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レポート

2012/9/25

こんなとき、このエキスパートのもとへ 第11回

歯科衛生士●抗がん剤や放射線治療で起こる口腔関連障害へのケアをサポート

福原麻希=医療ジャーナリスト

●治療中、治療後の変化に合わせて「食べる」をサポートする

 愛知県がんセンター中央病院の頭頸部外科部では、首や顔にできるがんの治療をする。のどのがん、甲状腺やその周囲のがん、鼻のがん、口腔がん(舌がん、頬粘膜がん=頬の粘膜、口腔底がん=舌の下の底、歯肉がん)などだ。

 頭頸部外科部のなかに歯科があり、週3回、名古屋大学病院から歯科医師が来院する。

 長縄さんは週3回の歯科医師が来院する日は病棟患者の診療の補助を、残りの日は病棟の患者をケアしたり、摂食嚥下のリハビリを担当したりしている。対象となる患者は、のどのがん、顎のがん、舌がん、食道がん、血液のがん(悪性リンパ腫や白血病など)が多い。1日25〜30人の患者に対応する毎日だ。

 さらに、胃がんや肺がんなど、他のがん患者で歯にまつわるトラブルが起こった場合、相談に乗るのも大切な仕事だ。例えば、口内炎ができた、歯が急に痛み出した、歯が折れたなどだ。免疫力が低下するので、虫歯などを放置している場合、病状が悪化しやすい。治療中は抜歯ができないので、痛み止めを飲んで治療が終わるまでやり過ごすことになる。

舌がんの男性の口の中をチェックしている。「困ったことは何でも相談できるので頼もしいですね」と男性は言う。

 ある日、舌がんで入院中の愛知県内に住む50代男性が歯科診療室に来た。2週間前、舌を半分切除し、腹部の筋肉、皮下脂肪、皮膚を移植する手術を受けていた。

 舌がんの場合、愛知県がんセンター中央病院のクリニカルパス(治療の進行表)では、術前に1回、歯科医師の診察と歯科衛生士のケアを受けることになっている。歯科衛生士による口腔ケアでは、術後の誤嚥性肺炎や縫合部の感染症を予防するため、歯石や歯垢を機械で除去したり、術後の歯磨きや出血時の対応を指導したりする。

 術後、毎日の口腔ケアは病棟看護師が担当するが、週2、3回、歯科衛生士が口の中や摂食嚥下の状態をチェックし、歯科医師の診察につなぐ。

 男性は、前の週の嚥下機能の検査では問題なしとなり、ソフト食(舌で押しつぶせるほどやわらかく、飲み込みやすい形状の食事)を食べられることになった。だが、うまく飲み込めず、時間がかかっていた。長縄さんはこう声をかけた。

 「もう少しすると、楽に食べられるようになりますよ」

 さらに、長縄さんは口の中の状態をチェックした。移植した部分は血が通って、きれいなピンク色をしていた。さらに、粘膜の状態、歯茎の色、何らかの菌の感染による粘つき、においの有無、唾液は十分出ているか、舌苔の色や量はどうか、などを確認した。おかしいと感じたら、綿球やガーゼ・スポンジブラシなどで汚れを取って、問題があれば歯科医師に報告する。

 男性の場合、術後の縫合部に注目したところ、食べ物のカスが付着していた。縫い目は糸が細かいため、汚れがたまりやすい。長縄さんはそれをスポンジブラシで、力を入れないよう、やさしく掻き出した。

のどのがんの男性患者が飲み込みのテストを受けるので、長縄さんがリハビリを指導する。口を滑らかに動かしたり、食べ物をゴクンと飲み込んだり、箸の上げ下げがスムーズになるよう練習する。

 この日は、肩のリハビリも指導した。男性は舌がんの転移を確定するため、首のセンチネルリンパ節生検を受けていたので、顔面や首につっぱり感が残った。食べ物を飲み込むときは首の後ろの筋肉を使う。そこで飲み込みやすくなるよう、首を横に倒したり、肩から腕が上がったりするよう、男性はリハビリを受けた。

 長縄さんは日本摂食・嚥下リハビリテーション学会(*1)で講習を受講し、認定試験に合格した認定士で、「食べる」機能全般を担当できる。愛知県がんセンター中央病院で摂食嚥下のリハビリを担当できるスタッフは、摂食嚥下障害看護の認定看護師が3人、看護師で言語聴覚士の資格も持つ人が1人、そして歯科衛生士の長縄さん。看護師はなかなか看護業務から離れられないので、リハビリが毎日必要な患者は長縄さんが受け持つ。
  
 そのあと、男性のくちびるに麻痺が出ていないか、コップの水をブクブクしてもらいながら確認した。

 最後に男性から「舌の奥に痛みがある」と相談された。長縄さんが口の中を確認したところ、術後舌が腫れてきたので、補綴物が当たっていた。長縄さんは「歯科医師に削ってもらうといいですね」と助言するとともに、歯科医師の診察を入れる手配をした。

 診察後、男性は歯科衛生士のケアについて、「術後は症状が少しずつ変化するので、それに合わせて口の中のケアの仕方を助言してもらっています。困ったことを相談できるので頼もしいですね」と感想を話してくれた。


(*1)日本摂食・嚥下リハビリテーション学会=医師、歯科医師、看護師、言語聴覚士、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、又はこれらの職種以外で理事会の認める者の中から理事長の承認を受けた者は会員になれ、認定資格を得ることができる。

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