国立がん研究センター(堀田知光理事長)では、国の研究事業として全国がん(成人病)センター協議会(以下、全がん協)に加盟する施設の治療成績の集計を行ってきた。このほど、1997年〜2004年に全がん協加盟施設で診断治療した入院患者約24万人分のデータがまとまり、10月23日から全がん協のホームページで30種類以上のがんの治療成績の公開を始めた。
全がん協とは、がん診療の中核的な役割を担う各地の専門施設が緊密に連携することによって、がんの予防、診断、治療などの向上を目的に1973年に発足した団体だ。現在、全国で31施設が加盟し、全がん協全体で年間約4万人の新規がん患者の診断・治療にあたっている。
新システムを導入し、患者の個別情報により即した生存率を公開
こうして積み重ねてきた症例の治療成績の公開は、2007年、2008年に引き続いて3回目となる。今回のデータ公開の大きな特徴は、利用者が知りたい情報を選択して表示できる新システム「Kap Web(カップウェブ)」を導入したことだ。これまで限定された条件のみで公開されていた生存率が、30種類以上のがん種、病期、性別、年齢などを同時に選択し、表示できるようにした。つまり、患者の個別情報により即した生存率を知ることができるようになったわけだ。
また、がん種によって病状の経過は異なるが、Kap Webでは相対生存率曲線を提示することによって、どの時期に再発に注意すればよいのか、再発の多い時期を乗り切れば生存する可能性がどのくらいあるのかなどの見通しを得られるようにした(図1)。さらに、初発患者の生存情報だけでなく、治療開始から一定期間生存した患者の生存率(がんサバイバー生存率)、手術の有無による治療成績も算出できるようになった(図2)。将来的には化学療法や放射線治療の有無による治療成績も加えられる計画だ。
図1 検索結果画面の例
選択した項目に基づいた5年生存率のグラフが表示される。
図2 詳細データ画面
診断年、手術、年齢で絞り込むことができ、さらに詳しいデータの検索ができる。