がん」より

 2点目については、腹腔鏡下で手術を行う際には、内視鏡カメラを体内に挿入して、病巣付近を画面に映し出し、この画面を見ながら操作するのですが、「ダヴィンチ」に搭載されているカメラは3次元映像(3D)で映し出すことができるカメラなのです。3Dということは、ロボットの鉗子が持っている手術用の針が今、どちらを向いているのかが分かります。2次元映像(2D)でも、習熟すれば手術針がどちらに向いているかが分かりますが、慣れないうちは難しいのです。

 このロボット手術は、現在、前立腺癌の手術で最も普及しており、今年、ロボットによる前立腺全摘術がついに保険収載されました。前立腺全摘術においてロボットが急速に普及した理由の1つには、前立腺を全摘出した後、尿道を縫う必要があることがあります。尿道を縫う手技を従来型の腹腔鏡下で行うのは大変でしたが、ロボットを用いることでそれがとても行いやすくなったのです。

 3点目の術者の習熟度の違いですが、今回のSIUで海外の演者が発表し、話題となったのはラーニングカーブが違うということでした。例えば、腹腔鏡下手術もロボット手術も行ったことがない医師が、腹腔鏡下手術を10例行った場合と、ロボット手術を10例行った場合を比較すると、手術手技の “腕前”の伸び方が、ロボット手術の方が良いということでした。一見、ロボットを扱うのは難しいように見えますが、慣れてしまえば、手術の腕前はぐんぐん伸びていくということでした。

 実際、私も前立腺癌の手術でロボット手術を行っていますが、細かい操作を行うにはロボットの方が圧倒的に行いやすいと実感しています。

 従来、腹腔鏡下腎部分切除術は、腎臓の表面に現れている小さながんしか対象となりませんでした。腎門部という大きな血管のそばにできてしまったがんや腎臓の内部に埋没しているがんを切除するのは細かい操作の連続であるため、腹腔鏡で行うにはリスクが高く、主に開腹手術で行われていました。しかし、こうした難しい場所にあるがんであっても、ロボットを使えば、開腹しなくて切除できると、今回のSIUでロボット手術を手がけている海外の医師は発表していました。

日本における腎がんに対するロボット手術の評価はこれから

 このように、小さながんで部分切除が可能な腎がんに対して、ロボット手術はいいことずくめです。

 しかし、現時点での最大の課題は、ロボットを用いた腹腔鏡下腎部分切除術は健康保険が使えないことです。また、これまでお話しした内容のうち、腎がんに関するお話は、ロボットをいち早く導入した海外の医療機関での成績をもとにしたものです。日本で同様に安全に施行できるかどうかはまだ評価されていません。

 そのため、日本泌尿器科学会で、腎がんに対するロボットを用いた腹腔鏡下腎部分切除術の安全性を評価するグループが立ち上がりました。私たちも臨床研究として近く開始する予定です。安全にできるという実績が積み重なれば、前立腺癌の時と同様にいずれ保険収載されるのではないかと思います。

 また、ロボット手術全般に言えることなのですが、ロボットに対する注目や期待が集まっているだけに、ロボットを使った手術を受けたいと患者がご希望されるケースは少なくありません。実は、前立腺癌の経験から言えば、開腹手術よりもロボット手術の方が我々医師も行いやすく、医師側の負担も少ないのです。ですから、前立腺全摘術では、開腹手術でもロボット手術でもどちらでもいいならば、ロボットをお勧めすることが多いのです。

 しかし、ロボット手術をお勧めせず、開腹手術で行うことをお勧めすると医師が言っているときは、例えば、開腹手術で行った方が安全に、再発しないように切除することができる、とか、がんがちょっと大きいのでしっかりと切除するには開腹手術が良い、などと医師が判断していると考えて欲しいと思います。

 確かに腹腔鏡下切除術、ロボット手術は低侵襲で、体の負担が少ない方法です。しかし、低侵襲で手術ができるからと言って、その後に再発してしまうような手術しかできないようならば本末転倒です。手術による痛みはいわば一時的なものです。しかし、再発リスクが高いということはその後の人生に関わるのです。

 このように腎がんの手術治療はどんどん進歩しています。また、新しい治療薬(分子標的薬など)も次々と登場していますし、診断技術(診断装置)も進歩しています。腎がんと診断されても、あきらめないで主治医とよく相談し、前向きに治療に取り組んで欲しいと思います。








がんナビサブサイト「もっと知る腎がん」はこちらをご覧ください(別ウインドウで開きます)

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